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帝国戦隊長視点 ユバスの船を追いかけたらいきなり衝突してくれました

「何だと、第六戦隊の機動歩兵20機が全滅させられただと! それは本当か?」

 俺はコンドラートの言ったことが一瞬理解できなかった。

 帝国の第一艦隊は銀河最強だ。

 その新鋭機M103はその前のM102から大幅に攻撃力が上っているはずだ。

 辺境の巡洋艦などM103が20機もいればひとたまりも無いはずだった。

「それが殲滅されるたとはどういう事だ?」

「俺も詳しくは聞いていないが、あのユバスの船は機動歩兵を20機も積んでいたそうだ」

「たった1隻にか」

 俺は驚いた。一戦隊と同じだけ一艦に機動歩兵を積んでいるなど信じられなかった。

 それであのユバスの船はずんぐりしていたのか。


 俺はユバスの船が何故不格好なのかやっと納得した。

「しかし、帝国の最新のM103と辺境のユバスの機動歩兵では天地雲泥の差があるだろうが」

 帝国の機動歩兵がユバスなど辺境の地の機動歩兵に負ける訳は無かった。

「どうやら、その搭載機動歩兵が我が帝国のM103の能力を大幅に上回ったそうだぞ」

「それは本当か? 辺境の国の機動歩兵が我が国の最新鋭機を上回るなど俺は絶対に信んじんぞ。第六戦隊の機動歩兵の騎士が慣れていなかったのか?」

「んなわけなかろう。あそこの隊も当然帝国の中では精鋭を揃えていたはずだ」

「じゃあ、何故負けたのだ?」

「性能的な理由らしいぞ。ユバスにはボニファーツがいるからな。可能性は十分にあるぞ」

 コンドラートからそやつの名前を聞いて俺はむっとした。

「帝国の科学は銀河一だ。ボニファーツなんて引退間近のじじいの作った兵器に勝てなくてどうする」

「おい、ドワルスキー、お前、ボニファーツを引退間近のじじいというな! 俺等と年は変わらんだろうが!」

 何かコンドラートは変なところを気にしているが、そんなのはどうでもよい。

「で、第六戦隊は機動歩兵を全滅させられてどうしているのだ?」

「今も必死にユバスの船を追いかけているが、追いつけないそうだ」

「そうか、ここで俺様の出番だな」

 俺は喜々とした。やっとあの生意気な小娘とボニファーツを捕らえられると思うと血が沸き立った。

「まあ、待て、ドワルスキー、お前はまたワープして逃げられたいのか」

 そうコンドラートに言われて俺は戸惑った。

 確かに俺がワープした途端にまた逃げられては元も子もない。

「どうすれば良い?」

 俺は不機嫌そうに聞いた。


「まず、俺の第四戦隊がユバスの船の前にワープアウトする」

「貴様の隊がか!」

 俺は不承不承コンドラートの話を聞くことにした。

「ユバスの船はワープアウトするだろう」

「そこで俺様の出番か」

「いや、ユバスの船は更にワープする可能性がある」

「うーむ」

 確かにコンドラートの言う通りだ。

「次にユバスの船を追って第六戦隊がワープする」

「第六戦隊がか」

「そして、更にワーブしたところでお前の戦隊がワープすれば良いだろう」

「それまで待つのか?」

「そうだ。最後の手柄は貴様が取りたいのだろう」

「それはそうだが、それで貴様は良いのか」

 俺が慌てて聞くと、

「まあ、ボニファーツが噛んでいるからな。貴様にここは華を持たせてやるのが筋だろう」

「恩に着るぞ。陛下を虚仮にしたボニファーツと小娘は必ず俺がふん捕まえてやる」

 俺はコンドラートに感謝した。



 でも、それから待つのが辛かった。

 猪突猛進を自負する俺様が待つのだ。

 俺はイライラしながら待っていた。

「ドワルスキー様。座られてはいかがですか?」

 艦長が提案してくれたが、

「座るのは性に合わん」

 俺は一言で却下した。

「しかし、指揮官がそうそわそわされては指揮に関わります」

 そこまで言われたら仕方が無い。

 俺様はドンと椅子に座った。


「第四戦隊からの連絡はまだか?」

「はい。まだです」

 即座に帰ってきた副官の声に俺はちゃんと調べたのかと思わず怒鳴りそうになった。

 まずい、まずい。また艦長に白い目で見られる所だった。


 俺は足をイライラと振っていた。

「閣下!」

 艦長に白い目で見られたが、こればかりはどうしようもなかった。


「閣下、第四戦隊長から連絡です」

「よし、替われ」

 俺はやっと来たかと飛び上った。

「ドワルスキー、すまん」

 いきなりコンドラートが謝ってきた。俺は不吉な予感がした。


「何があったのだ。ワープトレースに失敗したのか?」

「いや、ジャミングをかけてきたが、それはクリアした。ただユバスの船は一回目に10光年のワープをした後に二回目になんと100光年のワープをしてくれたのだ」

「100光年だと」

 俺は目の前が真っ白になった。

 その前に10光年のワープをしたそうだからここから計算すると130光年になる。

 そこまで遠くにワープしてくるとは思っていなかった。

 艦隊全部でワープしようとすれば限度は50光年ほどだ。

 絶対に無理だ。


「艦長、巡洋艦とこのキエフなら最大何光年ワープ出来る?」

「しかし、戦隊長、駆逐艦を置いていくのですか?」

 副官が驚いて声を上げたが、

「やむを得まい」

 俺はここは4隻でワープすることにした。


「密集体勢でワープして最大120光年です」

「10光年足りんではないか! なんとかならんのか?」

「それは絶対に無理です」

「うーむ。やむを得まい。それでワープして周りからの通報を待つ」

「おい、ドワルスキー、お前本気か? 俺達の領域を越えるこことになるぞ。陛下にはどう言い訳するのだ?」

「仕方があるまい。逃げる陛下の敵を追いかけるのだ。陛下にはよしなにお伝えしてくれ」

「おい、ドワルスキー」

 俺は手を上げてコンドラートの通信を切らせた。


「ドワルスキー様。宜しいのですか?」

「閣下、陛下の許可はどうするのです」

「本艦からは連絡は取れまい。敵を捕まえさえすれば良いのだ。グズグズ言わずに4艦はワープ準備だ」

 俺は命じていた。


「了解しました」

 艦長が真っ先に反応してくれた。

「副官。巡洋艦3隻にワープ準備を。残りのフリゲートについては帝都への帰還を命じよ」

 艦長が指示してくれた。

「了解しました」

 不満がありそうな副官だったが、艦長の言葉に従ってくれた。


「戦艦キエフと巡洋艦3隻ワープ準備」

「目標120光年先。座標全艦同期しました」

「よし、全艦ワープ」

 俺の指示で4艦はワープに入った。


 4隻は戦艦キエフを中心とした円陣を組んだまま亜空間に突入した。

 画面がホワイトアウトした。


「閣下、ワープアウトした後はどうされますか」

「周辺空域にいる友軍に連絡して組織的にユバスの船を探すしか無かろう」

 俺は頭が痛かった。


 この先の宙域は第二艦隊の管轄下のはずだ。

 第二艦隊の司令官は元々第一艦隊にいた同僚だ。

 領域侵犯だとか貴様はこの宙域には関係無いだろうとかまたブツブツ文句を言われるのは目に見えていた。俺はその時の事を考えるとうんざりしたがやらざるを得なかった。

 俺は艦長と副官とその後の行動について打ち合わせした。


 そうこうしているうちに4隻になった艦隊はワープを終えた。

「ワープアウトします」

 艦長の声に通常空間に戻る。


「四方に艦影無し」

「全艦異常なし」

 俺は長距離ワープに成功してほっとした。

 巡洋艦には無茶をさせたのだ。

「巡洋艦ブレセツク、エンジン出力ダウンした模様」

しかし、すぐに不具合が発生した。


「すぐに修理させろ。いつ何時ユバスの船の行方が判るか判らんぞ」

 俺は直ちに指示をした。

 艦橋が慌ただしくなったときだ。


「戦隊長、ワープアウトしてくる艦影あり」

「どこのどいつだ。こんな時に」

俺が怒鳴って聞くと、

「どうやらユバスの船のようです」

「なんだと! 本当か?」

 俺は副官の声に喜んだ。

 そんな都合の良いことが起こるのか?

 敵は10光年先にいたはずだ。

 神が連れ戻してくれたのだろうか?

 無神教の俺だが今日だけは神に感謝したくなった。


「確実です。ジュピターワープアウトしてきます。でも、距離ほとんど無しです」

「な、なんだと」

 俺が唖然としたときだ。

「ワープアウトします」

 副官の声とともにユバスの船がいきなり現れたのだ。


 ダーーーーン!

 それはなんと故障した巡洋艦ブレセツクを引っかけてくれたのだ。

 ブレセックが回転して隣の巡洋艦テグラとぶつかる。


 ドカーン!

 大爆発が起こった。


 そして、あろうことかユバスの船はこのキエフの艦橋に突っ込んでくれたのだ。

 ガシャン!

 という大音響と共に俺の目の前の屋根が潰れて俺の上に落ちてきたのだ。

 俺は次の瞬間意識を失って気絶してしまったのだった。


ここまで読んで頂いて有り難うございました

ユバスの船の一撃でドワルスキーの運命や如何に?

続きをお楽しみに

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
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