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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
冒険者試験編

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#63 木製の戦い

 キュイィィィィィ………ドゴゴゴゴゴ!!!!!


 先ほどのヒユウの時よりも、明らかに魔力の注がれるスピードが早く、更にはそれが注がれた直後には、すでに先ほどガーディアンを縛ったばかりの魔力製の鎖は粉々に砕け散ってしまった。


「グァ………グゴォォォアアアアア!!!!!」


「ホワァァッツ……!?ガーディアンが喋っただとォ………!?」


「そんな!あり得ません!樹拳の指南者(ウッド・グラッパー)に発声器官は備わっていません!!そんなはず………」


「………だが、事実今確かにガーディアンが、私たちの目の前で叫んだ………」


 ガーディアンの叫び、それは、魔力を通じてシルカにこびりついた、これまでに彼女が屠ってきた存在達の叫びなのかもしれない。


 そうではなくとも、今の樹拳の指南者(ウッド・グラッパー)の状態は明らかに異常だった。直近のイレギュラーは、つい先ほどのヒユウの時だ。魔力とは少し違う不思議な力を流されたガーディアンは、その場にいたヒユウ以外の者がこれまでに見たことが無いような技を使った。


 シルカは、もちろん普通の魔力を送った。他の者と何ら変わらない、ただの魔力を。


 強いて違いを上げるとするならば、それは生み出す魔力の質だろう。ひとえにただの魔力と言っても、それは行使する物の腕前によってその質も大きく変わってしまう。


 結果、魔術が使えない分魔法だけに打ち込み、模創原初魔法(ジェネシス・レプリカ)を行使するほどにまで熟練されたシルカの魔力は、樹拳の指南者(ウッド・グラッパー)にかつてないほどの力を与えてしまった。


 魔力によって、ガーディアンの体のパーツが少しずつ拡張し、その間に青白いラインが奔る。その目も同系色に怪しく光り、もはや正常な状態とはまったく言えないような姿となっていた。


 当然、それらのような機能もこの樹拳の指南者(ウッド・グラッパー)には搭載されているはずもない。シルカの魔力によって、傀儡同然の巨人は本来あり得ないような変化を遂げてしまったのだ―――――






 おそらく、これは一時的なものだろう。目の前のガーディアンに関してはヒユウの戦いしか現状見たことが無いので通常時がどのようなものなのかは分からないままだが、驚いているレイアたちの顔を見るに、この状態も異常か。


「異常事態……大いに結構!たかが十分凌げば問題ないのだろう……!」


「まァ……そうだがよ……?コイツァちょっとヴェリィハァァドじゃねぇか………?」


「その分今後の糧となる!何の問題もない!!」


 私はいつも通り構え、巨人と相対する。この訓練の歯ごたえがどれほどのものか、試させてもらおうじゃないか!!




「………姉御、あんたほどのお人がなんであの娘を気に入っているのか……俺には分かったぜ………あいつもきっとそうなんだ……己が強くなるほど、より高みへと至るほどに喜びを感じる……エクスタシストだったんだな………!!」


「エクスタシストというのは相変わらず分からんが………まぁ、そんなところだろうな。あの子が村にいる時から、私は少し目を付けていたんだ……さて、後輩から勉強させてもらうとしようか……………」




「オォォォァアアア!!!」


「はあっ!!」


 速い。先ほどのヒユウ戦のガーディアンの速さが一だとすれば、今は五……いや、七くらいだろうか。陽炎のような特殊な技は使ってこないものの、それを補うほどのスピードとパワーによる猛攻。大ぶりの拳の中にも細かい手刀による突きが織り交ざられており、それらのタイミングも読みづらい。非常にシンプルかつ厄介な攻撃だ。


「なんのぉ……これしきぃっ!!」


 私はそれらを木剣で勢いよく弾き飛ばす。


 幸い奴は石でも鉄でもない。言ってしまえば体はただの堅い木だ。それらよりかは拳も軽い。


 そして、それは私の武器にも言える。普段愛用している剣とは違いこちらも木製なため、いつもより軽い分振り回してもそこまで体に負荷がかからず、片手で力任せに振り回しても問題はない。木剣の最大にして唯一の利点と言えるだろう。


 流石に全体的な評価は鉄の剣には遥かに劣るが、樹拳の指南者(ウッド・グラッパー)には適性を持つ武器だ。


 次に私は跳躍、そろそろヒユウのように顔面に一撃叩き込んでやろうと思っての行動だった。が、少し考えが甘かったようだ―――


「ッ!?しまっ……!?」


 それに対しガーディアンが取った行動は回し蹴り。足の芯がピンポイントで私を捉えてしまう。


「ッッッグオオオオオ!!!!!」


「チィィィッ!!」


 すかさず間に剣を挟んだことにより何とか直撃は避けたが、あの巨体のかなりの割合の重量が乗った蹴りは、容易に私を壁まで吹き飛ばす。


「ぐぉっ……!?ったあっ!!」


 そこから何とか吹き飛ばされながらも身を翻し、壁に足から着地。そのまま壁を蹴り、床にへと舞い戻った。




「っと………これは中々っ……いい修練になるじゃないか……!!」


 この少し間違えたら自分の身が危ういような緊張感、思わず笑みが浮かんでしまう。


 この巨人の間。まさに実戦を模した訓練と言える。もしも今後ドン・アルマロに再会したのならば、心から礼を言いたいほどだ。


「っはは!!まだまだこれからだ!今度はこちらから行かせてもらうぞ!!」


 私はこの地下とは思えないほど広い空間を思いっきり駆ける。残りはおよそ八分くらいだろうか。その間に目の前のガーディアンの底力、見れる限りをとくと見せてもらおうじゃないか………!!

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