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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
冒険者試験編

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#69 緊急会議、場所は金のかからぬ所で

「……なんっなんだあいつは!!爺とは全く似ておらんな!!」


「しっ……シルカ落ち着いて……!まだギルドの入り口なんだから、周りの人に聞かれちゃうよ………!」


 確かに、施設を破壊してしまったという非がこちらのもある。が、もう少し言い方というものは無いのだろうか!?………というのは、事をやらかした側の戯言か……………


 まぁ、あまりにも没入してしまったのは完全にこちらが悪い。始めは十分間楽しませてもらおうといったような感じであったが、途中からはもはや目の前の巨人をどうやって倒すかということしか考えられなかった。それほどにあの巨人の間という施設は実戦に近い訓練を行うことができ、非常に充実した時間だった。


「あれは合格するまでお預けか………」


「そうだね……絶対合格しなくちゃ………!」


 そう。問題は冒険者試験だ。


 再試験ができないのは相当痛い。それにあのネストの口ぶりからして、試験の内容は恐らく通常とは違うだろう。奴は本気で私たちを落としにかかるはずだ。


 が、絶対ではない。過去の問題を全て解けだとか、竜の首を持って来いなどという理不尽な試験内容ではないだろう。


 向こうは、冒険者になるにふさわしいかどうか、冒険者としてやっていけるほどの能力があるかどうかというのはもちろんだが、それと同じくらい戦力となる人間を欲しているはずだ。


 強い冒険者が増えれば、魔物に対する抑止力も強くなる。その力を蔑ろにして己の首を絞めるほど、奴も馬鹿ではないはずだ。


「まぁ、合格人数に制限はない。既定以上の結果を出せばいいだけだ」


「………出来るかな……私に………」


 ヒユウは自信なさげに呟いた。先ほどまでの元気な少女の面影はどこにもなく、ただ今後への不安で頭がいっぱいになっている様子だった。


「こういうのは出来るかどうかじゃない。やるんだ。そしてお前はやれる。この程度で壁に突き当たっていては、到底騎士にはなれない……そうだろう?」


「………うん。そうだよね……!ありがとう。私やるよ!もちろんシルカもね!」


「あぁ。当然だ!」


 この程度の試練で、私の人生を捧げるべき夢が潰えるなど決してあってはならんのだ。試験には何がなんとしても受かってやる………!






「そうと決まれば、早速対策しなくちゃね」


「だな。とはいっても、実技の方は問題ないと思うがな」


「え?どうして?」


 今私たちは、冒険者ギルドの入り口近くの階段。その端に座って対策案を練っている。


 人が賑わっている時間帯であるのならばあれだが、今はもう夕暮れ時。あまり人の出入りもないし、どこかの店に入る金などもない。

 

 日陰なので涼しいうえに石造りの階段がひんやりとしていて気持ちがいい。現状、最も頭を働かせるのにうってつけの場所だ。


「あの男は今、完全に私たちを舐め切っている。樹拳の指南者(ウッド・グラッパー)をあそこまでどうこうできるとは全く思っちゃいない。事実、私がやったという発言を子供の戯言だと聞きもしなかったからな。今に吠え面かかせてやるわあの小僧………」


「シルカ!私怨混ざっちゃってる!!」


「おっといかんいかん………」


 誰かに聞かれてあの男に伝わりでもしたらまずいな。試験を受ける前に失格になるのは流石に笑えない。


「ともかく、だ。これは大きなチャンスでもある。なんせ、奴の考える私たちにとっての理不尽は、私たちが想像しうるそれよりも遥かに劣るのだからな」


「えーーっと……つまり?」


「実技試験は思っているよりも楽だろうということだ」


「なるほど……っでも、油断は禁物だからね!」


 それでも、気を緩めることのできるようなものでもないということは、ヒユウもちゃんと理解しているようだ。


「どうせ実技の内容は毎年違う。対策のしようもないし、問題は筆記だな………」


「ギルドの図書室、もう使えないもんね………」


 これが最も痛い。物理的に勉強できる環境を奪われたのだから。


 通常の問題であるのならば、私は全く問題ないが……万が一、それでも厳しいような問題が出た時にどうしようもない。ヒユウなどそうなってしまえばもうお手上げ状態だろう。


「あの~、お二人とも、少しよろしいでしょうか?」


「ん………あっ、さっきの……えぇと………リンさん?」


 突如こちらに向かって話しかけてきたのは、先ほど巨人の間に共に居たギルド職員だった。


「あ、はい。リン・クィルガーです」


「向こうはもう終わったんですか?」


「いえ、私はこれから……っそうだった!リザリアさんの方に、オルフロストさんからです」


 そう言われ手渡されたものは――ものすごく見覚えのある鍵だった。


 それは、レイアの住まう集合住宅の鍵。リン曰く、レイアから「私が戻るまで自由に使ってもらって構わない」とのことだった。


「自分の家の鍵を渡されるくらいなんですから、よほど信用されてるんですね」


「まぁ、なんだかんだ長い付き合いなんで……」


 まだ二日目だというのに、すでにもう返しきれないほどの恩を貰っている気がする。いつか絶対に返さなければならないだろう。


「あぁそれと、こっちは私から。冒険者試験の筆記問題集です。少しでも足しになればいいのですが………」


「えっ!?いいんですか!?」


 それを受け取ったヒユウが、目を輝かせてリンを見つめる。なんだか餌をもらった犬みたいだ。


「はい。どのような問題が出るのかは私にも分かりませんが………ギルドマスターはあの通り少し気難しい人なの。でも、あの戦いぶりを見たら、きっと納得してくれるはず………二人とも、頑張ってね!」


「「………はい!!ありがとうございます!!」」


 ギルド職員としての言葉遣いをやめた彼女の言葉は、私たちの背中を押してくれるような気持ちの良いものだった。それに私とヒユウはしっかり応えるべく、ひとまずはレイアの家に向かうことにした―――

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