疲れ切って母星に帰ったら、怒髪天の父に呼び出されました
私達は執拗な帝国の追跡をなんとか振り切ってそれから9日後にユバスに帰ってきた。
第二艦隊の宙域を抜けるまでは本当に大変だった。
第二艦隊は宙域を細かく細分化して次々に艦船を小分けにして送り込んできたのだ。
まあ、宇宙は広いからそう簡単に見つかるわけもなかったのだが、民間の船も徴発して索敵に努めてくれたので、たまに見つかりそうになって、逃げるのに苦労したのよ。
その追跡をようようにして振り切って、なんとか我が母なる星ユバスに帰ってきた。
久々のユバスを見て私はほっとした。青いユバスは散々な目に逢って戻って来た私には宇宙のオアシスに見えた。
思わず涙ぐんでいると、
「どうしたんですか、姫様? 何か変なもの食べられました?」
真顔で聞いてきたアーロンを思わず殴りそうになったのは仕方ないと思う。
「馬鹿だな、食べ過ぎに決まっているだろう。姫様は朝食を俺の三倍も食べていたんだから」
「流石に、ヘイモの三倍も食べたら駄目ですって」
ヘイモとヨキアムの言葉に全員目を見開いて私を見る。
ヘイモは食い意地が張って大食いで有名なのよ。ちょっと待って!
それじゃあまるで私が普段のヘイモの三倍も食べているみたいじゃない!
絶対に誤解よ!
「何を言っている。ヘイモは前の日の夜に食堂のおばちゃんを誤魔化して三人前食べて食い過ぎで寝込んでいたので、朝はいつもの三分の一だったんだろうが」
横からアードルフが出てきて私を援護してくれた。
「そうよ。ヘイモもちゃんと伝えなさいよ!」
私もその尻馬に乗って反論すると、
「でも、姫様。ヘイモはいつもは三人前を食べるんでしょう。それが一人前しか食べていなくて姫様がその三倍ってことは三人前食べられたのですか?」
アンネの言葉に私は赤くなった。
「違うわよ。ヘイモが食べられないってパンを残そうとするからそのパンをもらっただけよ」
そう、私の好きなメロンパンだったのだ。この艦のパンはどれもコック長がわざわざ一から焼いてくれるので美味しいのよ。だからパンだけ三倍なのよ!
私も食い意地は張っているから、ヘイモのことは言えないけれど、ヘイモほど食べることは決してないわ! なのにこの後、艦内で私がヘイモと競い合って腹痛を起こしたと噂になっていたんだけど……何でこうなるのよ!
半分涙目の私にヨーナスがハンカチを出してくれたんだけど……ハンカチを食いしばって悔しがれって言ってるの?
そして、疲れ切ってユバスに帰って来た私は、いきなり父達に呼び出されたのだ。
いつもは姉の私の事なんてほったらかして構っても来ない父が呼び出したということは、また妹絡みなんだろうか? 帰って早々止めてほしい。それでなくても帝国との間の事を考えると頭が痛いのに!
そう思って父の前に出た私は目を見開く事態になった。
「セラフイーナ! これはなんだ?」
私は父から自分が帝国の皇帝に送りつけたと言われた挑発メッセージを見せられたのだ。
「日出ずる国の王女より、日沈む国の皇帝に告ぐ」
なんなの? この威張った態度は?
私が両手を腰に当てて偉そうにふんぞり返る画面が映っているんだけど、私、こんな態度で人前に出たことはないのわよ!
というか、私こんな事をやった記憶が無いんだけど!
「帝国の艦隊がどれほど強いかと思い試してみたが、その弱さに私は甚だ呆れてしまった」
私の視線は相手を侮るように馬鹿にしきっていた。態度がとても不貞不貞しかった。
こんなの見せられたらあの皇帝なら即座に瞬間湯沸かし器になるに違いないじゃない!
「違うと言われるのならば、20日後、ユバス星にてお待ちしている。そこで雌雄を決しようぞ」
何か大上段でどこかの演劇役者のように時代がかった口調で話しているんだけど……これは誰よっていう感じだった。
私は父から見せられた映像をただぽかーんとして見ていた。
「セラフィーナ、貴様はこれを帝国の皇帝陛下相手にやってくれたそうではないか」
「はいっ? こんなの私がやる訳ないでしょう」
私は父を睨み付けた。
「しかし、現実にこうしてやっているではないか」
「こんなのフェイクに決まっているでしょう! 合成画像です。私が帝国の皇帝陛下にここまで傲慢に話す訳は無いでしょうが!」
「いや、お前ならやりかねんわ」
「いくら私でも皇帝陛下にこんな傲慢な態度では話しかけません」
父は私の言葉を聞いても信じていないみたいだった。
「じゃあ、誰がこんな画像を皇帝陛下に送りつけたのだ?」
私があくまでも反論するから父が呆れて聞きいてきた。
そうだ、誰なのだ? こんな物を皇帝に送った馬鹿は?
帝国にも反皇帝派がいると聞いた事があるし、そいつらだろうか? それとも、帝国の軍部の暴走? ユバスを帝国に併合したいと思う輩とか?
でも、この暗黒雲に大半の時間を取り巻かれているユバスに魅力があるかというと中々難しい物がある。
確かに青い星はきれいだったし海は透けるように青いし、魚も一杯いる。豊かな大自然は一杯ある。
でも、帝国が攻め込んで利益が上がるかというと、ちっぽけでいつ暗黒雲に消滅されるか判らない星系では割が合わないと思う。私が考え込んだときだ。
「陛下、これは帝国の陰謀ですぞ」
いつの間に入ってきたのか、ヨーナスを伴ってボニファーツがしゃしゃり出てきた。
「ボニファーツ殿、これは帝国の陰謀だというのか?」
「さようでございます。姫様が跳ねっ返りなのを利用して、映像を合成して、姫様から帝国に送りつけたように見せかけたのです」
「でも、そんなことして何のメリットがあるのよ?」
私が聞くと
「それはユバスの秘宝、聖女様を手に入れようと帝国が画策したのでございますよ」
「えっ、帝国の狙いは私なの?」
エレオノーラが目を瞬いた。
ここまで自分は関係無いと私が父から怒られるのをニヤニヤしてみていただけだったのに、急遽自分が狙いだと言われて口を開いていた。
「さようでございます。帝国は旧文明の残した聖女様の秘密を探りつけたのです」
ボニファーツが訳のわからない事を言い出した。
「旧文明の秘密って何よ」
私は知らなかった。
確かにこの星には我々人類では無い遙か昔に旧文明と言われる先民族が残した遺跡があった。旧文明にはあまり興味のない私は無視したが、ボニファーツやヨーナスは良く遺跡巡りをしていたような記憶がある。そこで何か見つけたのだろうか?
「お前は知らなくて良い」
慌てた父はボニファーツと二人で何か話し出そうとした。
「ちょっとお父様。私に関することなら私も入れてよ」
「今後の作戦に関することなら私も聞かねばなりますまい」
エレオノーラと私がそう言い出すと、父は妹と私を見比べた。
そして肩をすくめた。
「まあ、良かろう。ただしこれから話すことは絶対に内密にするのだぞ」
いつもと違って真剣な父の様子に私と妹は思わず頷いていた。
それから聞いた父の話は奇想天外の事実だった。
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
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