聖女視点 姉から専用巡洋艦を取り上げようとしたら水をぶっかけられて地上に押し流されてしまいました
お姉様の専用巡洋艦ジュピターが帰還した。
うーん、やっぱりずんぐりむっくりで、見た目はもう一つだ。
トピアス様の美的センスが少しおかしいのかもしれない。
まあ、でも、この船に乗ってシネッタ王国に行けばトピアス様は喜んでくれて私に結婚の申し込みをしてくれるかもしれない。
まあ、申し込みを受けるのは女の夢だ。どうしようもない男から申し込まれても怒りしかわかないが、トピアス様ほどの見目麗しい男から申し込まれたらとても嬉しい。
まあ、他にいい男が出てくるかもしれないから即答はしないけれど……
それにトピアス様はシネッタ王国の跡継ぎだ。我がユバス王国の跡継ぎの私とは結ばれない運命にある。これは悲恋だわ。でも、恋は障害が大きいほど燃え上がるのよ!
久しぶりに画面からみるお姉様は何か偉そうにふんぞり返って歩いていた。
その後ろを沢山の腰巾着を連れて歩いている。
お姉様は何様のつもりなんだろう?
帝国の艦隊に勝ったのが余程嬉しいんだろうか?
その分お父様とお母様に迷惑をかけているのが全く判っていないのよ!
白い塔の中でじっくり反省すれば良いわ!
お姉様の船は私が頂いてあげるから。
私は天使の笑みを浮かべたのだ。
その後お姉様は騎士達に上手い具合に離されて、近衞騎士達が待ち構える応接間に一人で入ってくれた。
そして、次の瞬間近衞騎士達に銃を突きつけられたのだ。
「えっ、なんで?」
お姉様は驚いていた。
帝国軍に圧勝してきたから凱旋パレードでもするつもりだったんだろうか?
お父様達に苦労かけといてその事は全然理解していないのね。
お姉様は生きているだけで厄災姫なのよ!
「陛下からの命令です。セラフィーナ様には白の塔で反省するようにと」
騎士団長の言葉に、
「えっ、私の話も聞かずにいきなり幽閉するの?」
きっとしてお姉様は騎士団長を睨み付けた。
「話は反省した後に聞くとのことでした」
「そう」
お姉様は下を向いた。
その後すわ大立ち回りするのかと期待して見ていたんだけど、お姉様はその後は素直に白い塔に連行された。
「うーん、お姉様らしくないわね」
私は首をひねったのだ。
お姉様以上に怒り狂ったのが、お姉様の側近達だったと後で報告を受けたけれど、騎士団長が説得して船に帰らせたそうだ。
「さあ、お嬢様。今こそお嬢様のお船に乗りに参りましょう」
私の侍女のイルマが提案してくれた。
イルマは男爵令嬢で私の5つ上だ。団子っ鼻で見た目は今ひとつだが、私への忠義は疑いようが無かった。私の引き立て役には丁度良いのだ。
「我々もお共します」
私の専属騎士隊長のラリが頭を優雅に下げてきた。
こちらは見目麗しい。侍女達は見た目は今ひとつの者ばかり集めたのだが、私の騎士には見目麗しい者しかいらない。
そう、私の騎士は皆見目麗しいのだが、このラリは格別だった。
地位も伯爵家令息なので私に嫁ぐことも可能だった。
動きも洗礼されていて、お姉様のがさつな護衛騎士達とは比べようにもならなかった。
そして、私は25の呪いにかかっているお姉様に敬意を払って全部で25人で向かったのだ。
これで完璧だ。
私は護衛とイルマ達をお共に合計25人で私の専属巡洋艦ジュピターに向かったのだ。
まあ、でも、近くから見てもジュピターはずんぐりむっくりしていた。
色からしてカーキ色だ。本当の軍艦色であんまりきれいじゃ無い。
宇宙空間では目立たないかもしれないけれど、聖女が乗る船としてはどうなんだろう?
「まあ、姫様、後で船体を姫様の髪の色のピンクに染め直させたら宜しいのではありませんか」
「それは良いわね」
すぐには無理かもしれないけれど、いずれはピンク色に塗り直せば良いだろう。
護衛騎士隊長のラリを先頭に私、イルマ、その他の護衛騎士の順番でタラップを登った。
前もって私が行くと知らせてあったのに、タラップを上ったところにも誰一人スタッフが待っていないんだけど……どういう事よ!
「誰もいませんね」
イルマがきょとんとした顔をした。
「イルマ、ちゃんと知らせたの?」
「はい、オペレーターの者にははっきりとお伝えしました」
「私を歓迎する風だった?」
「さあ、そこまでは」
私はイルマの根回しの悪さに少しむっとした。
でも、次の司令官が来たのに出迎えもしないなんて、この船の乗組員は舐めている。
「取りあえず、中に入りましょう」
そう言って騎士の一人が入り口から中に入ろうとしたが、
ドン
と音が鳴って弾かれた。
「危ない」
ラリが飛んで来た騎士から庇って私を引いてくれた。
私の今までいたところに騎士が飛んで来て、
「ギャーーーー」
叫んで勢い余ってタラップを下まで落ちていった。
「な、何なの?」
私はぎょっとした。
「バリアみたいな物が張られているみたいです」
ラリが前を手探りで探る。
「いかがいたしますか? 出直しますか?」
「はああああ、何を言っているのよ。私はこの船の司令官なのよ。何故司令官が自分の船に入るのに、拒否されないといけないのよ。艦内に連絡する方法か何かは無いの?」
私がヒステリック気味に叫ぶと。
皆入り口の周りを探した。
「あっ、これじゃ無いですか?」
イルマがボタンを押してくれた。
その瞬間だ。
私達の頭上から大量の水が落ちてきたのだ。
「「「ギャーー」」」
私達24人は大量の水に流されて、タラップから地上まで流されてしまったのだ。








