皇帝と艦隊決戦することを決めました
キュイーーーーン
ビーナスのエンジンが唸りをあげる。
「ようし!」
私のテンションはめちゃくちゃ上っていた。
画面に緑色の機体が急激に迫る。
敵からは矢のようなバルカンの弾丸が飛んで来た。
それを適当に躱しつつ、
「喰らえ!」
私はすれ違い様ブラスターを発射していた。
命中!
ドカーン!
敵機が爆発した。
よし、次だ!
しかし、次の機動歩兵はいきなり手で掴みかかってきたのだ。
何だ、こいつ?
私が驚いたときだ。
「姫様!」
私は大きく揺らされた。
「ん、ヨーナス!」
私ははっと目覚めた。
目を開けた私の視界に見目麗しいヨーナスのドアップの顔が映ったのだ。
一瞬、夜這いという言葉が頭に響いた。
「キャッ!」
バシーーーン!
私は戦闘シーンの続きで思いっきりヨーナスを張り倒していた……
「姫様酷いです」
頬を押えたままヨーナスが拗ねていた。
ヨーナスの整った顔にははっきりと私のがつけた紅葉マークが残っていた。
「仕方ないわよ。いきなり起きたら目の前にヨーナスの顔があったんだから。普通は夜這いか何かだと勘違いするわ」
むすっとして私が言うと、
「夜這いってこんなに皆がいるのに出来る訳ないでしょう」
「ということはお前は、皆がいなかったら夜這いするつもりだったのか?」
ヨーナスの言葉にアードルフがいきり立っているけれど、
「そんな怖いことは儂は到底出来んが……若いというのは勇気があることじゃの」
「いや、だから人がいなくてもしませんよ」
必死にヨーナズか言い訳してくれた。全否定されるとそれはそれで女心としては少し傷つくんだけど……
「部屋の外からいくら呼んでも姫様が起きないから仕方なしに起こしに行っただけで……」
「外から呼ばない貴様が悪い」
その時に座を外していたアードルフが決めつけていた。
何があるか判らなかったから戦闘服のまま寝ていた私の部屋に騒ぎを聞きつけて側近達が揃っていた。
どうやら私を起こそうとして起きないからヨーナスが起こしに来て犠牲になったらしい。
戦闘の夢見ていたから、その延長で張り倒してしまったのよ。
いきなり私の真ん前に顔を出していたヨーナスが悪い。
私はぷんすか怒っていた。
「それで姫様、少し宜しいですか?」
ボニファーツが真面目な顔で確認してきた。
「こんな夜中に私を起こしに来るなんて、何があったの?」
「実はユバスのあるヤムサ太陽系の暗黒流の流れが強くなって来ました」
「いつもの事じゃない。別に珍しくもなんともないでしょう?」
そう、私の住んでいるヤムサ太陽系は一年の大半を暗黒雲に囲まれていた。今はたまたま暗黒流の流れが弱まっていて暗黒雲が晴れているだけだ。こういう時にまとめて中継惑星サーリアに待機していた貨物船が大挙して行き来しているのだ。そして、暗黒流の流れが少し出てくると、暗黒流の流れに慣れている地元の船しか航行出来なくなる。更に暗黒雲を司る暗黒流が強くなった時は大半の船が出入りできなくなるのだ。
「今回はどうやら、暗黒流の強さが最強になる兆候があります」
「また一ヶ月くらい閉じ込められるのね。まあ、でも、最悪ジュピターなら出入りは出来ると思うけれど……」
何しろジュピターは船体の大きさにそぐわない巨大なエンジンを持っており、強引に暗黒流を突っ切って出入りできるはずだ。
「そこで、その暗黒流の流れを使ってヨーナスが帝国艦隊に勝つ戦略を考え出したのです」
ボニファーツがやっと教えてくれた。
「えっ、帝国とやり合うの?」
私は驚いてボニファーツとヨーナスを見返した。
「姫様、これは千載一遇の好機です。ここで皇帝相手に口論してちまちまと時間を稼ぐよりも、皇帝と勝負して勝てればシュピターは帝国から後ろ指も指されずに晴れて完全に姫様の物になるのです」
ボニファーツは好きなことを言ってくれるが、ボニファーツとしては皇帝相手に最終兵器を使いたいだけなのではなかろうか?
私としては中々うんとは言えなかった。
拗ねているヨーナスを見ると、
「姫様。皇帝陛下は冷酷非道と巷では言われていますが、一度した約束は違えたことがございません。今回は勝負に出るべきだと思います」
日頃は慎重なヨーナスがそう言いだしてくれた。
「アードルフはどう思うの?」
私は護衛隊長のアードルフの意見を確認した。
「私は姫様を危険にさらすのは反対です。帝国と正面切って戦うなどもってのほかです」
アードルフは反対してきた。まあ、当然だろう。
「ボッチ、今回のヨーナスの作戦が成功する確率は?」
「今回の作戦において成功する確率は10%です」
「10%か?」
私は考えた。
10%もあるなんて思ってもいなかった。
何しろ帝国の第一艦隊相手に未だかつて勝てた者はいないのだ。その大艦隊相手に勝てる可能性が10%あるなら、やってみる価値はあるのではなかろうか?
私は揺らいだ。
「姫様。10%しかないのですぞ」
アードルフはそう言ってくれるがこのままここにいたら私は帝国の手先となって帝国の為に働かせるようになるだろう。帝国の先鋒として戦場を往来させられるはずだ。
危険な仕事も多く任されるだろう。死ぬ確率も高まるはずだ。そして、私が戦死でもすればユバス王国はおそらく帝国に併合されるはずだ。
何しろ私は帝国の男爵を艦隊ごと叩き潰したのだ。
多方面から恨みを買っているだろう。
でも、ここで皇帝を叩けば、しばらくは帝国はこちらに手を出してこないはずだ。
10%でもやる価値は十分にあるのではなかろうか?
それに私はユバス王国の王女である前にビーナスを駆る騎士だった。その騎士の血が騒いだのだ。
ゴメン、スージー、私はまた、国民を危険な目に合わせる事になると思う。
私は心の中でスージーに謝った。
「判った。帝国相手にやるわ!」
私は皆に宣言した。
「姫様、本当にやるのですか?」
アードルフが呆れて私を見たが、
「ヨーナスが勝てる可能性があるというのならばそれにかけるわ。ヨーナス、頼むわよ」
私はヨーナスを見た。
「判りました。全力を尽くします」
「全力くらいでは甘いぞ。死力を尽くせ。確率は絶対に100%にしろよ」
責任を感じた顔になったヨーナスにアードルフが無茶を言い出しているんだけど。
「ボッチはこの10%を可能な限り100%に近付ける工夫をして」
私はボッチに頼んだ。
「姫様、またまた、むちゃくちゃなことを。やっても10%くらいしかあげられませんよ」
「20%に出来るなら上等よ。ヨーナスもボニファーツもアードルフもこの確率を可能な限り100%にあげげてほしい」
「「「判りました」」」
3人は私に大きく頷いてくれたのだ。
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
ついに決戦の時来たりです。
でも、その前にこの宮殿から逃げ出さないといけません。
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