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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
冒険者試験編

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#96  筋肉にしてはあまりにも硬く

「さぁ、それだけの筋肉……さぞ重かろう。どれだけ動けるんだ?」


 とてもじゃないが人間味が薄れてしまったガーディアンに向かい、私は先手を打たんと前に出た。


 相手が鋼となれば、玉を用いた魔術……水や氷をメインとした攻撃はあまり効果がないだろう。本家の水竜のそれであればまた話は変わってくるが、未熟な私のそれ程度ではそこまで意味を成さないのが現状だ。


 だからまずは剣で戦う。間で魔術も試せるなら試したいものだが……それはひとまず余裕があれば、だ。


「はあっ‼︎」


 私は両手で柄を握り、刃を前に真っ直ぐと押し出すように放つ。


 私の剣と奴の肥大化した右腕が接触した瞬間、ガギギギギギィィっとあたりに凄まじい金属音が鳴り響く。私は文字通りに火花を散らしながら奴に剣を押し込もうとするが、流石の人工筋肉だ。力押しではびくともしない。


「……ッ!やはり集中力を上げねば斬れんか………」


 だが、先に連発してしまったために今は少し厳しい………が、


「ひとまず攻める……!突破口は後ろにはない……‼︎」


 我が戦王剣に後退の二文字など存在しない。ただひたすらに突き進み、ただひたすらに剣を振るう。守る必要などない。相手が攻められなくなるほどに、こちらが絶え間なく攻め続ければいいのだから。


「はぁぁぁぁあああっ!!!」


 が、やはり硬い………!魔力合金は伊達ではないか………

 

 いつも感じるはずの手応えがあまり感じられない。が、こういう時は武器のせいにしてはいけない。私の未熟さ故にこうなってしまっている。


 なんとか再びあの集中力を出して片腕でも撥ね飛ばしたいところではあるが、中々そう上手くはいかない。


 ましてや、これだけ動いているのだ。情けない話だが、攻撃に集中はできても、先のレベルにまでそれを引き上げるのは現状できそうにない。


「さて……!どう攻略するかな………うおっ⁉︎」


 私の連撃を全て右腕で防いでいたガーディアン。しばらくその状態が続いた、そしてその右腕を斬り落としてやろうと躍起になっていたというのもあるだろうが、どうやら他の部位への集中が途切れてしまっていたらしい。


 あたかもその隙を狙ったかのように、ガーディアンは左拳によるサイドブローを私の横腹に打ち込まんとしている。


(ッ……!避けれんか………⁉︎)


「何を一人で突っ込んでいる………!」


「⁉︎」


 その時、ガーディアンの左拳は何かによって遮られる………いや、止められていた。


 それは、先ほど四体のガーディアンの体を貫通してみせた岩の鋼糸。地面から現れたそれが肥大化した左の前腕に刺さり、その動きを一瞬にして固定してみせたのだ。


 ガーディアンはそれを感知。咄嗟に右腕での攻撃に切り替えるも、私がそれをパリィ。斬ることこそ出来ていないものの、弾くことには成功した。


「すまん!助かった!」


「一人で戦うんじゃない……それとも、私では役不足か?」


「とんでもない……!性格以外素晴らしいギルドマスターだよ………‼︎」


「一言余計だっ……‼︎」


 お前がそれをいうか⁉︎


 などと思ってしまうが、それは後だ。ネストの魔術によって生み出された鋼糸、大抵のものなら動きを封じられるであろうそれだろうが、こと他の個体と同化し己を強化した黒刃の鉄仮面(ブレイダー・マスク)に限ってはそうではなかった。


 その時、ガーディアンは体を震わせ………生物ですらないそれが、まるで力んでいるような素振りを見せた。


 奴の筋肉がギシギシと金属音を鳴らしながら隆起するようで、人でもないというのにその力のリミッターを外そうとしているかのような。体の動きを自由にするために踏ん張っているかのようだった。


 ギギギギギギ………ガギィィィン!!!!!


「ッ……⁉︎この私の岩鋼糸縛(ロック)から抜け出した………⁉︎なんという馬鹿みたいな筋力だ……‼︎」


 それにはネストも苦虫を噛み潰したような顔を見せる。それと同時、ガーディアンによる攻撃が再開し、再び私の右脇腹が狙われている。


「せぃああっ‼︎」


 先ほどは注意力が散漫になってしまっていたが、今回は問題ない。私は向かってくる左拳を剣で受け流し、逆方向から飛んでくる右腕による攻撃をそのまま弾き返した。


「……これは………少々まずいかもな………」


 それは、圧倒的な戦力差というわけでも、私のメンタルというわけでもない………武器だ。


 魔力合金という高硬度、高重量のそれに向かい剣を振い続けたことによって、私の剣の刃が刃こぼれを起こし、ボロボロになってしまっている。決して手入れを怠ったことなどないのだが、それでもこの剣の寿命がこの戦いによってどんどん縮まっていってしまっていることは確かだ。


「すまない……これが終わったら存分に手入れしてやるから………後少しだけ耐えてくれ………!」


 私は祈るように握る剣にそう呟いた。こいつのためにも、いい鍛治師を探さねばな。




「……………火圧縮矢(フレアアロー)……‼︎」


「……っ‼︎レイア‼︎」


「すまない、遅くなった‼︎」


 ガーディアンと向かい合っていると、後方から炎の矢が奴に向かい放たれ、それが直撃した。そして、それは医務室にリンを送り届けて戻ってきたレイアが放ったものだった。


「オルフロスト!すまんが手を貸してくれ……‼︎」


「了解………なんか喋り方が柔らかくなりました?」


「あぁ……こいつにも色々あってな………」


「うるさいぞ貴様ら‼︎戦いに集中しろ‼︎」


 このままもう少しこいつをからかってやりたいところだが、相変わらず言っていることは正しいネストである。


 受験者たちはひとまず全員逃げれてはいるが、それでもこれを外に出してしまえば確実に街は大騒ぎとなる。なんとしてでも阻止せねばなるまい………!

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