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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
冒険者試験編

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#61 揺らめくガーディアン

 魔力の鎖が甲高い音を立てて次々と砕かれる。


 ガーディアンは何かを発することもなくただ自らを拘束しているそれを砕く。鎖には見たところ、相当な魔力が込められているようだったが、そんなことはお構いなしだ。


 が、あくまでこれは訓練のための道具。魔力が流されると一時的に鎖の方の耐久力が無くなるというだけなのかもしれない。


「って、あわわっ!?ほんとに起動しちゃった!?」


「オイ姉御……ガーディアン、なんかいつもと違くねぇか……?」


「うぅん………得体のしれない力を注がれて、ガーディアンを制御している構築式に異常が発生したのか………?」


 このガーディアンはあくまで”魔動”。魔力を注ぐことを前提に作られている。ヒユウの得体のしれない力によっていつもと違う様子になっているという可能性は高いだろう。


「ッ!おいヒユウ!武器……!」


「武器………そうだった!木刀まだ届いてないっ!!」


 こちらは丸腰。だがガーディアンは容赦なく襲い掛かってくる。


 ガーディアンが左右に、蝋燭の炎のように揺らめく。そしてその巨体が―――一瞬消えた。


(なっ⁉あの巨体を見失うだと…!?普通あり得ないだろう……!?)


 どこだ、どこにいった………そう奴の姿を探している時には、すでに奴の右拳がヒユウの直前に現れていた。


「ヒユウぅぅううう!!」


「っ!?よぉぉっと!!」


 次の刹那、拳がヒユウに直撃。私の中で最悪の光景が一瞬過ぎってしまう。


 しかしヒユウは衝撃に逆らうことなく体を回転させ、ガーディアンの拳を伝い腕の上を転がる。やがて攻撃から離脱し、何とか着地してみせた。


「ありがとーシルカ!もうちょっと受け流すのが遅かったら危なかったよー……!」


「……っはは……ひやひやしたぞ………」


 おそらく相当鍛えているのだろう。あれを瞬時に受け流したのを見るに、これまでもあのレベルの攻撃を何度も受けてきたのだろう。いやはや、人の慣れとは恐ろしいものだ。


「まさか陽炎を使ってくるなんて……なんだかこのカラクリ、私の訓練のために作られたって感じがするよー……!」


「陽炎?」


「私の師匠が教えてくれた技だよ!オーラの揺らめきと視線誘導で、まるで一瞬消えたかのように錯覚させるんだ!」


「いや……よく攻撃されながら会話が出来るな……私には考えられん………」


「クレェェイジィィィ………」


 レイアとジェニスはそろそろ絶句の域に達しそうだ。かくいう私も内心相当驚いているがな。よほど耳がいいと見える。


「シルカ!悪いんだけど武器とってー!」


「分かった!何がいい!?」


「片刃の曲刀!あんまり反りすぎてないやつ!!」


「了解!!」


 私は巨人の間入口付近にある貸出武器を漁る。


 反りすぎていないとなると、シャムシール辺りはやめておいた方がいいだろう………よし。


「ヒユウ!これでどうだ!?」


 私はヒユウめがけて容赦なく武器を投げる。


 私が選んだのは、木製のサーベル。カトラスとも迷ったが、少し短いと感じたのでこっちを選んだ。


 ヒユウは向かってくるそれを視認、迫ってくるガーディアンの拳を受け流しながらなんとかそれをキャッチ。手に馴染ませるように握って少し開いてを繰り返し、そこからバックステップ。ガーディアンから少し距離を取り、軽くサーベルを素振り。感触を確かめる。


「………ばっちり!片手だとちょっと落ち着かないけど、ないより全然まし………!!」


「多分もうすぐお前の武器も届くと思う!それまで少しの間持ちこたえてくれ!」


「分かった!」


 そう自信満々に返されると、あんまり心配しなくても大丈夫だと思ってしまう。いざとなれば私が例え素手だろうと止めるが、その必要はなさそうだ。


「せいやっ!!」


 ガーディアンが陽炎とかいう技を三連発。ヒユウの右斜め後方に現れる。振り下ろされたのは左拳。


 だが、ヒユウはそれにノールックで反応。刃に拳を滑らせ。そのまま再び跳躍しながら回転。今度は腕の上で着地し、走って上る。


 人で言う上腕二頭筋の辺りでガーディアンの腕を地として蹴り、そのまま顔面に肉薄。


「めぇぇぇぇぇん!!!」


 振り上げた木のサーベルを真下に振り下ろし、ガーディアンの脳天に直撃させた。

 その一連の流れ、私はまるで舞を見ているかのような感覚を覚える。


「………美しい剣裁きだ」


「ありゃあ、将来化けるぜ………やはりマッスルエクスタシストへ至る道もそう遠いものではなァァい……………」


 二人も、どうやら同じことを考えていたようだ。ジェニスのはやはりいまいち分からんが………だから一体何なのだ?そのマッスルエクスタシストとやらは?


「って、もう始まっちゃってる!大変申し訳ございません!!かなり遅れてしまったようで………!」

 

 そんな時だった。急いだ様子で巨人の間にやってきたのは、おそらくギルド職員だと思われる女性。彼女が両手で大切に持っている物は、曲刀のような形状をした木製の武器と思われるもの。おそらく、これがヒユウの得物である木刀なのだろう。


「いえ、待ちもせずに勝手に始めたのはこっちだ。届けてくれてありがとう」


「は、はい……で、どうされましょう?いくら何でもあんな攻撃を捌きながら武器を受け取るのは………」


 まぁ普通、そんな曲芸じみたことなど出来るとは思わんわな。というか、もしかしたら私にも出来ないかもしれない。


 というわけで、私は職員から木刀を拝借し―――ヒユウめがけて思いっきり投げる。


「ってちょっと!?」


「ヒユーーウ!!木刀が届いたぞーーー!!」


「あ!おねーさーーん!!ありがとーございまーーす!!」


「………あ……いえ……………」


 ヒユウはそれをいとも簡単に受け取り、代わりに使っていたサーベルをこちらに投げ返してくる。私はそっちをキャッチし、ヒユウの戦いを見守る。


「………あの、オルフロストさん……この子たち、一体何者なんですか………?」


「私も知りたい………」


 ガーディアンが動き出して七分程度経っただろうか。残り三分。得意の武器を持って、ヒユウはどのように戦うのだろうか?

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