聖女視点 お姉様の船を私の物にしようとしたら、いけ好かない男に深泥池の中に吹き飛ばされて悲惨な目に合わされました
「なんなのよ! これは」
私達はジュピターの入り口から地面までタラップの上を流されて、散々な目に合っていた。
「イルマ、ボタンを押すならちゃんとしたボタンを押しなさいよ。どうしてくれるのよ! 服もびしょびしょじゃない!」
私が文句を言うと、
「申し訳ありません。まさか、あんな仕掛けがあるなんて思ってもいませんでした」
イルマのは謝ってくれた。
「しかし、この船はどうなっているんですか? こんな仕掛けを作っているなんて」
「お姉様の船だもの。碌な仕掛けはしていないわよ」
そうだ。この船はお姉様の船なのだ。一筋縄でいく訳はなかった。
「いかがいたしますか? 今日は帰りますか?」
「何言っているのよ。ここまで来たんだから、帰れる訳ないでしょう」
「でも、皆様濡れ鼠ですけど」
「濡れ鼠って何よ、あなたが変なボタン押したからでしょ」
「ここは私が何かないかもう一度偵察に行ってきます。エレオノーラ様はここでお待ちください」
ラリが2名の部下を連れて上って行った。
「隊長、これじゃないですか?」
「よし、押してみろ」
近衞騎士の一人がボタンを押した途端だ。
「ギャーーーーー、燃える」
今度は炎が飛び出したのだ。
火炎放射みたいに火が延びて近衞騎士の帽子が燃える。
三人は慌てて、地面に帽子を弾き飛ばしたが、髪の毛が散り散りになっていた。
顔も黒くなっている。
「勝手にボタンを押すな!」
ラリーが部下に怒りまくっていた。
この後3回ほどブタンガスが吹き出してきたり、槍が飛んで来たりしたが、なんとか生き残って、3人はインターホンを見つけ出したのだ。
「エレオノーラ様。これみたいです」
「やっと見つかったの?」
私達は慌ててタラップを上った。
そこにホログラフが浮かび上って、格納庫のようなところで機械を触っているメカニック達が映った。
しかし、彼らは全くこちらを気にしていなかった。
「おい、貴様等!」
ラリが叫ぶが、誰もこちらを見なかった。
「何故、機械が止まってしまった? 電源は入っているのか?」
「電源は入っていますけど、容量オーバーじゃないですか?」
「やはりもう少し大きい出力が必要か」
「そこのメカニック達!」
再度声をかけるがメカニック達は全く聞く耳を持たなかった。
「ちょっと貴方たち、いい加減に話を聞きなさいよ」
私が大声で叫んだ。
「何だ。貴様。見学者はお断りじゃぞ」
偉そうな親父がこちらをちらっと見て、そう叫ぶと作業に戻ろうとした。
「お前達、この船の新しい持ち主の聖女エレオノーレ様だぞ。話を聞け?」
ラリが大声で叫んでくれた。
「はああああ?」
「ボニフアーツ様。ピンク頭の姉ちゃんが何か言ってますぜ」
「おい、あれは聖女様だよ」
一人の男が注意してくれて、私はほっとした。
こんな者達の中にも私をシツテいる者がいるのだ。
「聖女様って何だ?」
「この国で一番偉そうにしている女だよ」
「ああ、偉そうにしているだけで何も出来ない女か」
「姫様の方が余程立派なのにな」
「本当に、こんな見栄えだけのいい女が偉いんじゃ、この国ももう終わりなんじゃ無いか?」
男達は好き勝手に罵詈雑言を並べてくれた。
「何ですって!」
「貴様等、聖女様に不敬だぞ。全員不敬罪で逮捕されたいのか」
私の叫び声にラリが一緒に叫んでくれた。
その瞬間だ。私達の頭の上から大量の水が流れ落ちてきたのだ。
今度は傍の手すりを持っていたから下までは落ちなかったが、下手したらまた落ちていた。
「な、何をしてくれるのよ!」
私が文句を言うと
「それはこちらの言い分じゃ。儂は今研究で忙しい。下らん妄想を抱いて儂の邪魔するならよそでやってくれ」
偉そうな男はそう言うと作業に戻ろうとした。
「何を言っているのよ。この船の主は私なのよ。お父様の命令書もここにあるわ」
私が命令書をふところから取り出したが、水に濡れて文字がにじんでいた。
「何を言っているか判らんが、その文字がそもそも読めんよ」
「あなたが水をぶっかけてくれたからでしょう」
「そうだ。貴様、新たなこの船の主の姫様に逆らってただで済むと思うなよ」
「はああああ、ヨーナス、馬鹿共に説明してやってくれ」
男は大きなため息をついて、画面がブラックアウトする。
次の瞬間お姉様の側近の男が現れた。
「えっ、ボニファーツ様、面倒だからいやですって……切れたや」
めんどくさそうに男が私を見下ろしてくれた。
「ちょっとたらい回ししないで、さっさと私を中に入れなさいよ」
私がいい加減に水に濡れて寒くなってきたので叫ぶと、
「これはこれはエレオノーラ様。あなた方は今、不法侵入しているんですが理解していますか?」
「何で不法侵入なのよ。そもそもまだ船の中にも入っていないじゃない! というか、この船の所有者は私になったのよ。なんでオーナーが不法侵入になるのよ?」
私が文句を言うと、
「本当に馬鹿ですね」
肩をすくめてその男が言ってくれた。
その言葉に私は目が点になった。
馬鹿と面と向かって言われたのは初めてだった。
「おい、お前、エレオノーラ様に馬鹿とは何だ」
「馬鹿に馬鹿と言って何が悪い」
ラリに注意されても男は平然と言い返してきた。
「あなた、私に馬鹿って言ってただで済むと思っているの?」
「私は姫様付きの補佐官ですから、王家のあなたではなんとも出来ませんよ」
男が平然と反論してくれたんだけど、私はその男の言うことがよく理解できていなかった。
「この国の聖女である私に逆らってそのままでいられると思っているの?」
私が脅すと、
「私の言うことを聞いていなかったんですか? 本当に馬鹿の上に人の話も聞けないんですね。もう最低な人間ですね」
「なんですって!」
「貴様、エレオノーラ様にそこまで言ってただで済むと思うなよ」
ラリも横から叫んでくれた。
「本当に主従揃って馬鹿ですね。なんで理解できないんですか?」
「貴様、言わせておけばいい気になりおって」
一人の騎士が中に入ろうとしてバリアに引っかかって
「ギャーーーー」
とスロープを転がり落ちていた。
「良いですか? 一度しか言わないですからよく聞いて下さいよ。何故エレオノーラ様の言うことを聞く必要がないかというと、私はセラフィーナ様の個人的な部下なんです。私の給与も生活費も全て姫様のポケットマネーから出ているんです。すなわち、王家からは一銭も受け取っていません。だから私がエレオノーラ様の言うことを聞く義理もないのです」
「聞く義理がないって、この船はお父様の命令で私の管轄下になったのよ。この船に乗っている限りあなたは私の命令を聞く義務があると思うわ」
「はああああ? ついに陛下はおかしくなられたのですか?」
男は今度はお父様まで馬鹿にしてくれたのだ。
「き、貴様、陛下まで愚弄するのか」
ラリが剣を抜いて叫んだ。
「愚弄も何も、そもそもこの船自体が、姫様の個人的な持ち物なのです。ユバス王国からも王家からもこの船の製造代金は一切頂いていませんし、運営費も頂いていません。国王陛下が例え家族とはいえそのセラフィーナ様の財産を勝手に自分の物にしようとする行為は、宇宙海賊と同じです。明確な海賊行為です。訴えられたらとんでもないことになりますよ」
私はこの男が何をいつているかよく判らなかった。
「いや、そんな、この船がセラフィーナ様の個人資産なんてあり得ないだろう」
ラリがそう言ったので、絶対にそのはずだ。
この船がお姉様の物なんてあり得ない!
「あなた、そんな嘘を言って誤魔化そうとしてもムだよ」
「仕方がありませんな、エレオノーラ様は海賊行為に走られるという事ですな。こちらも適正に対処させて頂きます」
「はああああ? それよりもさっさと私を中に入れなさいよ」
「海賊行為に脅迫が追加と」
男は何かブツブツ呟きだした。
「ちょっといい加減にしなさいよ」
「防衛システム、発動」
男が叫んだその瞬間だ。
「「「ギャーーーー」」」
私達は突風を受けて吹き飛ばされたのだ。
そして、目を回しながら私達は王宮の池目がけて飛んでいた。
ドボーーーーーン
大きな音がして私は王宮の緑色に染まった深泥池に放り込まれていたのだ。
池の水は緑色に変色していて、私のきれいな服が悲惨なことになってしまった。
私は溺れそうになりながら、手を振ってなんとか汚い水の上に顔を出せてほっとした。
そんな私の頭の上にぴょこんとカエルが乗ってくれたのだ。
ゲゴケコ
と鳴いてくれた。
私はカエルだけは我慢が出来なかった。
「ギャーーーー、カエルよ!」
私は悲鳴を上げて失神していたのだ。
ここまで読んで頂いて有り難うございました。
王家の対応に怒り心頭のジュピタースタッフによって聖女は散々な目に合わされました
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