王妃に中継惑星に帰らされて、遠国の姫から逃げようとしたら何故か男をお姫様抱っこして愛機で飛ぶことになってしまいました
我がユバス王国は出来て150年の辺境の小さな惑星国家だ。
第25恒星系とは、星間進出時代に二十五番目に発見された人類の生存可能惑星のある太陽系のことで、我がユバス王国はその第三惑星に入植する権利を地球連邦政府から買い取った大商人ユバスがそこに建国したのが始まりだと聞いていた。
我が国はその特殊な条件が仇になりというかあまりにも辺境過ぎて二度の宇宙大戦も戦いに巻き込まれずに生き残った国だ。
その青い惑星は宇宙から見てもとてもきれいだった。
だが、私はせっかく帰ってきたのにそれをじっくりと見る間も無くヴェルネリにつきまとわれて辟易していた。
ジュピターを宇宙港に入れるのも待たずに、というかヴェルネリ王女から逃れるために私は愛機ビーナスを駆って護衛のアードルフら五機を率いて王宮に直接乗り入れたのだ。
「お父様、どういう事ですか?」
私は王宮に帰るなり父に噛みついていた。
「何のことだ?」
「ヴェルネリ王女殿下のことです」
「ああ、お前と結婚したいと言ってきた物好きな王女か?」
父が笑ってからかってきた。
「笑い事ではありません。いきなりやってきて、どうしてくれるのですか?」
「どうしてくれると聞かれてもな、来てしまったものは仕方がないだろう」
私の言葉に父はのれんに腕押しだ。
「それよりもセラフィ、あなたまたサーリアでとんでもないことをしてくれたそうじゃない。どうするつもりよ!」
母が私に忘れたいことを思い出させてくれた。
「えっ、それは海賊共におっしゃってください」
私は海賊の責任にしようとしたのに、
「何言っているのよ。何故、海賊船をアステロイドベルトの中で爆破なんてするのよ。爆破しなければいけないならば他の何もないところでやれば良いでしょ! あなたのせいで隕石雨が降り注いでサーリアはとんでもないことになったのよ! どう責任を取るのよ!」
母は許してくれなかった。
「どう責任を取ると言われましても、捕まえた海賊共を強制労働させれば良いではありませんか?」
「そんなのですむわけないでしょう! 人的被害はほとんどなかったのが幸いだったけれど。本当に奇跡よ。人的被害は山賊のアジトに隕石が落ちて山賊が壊滅しただけよ」
「役に立ったではありませんか!」
私は喜んでいったけれど、
「何言っているのよ。あなたのせいで宇宙港に甚大な被害が出て居るそうよ。それに農作物に壊滅的な被害が出ているところもあるのよ。直ちにあなたが行って現地復興のお手伝いをしてきなさい!」
「えっ、そんな、帰ってきたところですのに」
「つべこべ言わずにすぐに行くのです!」
母の雷が落ちた。
こうなれば仕方が無い。切れた母は本当に手にを得ないのだ。
「判りました!」
私は仕方なくすぐに私の専用船ジュピターにとって返したのだ。
宇宙港には丁度ジュピターが着く時間だった。
私は護衛のアードルフ等を先に船に着艦させて出航の準備をするように命じていた。
「大丈夫ですか、姫様?」
アードルフは心配してくれたが、
「なんとしても、ヴェルネリだけはここで下ろすわ。あんなのが横にいたら仕事も何も出来ないから」
「では私だけが残ります。残りを返します」
私はそのアードルフの意見を入れた。
最悪、アードルフがヴェルネリを止めてくれるだろうと私は安心した。
バミューダ王国の王女が来るとのことで、オイカリネン外務卿が迎えに来てていた。
私はその船の真横にビーナスを着けた。
船からは真っ先にヴェルネリ王女が優雅に下りてきた。
こいつは猫を被るのが上手い。今までの痴女ぶりはどこにいったかと私は眼を見開いた。
「ようこそ、我がユバス王国にお出で頂きました、ヴェルネリ王女」
「オイカリネン外務卿もお久し振りですね。此度はお世話になります」
外務卿に優雅にヴェルネリ王女が挨拶する。私にもあれだけ距離を置いてほしい。本当にあの後ヴェルネリ王女から逃げるのは大変だった。
「まあ、セラフィ様。わざわざ私を迎えるためにお越しいただけたのですか」
見つけなくても良いのにヴェルネリはその後ろに立っていた私を見つけてくれた。
そしてね喜色を浮かべてヴェルネリ王女がこちらに向かってきた。
「オイカリネン、後は任せた」
私は向かってくるヴェルネリをオイカリネンを横にずらして除けた。
「セラフィ様!」
「殿下!」
驚く2人を残して一気にビーナスに向かって駆け出した。
「セラフィ様!」
「姫様!」
私を追いかけようとしたヴェルネリの後ろから見た男が怒って駆けてくるのが見えた。
私の参謀役のヨーナスだ。
「あっ!」
私は部下のヨーナスを25日前に帝国の情勢を探らせるために向かわせたことを忘れていた。
「セラフィ様、お待ちになって!」
「邪魔だ!」
ヨーナスはそのヴェルネリ王女を弾き飛ばしてくれた。
ナイスだ!
「キャッ」
「ヨーナス、貴様何をするのだ!」
私は転けたヴェルネリにオイカリネンが駆け寄るのを見て、一目散に私はビーナスに向かって駆け出した。
「姫様、お待ちください!」
その後をヨーナスが追いかけてくる。
私は取りあえずビーナスのコクピットに飛び込んだのだ。
でも、その後ヨーナスまで飛び込んでくるとは思ってもいなかった。
なんと、ヨーナスは私の膝の上に座ってくれたんだけど……
私は殿方に、このように近くというか、真上に座られたのは初めてだった。
いや、待って、普通は男が下よね。お姫様抱っことか……何で私がヨーナスをお姫様抱っこした形になるのよ!
私はコクピットが狭くなかったら絶対にヨーナスを張り倒していた。
「ちょっとヨーナス、何しているのよ!」
私が文句を言うと
「もう俺を置いていくなんて許しませんからね」
「いや、あれは緊急事態だったから、と言うか、どのみち乗るならアードルフの機にしなさいよ」
私が文句を言うと、
「男の機は嫌です」
ヨーナズか訳のわからない事を言ってくれた。
「おい、ヨーナス、貴様、何故、姫様の上に座って何してるんだ!」
アードルフが本気で怒っていた。
「セラフィ様! 私を捨ててそんないけ好かない男を選ぶなんて許しませんわ!」
こちらに駆けてくる髪を振り乱して山姥のようなヴェルネリが走ってくるのが見えた。
「やばい!」
これ以上は待てなかった。
私は仕方なしにエンジンをふかしして上昇した。
「お待ちください」
慌ててアードルフの機も付いてくる。
「セラフィ様! 絶対に逃しませんよ!」
地上から山姥の形相のヴェルネリが何か叫んでいるのが見えた。
絶対に無視だ!
その私の上で何故かご機嫌なヨーナスがいるんだけど……
なんで女の私がヨーナスをお姫様抱っこした感じになって飛ぱなければならないのよ!
ジュピターに着いたら絶対に文句を言ってやるんだから!
私はあまりに近いヨーナスに閉口しつつも愛機を飛ばしたのだった。
男と女の扱いが逆だ?
「私は男じゃ無いわよ」
叫ぶ姫に
「ご希望でしたらお姫様抱っこをいたしましょうか?」
開き直るヨーナス……
続きをお楽しみに!








