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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
冒険者試験編

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#48 つれられのんびりまちさんぽ その3

「………あの程度なら問題なさそうだな」


 考えても見れば、あれらの問題を最初に作ったのは私なのだ。多少の捻りや数字の違いはあるものの、例年似たような問題が多い。となれば、前世の知識だけで何とかなりそうだ。レイアからはしっかり勉強しておけと言われたが………


 ひとまずギルドを後にした私たちは、特に当てもなくぶらぶらと街を歩いている。目的のギルドの場所は分かったことだし、道もある程度覚えた。金銭問題、宿などに関してもレイアのおかげで何とかなったので心配することはひとまずなくなったわけだ。

 

 いやしかし、ここまで焦ったのはいつぶりだったろうか………少なくとも、今世ではあれが最大だろう。


「街は面白いか?」


「あぁ。未知のものがいっぱいあって面白い!」


「それはよかったよ」


 今まで知らなかったことは村にもたくさんあった。十六年かけてそれらについてもかなり知っていったわけだが、街というのはそこで覚えた倍以上はいろんなことがありそうだ。


 見ただけでは分からないものがある。そういったものを知っていく探求心、好奇心も冒険者には必要だ。私は外に出ずそれらが膨れ上がってしまったせいで想像力だけが豊かになってしまったが。


 一週間後、冒険者試験に合格すれば、それらは妄想で終わらない。なんとしても受かってみせるのだ。例え何十年かかったとしても。


(まぁできれば、一発で合格したいがな)


 例えばの話だ。




 そういえば、今私の隣を歩いているレイア。


 普段の調査から笑顔の絶えない女性であるが、今日はいつにもまして楽しそうだ。せっかくの安息日を私が邪魔してしまったにも関わらず。


 そもそもの見てくれが良いのだ。こうやってにこやかに歩いているだけで様になっている。これが普段第二階級冒険者として前線で戦っている者だとは、知っている者以外思いもしないだろう。


「なぁレイア、今何か私にできる事はないか?色々世話してもらったし、そろそろ罪悪感が湧いてきたのだが………」


 施しを受けているだけでもどかしくなってしまった私はレイアに尋ねてみる。一文無しだが、それでも何か手伝いがしたかった。


「………もう、十分やってくれているよ」


「?」


 私はその時、それがどんな意味なのかさっぱり分からなかった。






 街を歩いている間に、気が付けばもう夕暮れ時。それもそうだ。私がこの街に着いた時にはすでに昼時を過ぎていたのだ。


 私たちは街の中でも高い場所に位置している丘の上に来ていた。丘と言ってもきっちりと舗装されており、危ない箇所には柵、更にはベンチまであるのだから驚きだ。


「いい場所だろう?この街でも有数の絶景スポットだ」


「………あぁ。いい景色だ。」


 なんと、懐かしい景色だろうか。いや、少し違うな。


 私がこの景色を眺めたのは、この丘よりも上。城の窓からだ。ちょうど私の執務室から、似たような景色を見ることが出来た。


 美しいオレンジ色に染まった太陽はゆっくりと沈んでいき、やがてその空の主導権を月にへと譲り渡す。その瞬間にだけ見ることのできる景色は、移り変わる空色の中でも他には代えがたい美しさだ。


 そして後ろを振り返れば………私のかつていた場所。ヴェラリオ王国の象徴、レイヒルト城。


(まったく、随分と久しぶりだ………)

 

 思い入れが無いはずがない。私はここで生まれ、ここで育ち………ここで死んだのだから。

 この国唯一の城。その大きさ、迫力は類を見ず、一万人規模の人間が日々ここで国のために尽力していた。


 こんなに早く故郷に戻ってくるとは思わなかった。いや、望めばもっと早く帰ってこれた。それをしなかったのは、思い入れはあっても、未練はなかったからなのだろう。


 私は十分やった。国のために戦い、そのために強さを欲した。


 もう、この城に関わることはもうないだろう。なんせ、私はもうただの村の娘だ。立ち入る権利も理由も存在しない。

 もしまたここに来ることがあるとするならば、もう一度騎士の道を進むかあるいは、罪人となった時だろう。


「私は昔からここから見る景色が大好きでな……シルカにも見せたかったんだ」


「あぁ………今日一日含めてだが……本当にありがとうな、レイア。」


 この空模様を見ていると、なんだか感慨深い気持ちになってくる。冒険者として旅に出る前に一目見ることが出来てよかった。心からそう思う。


 前世も今世もやることは大積みだ。けれどもそれ以上に、やりたいことがたくさんある。

 この夕日をもう一度見れたように、それらもきっと実現することが出来る。何も成せずに年だけを取るなんてつまらない。理想を叶えるためには、足掻かなければならないのだ。




「ひとまず、こんなところかな。今日はもう風呂に入ってから帰ろうか」


「そうさせていただこう………ん?()()()()()?」


 入ってからってなんだ?風呂とは帰ってから入るものだろう?


「そうか、村にはなかったんだったな。この街には大きな公衆浴場があってな。ちょっとした名所なんだよ。」


「………あーーー……………」


 流石にそれはちょっとマズいのでは?

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