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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
冒険者試験編

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#52 指名されし下戸

「おいおい、随分と唐突だな」


 一時、何かの病気による余命かなにかかとも思ったが、命に係わるものではなさそうで一安心した。


 しかし、冒険者である以上、別の国に行くことはおかしくないとは思うが……なぜ皆そこまで深刻そうにするのだろうか?


「………もしかして、国を出るのは初めてか?」


「いや、そういうわけじゃないんだ。今までもダンジョン調査のために何度か外国には行ったことがある。だが、今までは事前に何日滞在するかなどが決まっていたからな……それらも長くて一週間くらいだったし、そこまで心配することもなかったんだ………」


「………今回は、いつ帰ってこれるのか分からない……というわけか……ちなみに、行き先は?」


「西方。トコロナ共和国だ。行くのは初めてだな」


 答えたレイアは、一気に流し込むようにワインの入ったグラスを傾ける。次第に残っていた液体は全て彼女に飲み干され、たちまちグラスは空になった。


「……ふぅ………」


 一杯飲み終わったレイアはすでに目がとろんとしており、放っておいたらすぐに眠ってしまいそうだ。


「レイア……酒弱いんだな……あ、マスター! エールお代わり!」

 

 私は流石に一杯じゃ飲み足りん。体の違いによるアルコールへの耐性が心配だったが、どうやらこの体も酒には強いようでよかった。


「んっ…んっ……ったあ…! それで? 何のためにそんなところにまで?」


「なんでも……突然九つものダンジョンがトコロナの地に現れたそうだ………」


「ダンジョンが急に……!? だが、そんなことありえるのか……?」


 ダンジョンは、人類が誕生する前にはすでに存在していたという言い伝えも残されている。これまで見つかったダンジョンもそういった類のもののようだ。


 つまり、本来ダンジョンが現れるなどまずありえない。もうそれ以上増えるなどということは起きるはずはないのだ………通常ならば。


「九つ………竜関連か」


「その可能性が高いと、ギルドは踏んでいるらしい……で、骨竜を倒した()()()()()()()()私に白羽の矢が立ったというわけだ………」


 確かに、レイア一人ではあの骨竜に勝つことは出来なかっただろう。だが、それは私とて同じことだ。あたかも自分は何もしていないかのような言い方をしなくてもいいだろうに。


「ん? テリーたちは行かないのか? 骨竜討伐が評価されたのなら、あいつらにも声がかかるだろうに」

「あのパーティのリーダーは、一応私だったからな……それに、今のところあの中で第二階級以上の冒険者は私だけ………竜が関わっている可能性がある以上、それ以下の冒険者には声はかけなかったんだって……」


「もうちょっと酔ってないか……? 口調変わってきてるぞ………?」


「ますたぁ~~、ジンのソーダ割り~!」


「まだ一杯しか飲んでいないというのに、もうすでに出来上がりかけてる………」


 凄く良く言えば酒代がそこまでかからないので安上がりとも言えるが……それでも流石に弱すぎないか………?


 そうして、先ほど私が頼んだエールと共にレイアの酒も運ばれてきた。当の本人は随分と無邪気な笑顔でそれをゆっくり飲んでいた。


「だが安心していいぞー、シルカの冒険者試験の次の日まで出発の日時はずらしてもらったしー……それまではおねぇさんがしっかりと面倒を見てあげるからー………」


「あ、ありがとう……れ、レイア?」


「んふふ~~」


「ハハハ………こりゃ駄目だ……………」


 一杯と半分で完全に酔ってしまったレイア。もはや私の声など耳に届いておらず、ただ笑顔で酒を飲み続けるだけの生物と化してしまっていた。


 私も炭酸が抜けぬ内にと、ジョッキを傾け酒を流し込む。疲労、そして風呂上がりだというのもあってから、夜風に当たりながら飲むエールは何物にも代えがたいような至福であった。


 マスターからのサービスなのだろうか、それともたまたまなのか、先ほどよりも注がれているエールの量が心なしか多い気がする。なんにせよ、これは嬉しい。


「それにしても、この子も大変だな………まだ若いというのに……その己の強さと責任感は大したものだがな………」


 本当にしっかり者の立派な女性だ。本当に、私とは大違いの。


 彼女は一体、これまでどのような道を歩んできたのだろうか。それが今でえも楽しかったと思えるようなものであったのならばそれに越したことはないが、そうではないことも当然あるだろう。


 酒を飲むと共に飲んでいる人間の過去を聞きたくなるのは、年寄りとして長らく生きてきた弊害だろうか。だがまぁ、聞く間もなくレイアは眠ってしまいそうだがな………


「へへっ……しるかぁ……おねぇちゃんってよんでみてぇ?」


「なんだ、お姉ちゃん?」


「ああぁっ……かわいぃぃ……………すうっ……すうっ………」


「ん? なんだったんだ?」


 まぁいい。酔っぱらいはよく分からないことを言うものだ。


 さて、レイアも眠ってしまったし、これ以上勝手飲み食いするのもあれだ。そろそろ店を出て、レイアを家まで運ばね……ば………


「レイアの家って結局どこだ……? っおいレイア……」


「すうぅぅ……んうぅぅ………」


「おーい起きろ……というか、支払いもまだだぞー……レイアさーん……!!」


 酒も入っていい気分で店を出ようと思ったらこれだ……! このままでは帰れん……どうにかせねば………!

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