サーリア星会戦 帝国の男爵の艦隊を最終兵器で殲滅しました
「ボニファーツ、何だ! 10年以上連絡しない貴様が連絡してきたと思ったらいきなり訳の判らない映像を送りつけてきおって」
いきなり大画面に帝国貴族で宮廷の制服を着た年配の男が現れた。
その顔はどこかで見たことがあった。
「アンドレイ補佐官です。皇帝の側近です」
横からヨーナスが教えてくれた。
「よお、久しぶりじゃの、アンドレイ」
「何が久しぶりじゃ! 貴様からの連絡は碌な事がないわ。どのみち送りつけるならば見目麗しい女子の映像でも送ってこい!」
「冷たいの! この前もせっかくその方に頼んだのに無碍にしおってからに!」
「当たり前だ! あんな兵器を陛下に取り次げる訳はなかろう! 何が最終兵器だ! 帝国の国家予算全てをそんな兵器に回せる訳はなかろう!」
「帝国の国家予算全額って……」
私はアンドレイの言葉に固まってしまったんだけど……
「まあ、その件はもう良いわ。姫様は陛下と違って太っ腹での」
「おい、ボニファーツ、貴様、まさか、あの兵器を作ったのか? どこの国の馬鹿王女だ、そんなの許したのは? 帝国ですら国が滅ぶと思って却下したのだぞ。普通の国ならば破産は確実。それ以前に帝国以外では連邦くらいの国家規模でないと借金しても出来んぞ」
私はその言葉に青くなった。
あの兵器って作るのにそんなにかかったの……
私の頭の中が真っ白になった。
「ふんっ、愚か者め。儂は天才じゃぞ。国を移ればその国にあわせた規模に兵器を縮小したのじゃ」
私はその言葉にほっとした。
「いや、待て、規模を縮小しようがそうは安くはならないだろう。安くて帝国の予算の十分の1くらいはかかるぞ」
帝国の予算の十分の1って何?……我が国の予算なんて足下も及ばない額だ。
嘘!
私は心の中で絶叫した!
「それよりも良いのか? 貴様の国の地方貴族が他国に攻め込んでおるが」
ボニファーツは話題を変えてくれた。
「そのような訳はなかろう。陛下は今はどの国にも攻撃の命令は下されておらんぞ」
「じゃあ、これは何だ?」
ボニファーツは画面を操作してフッセン男爵を映し出したのだ。
「んっ? 貴様はフッセン男爵、何故貴様がここに映っておる?」
「これは、アンドレイ補佐官。あなた様がどうしてこの画面に?」
「このボニフアーツは工科大学時代の悪友なのだ」
「しかし、この地からいきなり帝都のあなた様まで通信するなど普通は出来ないはずですが」
フッセン男爵は驚いていた。そらそうだろう。亜空間通信は設備が大がかりになって戦艦クラスでも十光年くらいしか通信は飛ばないはずなのだ。
我が国でも宮殿くらいの設備がないと本来は帝都なんかと通信できない。
まあ、この船は馬鹿でかいエンジンを積んでいるのとボニファーツが持てる技術力の全てを結集して作り出した船だからこそ出来る芸当だ。
「そこのマッドサイエンティストがなんとかしたのであろう」
アンドレイは首を振っていた。彼もボニファーツが常識でははかれないことを良く知っているみたいだ。
「それよりも、その方は今どこにいるのだ? まさか、ユバス王国に攻め込んだりはしておらぬだろうな」
「滅相もございません。陛下の意向に逆らうなど」
フッセン男爵は必死に言い訳した。
「よく嘘を言えるわね。サーリアの領域に無許可で侵攻しているのに!」
私が横から口を出した。
「あ、あなた様はセラフィーナ王女殿下!」
「お初にお目にかかりますわ。アンドレイ補佐官。貴国のフッセン男爵が戦争を仕掛けてきたんですけど。これは皇帝陛下のご命令なのですか?」
「そ、そのようなことは……」
慌てた補佐官が否定しようとしたところで画面がブラックアウトした。
「どうしたの? ボニファーツ」
「敵からの妨害電波に邪魔されたな。まあ、これ以上の通信は最終兵器の使用に影響するからもう無理じゃな」
「おのれ、小娘め! 良くも陛下に余計な事を伝えてくれたな。ここで貴様を船ごと沈めてくれるわ」
ホログラムの中の男爵が怒り狂っていた。
「そう、じゃあ、返り討ちにしてあげるわ」
私が笑って言ってあげたら
「ふんっ、威勢の良いのはそこまでじゃ」
敵の画面が一方的に切られた。
「敵距離二万間もなく最終兵器の射程に入ります」
「マーキュリー隊発進、ジュピターの後方に十字編隊で待機」
私は指示を飛ばした。
「了解しました。これより、マーキュリー隊発進します」
横に取り付けられた格納庫から射出機に乗って次々にマーキュリーが射出される。
射出されたマーキューリは4個小隊がジュピターの少し後ろに編隊を組んで展開した。
「全エネルギーを最終兵器に回します」
「非常電源に切り替えます」
館内が急激に暗くなった。
最終兵器以外の艦内の全ての設備が止まる。
「総員最終兵器使用準備」
「距離一万五千」
「敵、空母、艦載機発進させています」
「距離一万四千」
「軸線合わせます」
「艦首、最終兵器射出口、オープン」
オペレーターの指示の下ジュピーターの艦首が四方にスライドしてゆっくりと口を開ける。
最終兵器の仕組みは私は聞いてもよく判らなかったが、凄まじいエネルギーを持つ異次元エネルギーを艦首から放出して敵を破壊するのだとか。
「戦艦10隻くらいなら間違いなく破壊できます」
とボニファーツは豪語していた。確かに赤色巨星は超新星爆発を起こしたから威力はあると思うけれど……周りは大丈夫なんだろうか?
まあ、発射口の先には何もないはずだ。
これ以上の天災は起きないはずだ。
「距離一万一千」
「発射十秒前」
「八、七、六……」
アンネがカウントダウンしてくれる。
敵艦隊が急激に大きくなって来た。
敵の主砲の射程は五千くらいのはずだ。
その前に機動歩兵が五十機、急激に接近してきた。
まあ、それくらいなら、マーキュリー隊がなんとかしてくれるだろう。
「三、二、一、発射」
その瞬間艦首が光った。
画面が一瞬でホワイトアウトする。
光の塊が一気に敵艦隊に向かう。
光が渦を巻いて手前にいた艦載機を次々に巻き込んでいく。
そのまま光の塊は展開する敵艦隊に殺到した。
光が到達した瞬間に巡洋艦も駆逐艦も関係なしに艦がバラバラに砕かれて消滅していく。
巨大な戦艦といえども同じだった。光の到達と同時に引き裂かれて押しつぶされて一瞬で消滅していった。
「「「ギャーーーー」」」
私は男爵達の悲鳴が聞こえたような気がした。
光の奔流はそのまま宇宙の彼方にまで飛んでいった。
そして、光が消えたときにはそこには何も残っていなかった。
最終兵器は文字通り本当に最終兵器だった。
私はスージーの仇を討てて嬉しかった。
まさか本当に討てることになるなんて思ってもいなかったのだ。
本当に!
「スージー、やったわ!」
私は涙にまみれて感激していた。
こうして我が国を麻薬で汚染して、女達を奴隷として販売していたフッセン男爵は討たれた。
でも、この事が更なる敵をユバスに迎え入れることになるなんて私は思ってもいなかったのだ。
ここまで読んで頂いて有り難うございました。
侍女を無礼打ちにしてくれて、自国の民を奴隷に落として売り払っていた帝国の屑を倒しました。
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