フッセン男爵の手のものが私を捕まえようとしてきましたが、私はそれよりも早く、敵の拠点を次々に制圧していきました
緊急会見の後、私達はオスモの残党とフッセン男爵の配下や関係者を次々に拘束していった。緊急条項第25条は戒厳令だ。外交特権も何も通用しないのだ。
敵が対策を練る間もなく次々に行った。
オスモや捕まえたその配下達は本当にペラペラと機密情報を話してくれた。さすがボニフアーツの薬は最高だった。絶対にボニファーツだけは敵に回してはいけない。私は肝に銘じていた。
その情報を元にこの都市に残ったフッセン男爵の配下の者も次々に拘束していった。
色々と手を打とうしたら男爵からしたら先を越された感じがしたのではないか。
「セラフィーナ、セラフィーナはどこにいる? おい、セラフイーナ!」
いきなり対策本部に父がアップで顔を出してくれたが、私は無視した。
「姫様、陛下が呼んでいらっしゃいますけれど」
「えっ、私は見えないという事で」
アンネに言われたけれど、私は忙しいのだ。
「そんな訳あるか! 儂からはちゃんと見えておるわ」
父が叫んでくれた。
「父上、こちらは忙しいのです。何なのですか?」
私がむっとして画面を見ると、
「何が忙しいだ。帝国のフッセン男爵に喧嘩を売りおって」
「父上、喧嘩を売ってきたのは向こうでしょう。我が国の民を奴隷にするなど言語道断です」
「しかしだな。セラフィ、帝国と事を構えたらまずいだろう」
「お父様は我が国の民と帝国の貴族のどちらが大切なのですか?」
「いや、セラフィーナ、当然民だが、しかしだな、帝国とやりあうにはだな」
「我が民を奴隷になどしてただで済む訳ないでしょう。帝国の男爵だろうが子爵だろうが、私は許すつもりはありません」
私は言い切った。
「姫様。フッセン男爵の暗部と思われる男が帝国籍の商船から出て来ました」
画面で見張っていたアンネが報告してきた。
「了解。イスモ、直ちに拘束して」
「了解です」
「おい、セラフィ、奴らは外交特権があるのではないのか」
「はああああ? 奴隷商人に外交特権なんかある訳ないでしょ。アーロン、直ちにその商船を武装解除。従わなければ撃沈として良いわ」
「了解しました」
「おい、セラフィ!」
「アンネ、お父様からの通信を遮断して。これ以上は通さなくていいわ」
父の顔が消えた。
「宜しかったのですか?」
呆れてアンネが聞いてきたけれど、
「仕方ないでしょ。どんなことがあっても男爵関係者は全て拘束しないと。我が国の民を奴隷にするなど目に物見せてならねばならないわ。ヨーナス、どれくらい拘束できた?」
「まだ500名くらいじゃないですか。船で逃げ出した奴らもいますからね」
「このサーリアの文官達も奴隷に関与している奴らはいるわよね。出来たら一網打尽にしたいんだけど」
「まあ、しかし、姫様、中々全員を捕まえるのは難しいんじゃないですか?」
「それよりも姫様、お客様がいらっしゃったみたいですよ」
アードルフが無線で連絡してきた。
アードルフ等機動歩兵5機がこの臨時本部を護衛してくれていた。
「兵士と思われる者200名くらい接近中です」
「別に機動歩兵10機20キロ南から接近中です」
「姫様。上空に航路から離れてこちらに向かってくる船1隻あります」
アジトを次々に襲撃された男爵の手のものが我慢出来なくなったのだろう。
一斉に攻撃してきた。こちらからしたら飛んで火に入る夏の虫だ。
「ミカエル。その船を艦砲射撃で攻撃」
「了解しました」
「アードルフ、機動歩兵を頼むわ」
「しかし、姫様の護衛が」
「高々200名くらいどうって事は無いわ。ヨーナスもいるし」
「しかし」
「頼むわ、アードルフ」
私がニコリと微笑むと、
「くれぐれもお気をつけ下さいよ」
アードルフが諦めてそう言うと5機を率いて高速で飛びたった。
マーキュリーは大気圏内でも戦闘機並みの速度を出せる。
「こちらジュピター。ターゲットロックオン。主砲斉射します」
「任せるわ」
「撃て!」
ドカーーーーーン
次の瞬間爆発音が上空でした。
敵の船は一撃で爆発した。
「10機に5機で攻撃に入ります」
アードルフの機の画面から敵を見ると敵の10機は最新のh103ではなかった。旧式のh102型だ。
マーキュリーの大出力ブラスターなら射程、破壊力ともにh103を凌駕していた。
これなら楽勝だろう。
「射程内に入りました」
「よし、攻撃だ」
画面に攻撃するマーキュリー5機が映る。
あっという間に3機が爆発した。
続いて2機が。
残りの5機が慌てて展開するが、
「遅い!」
アードルフの声とともに1機が爆発した。
残り4機のうち3機までは一瞬だった。
慌てた一機が逃げようとしたが、「逃がすか!」
遠距離からアードルフが一射する。
かすった。
敵は体勢を崩して地上に激突した。
「よし、これで後はお客さんだけね。全員後ろに下がって」
私が指示すると慌ててアンネ等が後ろの塹壕に入る。
それと同時に訓練された特殊部隊と思われる者達が建物の中に駆け込んできた。
「セラフィ殿下ですな」
太った男が銃を私に向けて誰何してきた。
「そうよ。貴方たちは自首してきてくれたのかしら」
私が笑って聞くと、
「そんな訳ないだろう。手を上げてもらおうか」
怒って男が言った。
「いやよ」
私が平然と拒否すると、
「威勢の良い王女殿下だ。でもその強がりがいつまで続きますかな」
男が笑ってくれた。
「ふん、同じ事を返してあげるわ」
「ふざけるな!」
男の一人が銃を撃ってくれた。脅すつもりだったんだろう。
「ギャーーーー」
でも、次の瞬間には男の発射したレイガンが反射して男は肉塊と化していた。
「き、貴様、な、何をした?」
指揮官の男は目を見開いた。こいつらもボニファーツが施してくれた絶対防御システムを知らないみたいだった。
「私に銃を向けるからよ」
私はその声を無視してニコリと笑ってあげた。
「さあ、この男のようになりたくなかったら全員降参しなさい」
私は降伏勧告してあげたのだ。
「煩い。やむを得ん。やれ!」
周りにいた20名が私目がけてレイガンを発射した。
でも、当然私のバリアは有効で20名を一気に肉塊に変えていた。
「直ちに銃を捨てて降伏しなさい」
私が手を上げたときだ。
奴らの後ろに銃を構えた海兵隊が現れた。
「動かないで。動くと本当に蜂の巣になるわよ」
「おのれ!」
男は私に目がけて投げナイフを投げてくれていた。
しかし、当然投げナイフがバリアを通れる訳はない。
カチリと下に落ちた。
次の瞬間男が私目がけて飛び込んできたが、私はレイガンを一射した。
男は腹を撃たれて吹っ飛んでいた。
さすが特殊部隊と言うべきか、誰一人降伏はしなかった。
でも、3名生きたまま捕まったのだ。可哀相にその3名はボニフアーツの薬をうたれて、残りのフッセン男爵の戦力についてペラペラ話してくれたのだった。








