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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
冒険者試験編

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#86 バトンタッチ

「ヒユウ………!!」


「回復を急げ!絶対に死なせるな!!」


 ヒユウの試験が終わり、私は急いでヒユウの元に走る。


 心音……呼吸もある。どうやらここまでのダメージでも、命までには届いていないようだ。相当に頑丈な身体だ。


 が、火傷があまりにも酷い。このまま放置していれば、それこそ本当に命に関わってくる。だがそこは恐らく問題ない。ネストも人の心は持っているようで、試験が終わるや否や、すぐさま待機させておいた回復魔術専門のギルド職員を呼んでいた。おそらくあと数秒でこちらにやってくるだろう。


 そして、その前に私たちの前に急いでやってきたのは、先ほどまでヒユウと戦っていたレイアだった。その顔は「完全にやりすぎた」といった感じで、上手く心境を言語化出来ないといった様子だ。ので、


「………レイア」


「……は、はい………」


 自覚はあるのだろう。物凄く申し訳なさそうに私とヒユウを見ている。


「今後、日炎試練(ヘリオス)は私以外にはやむを得ん場合以外使用禁止だ!!」


「………分かりました……………」


 しっかり釘は刺しておいた。レイアがなんで敬語なのかは置いておいて、これに関してはしっかり言っておく必要があるだろう。


 日炎試練(ヘリオス)、凄まじい技であったが、後から被る周辺の被害も甚大なものになる。ましてや、近くに人がいる場合など、危険以外の何物でもない。魔物相手に何度も容赦なく使っていけば、いずれは自分の仲間も巻き込んでしまうだろう。そうなる前に、あらかじめ厳しく言っておいた方がいい。


「それにしても………ヒユウは一体どうやって日炎試練(ヘリオス)を攻略したんだ………?自分で言うのもなんだが、防ぎようなどないと思うのだがな」


「そんなもんまだ冒険者でもない娘にぶつけるな天然娘」


 いや、もはや天然など通り越して狂っているとしか言いようがないが………まぁいい。終わったことを繰り返し考えても意味などない。


 だが確かに信じられん。模創太陽原初の火(プロメテウス)ほどではないが、それでも疑似太陽と呼ぶに相応しい程度には完成度が高かった。


 模創原初魔法(ジェネシス・レプリカ)を模したそれは、並大抵の対処方法などでは意味をなさないはず。それをヒユウは、木刀一本で凌いでみせたことになるが……………


「そんなこと可能なのか?あの木刀が魔力を吸収する魔剣の類ならまだ納得がいくが………」


「いや、それでも厳しいだろう。そもそも、木製の魔剣など聞いたことが無い……それに、ヒユウのそれは、魔剣を語るには少し脆かった………やった私が言うのもなんだがな」


 魔剣はその剣に秘めたる力も凄まじいが、それと同じくらいその耐久性も恐ろしい。超が付くほどの一級品ともなれば、千本の鉄剣と全力で打ち合い続けても傷一つ付かないほどなのだ。


「………とにかく、本人がこれじゃあ、聞きようがない……か………」


 今はとにかく休ませてやらないといけないだろう。ここ数日間、相当必死に勉強して、剣の修練も一層気合を入れて取り組んでいたからな。


「本当に、頑張ったな……ヒユウ………」


「あぁ……さぁ、次はお前の番だぞ………シルカ」


 そう。冒険者試験はまだ全て終わったわけではない。まだ、たった一人の合否が分かっていない―――この私の。


「必ずなって見せろ、冒険者に……!」


「当然だ……!!レイア、ヒユウを頼む」


 私はレイアにヒユウを預け、その場を離れてネストの元へと歩み寄る。私と入れ替わるように職員がヒユウの元にへと到着したようで、早速回復魔術に取り掛かっていた。これでひとまずは安心……か………


「さて、待ちくたびれたぞ………やろうか!!」


「ほぉ、自信満々だな。お得意の剣は使えんと言うのに」


 よく言うわ、そっちが使えんようにしたのだろうが。


「少し他の奴らから距離を取ろう。巻き込んでは申し訳ないからな」


「あぁ………その方が私としても存分に戦える………先に言っておくが、私とて容赦するつもりはない」


「当たり前だ……………だが、」


 私とネストは野外フィールドの中央へと移動する。


 ネストも得物と思わしき物は持っていない。自信たっぷりといった様子から見て、おそらくこいつは魔術師―――武器を一切持たず、己の魔術のみで戦う者だ。


 それにしても、魔力の供給を安定させ、魔術発動の補助の役目を果たす杖すら持たんとは、私を舐め切っているか、あるいは杖など必要ないほどの使い手か………まぁ普通に考えて、おそらく後者だろう。それでも正直……………恐るるに足りん。


「覚悟はしておけ………」


「覚悟?何のだ?」


「こんな冒険者でもない娘に縛りを設けて、更に全力で戦ったというのに瞬殺され、これまで積み上げてきたプライドが一瞬で崩れる覚悟だ」


「………ふっ……ハッハッハッハッハ!」


 私の言葉を聞いたネストは、これまで見たことのないような笑顔で声を出しながら笑う。皆もそんな光景初めて見るのだろうか、仰天した様子でギルドマスターを見やっていた。


「……………あまり調子に乗るなよ小娘。このギルドにおいて、私は絶対だ。絶対でなければならんのだ。組織には、必ず秩序が必要だ……それが乱れているなら正し、それを乱す輩は修正せねばならんのだよ………!」


「お前は頭が固すぎるんだ……少しは爺さんを見習った方がいい………!」


 ならば、あいつの代わりに私が教えてやろう。また違ったトップの在り方というものを、身をもって………!

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