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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
冒険者試験編

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#46 つれられのんびりまちさんぽ その1

「ありがとうございましたー!」




 結局あの後もしばらく私はレイアの着せ替え人形となり、レイアが気に入った物をいくつか勝手に購入され、今その内の一つを身に纏っているというわけだ。

 購入総額は中々のものだったはずなのだが、それでもレイアは大満足といった様子だ。一体何が彼女をそこまで突き動かすのだろうか………


「うーん………その恰好で剣を背負っているのは流石にちょっとおかしいな………」


「そりゃそうだろうな……せめてレイアの住んでいる場所に荷物を置いてからとかならよかったが………」


「生憎、私が今住んでる場所はここからかなり離れていてな。我慢してくれ………その代わりと言ってはなんだが、いいものを食べさせてやろう」


「いいもの?」




「白い……そしてなんと美しい………」


「シルカってたまに、うちの爺様のような喋り方をするな………」


 そりゃあ中身はその祖父よりも上だろうからな。レイアの前では素が出せるからありがたくはある。

 次にやってきたのは、かふぇ?キッサ店?とかいう店だ。レイア曰く茶やコーヒーを提供する店なのだそうだが、さっぱり分からん………

 

 もちろん村にこんな店などないし、食事は家でしかしたことがない。

 前世なんか、城で出されるものに騎士団用に配給されるもの、戦争中は不味いレーション……ろくなものがなかった。

 その点で言えば、今世は食事に相当恵まれている……もう当分家の飯が食べられないというのは少し寂しいな………


「で、これは何なんだ?なんだか甘い香りが………」


「これはケーキだ」


「ケーキだと!?王族のためだけに作られるあのケーキか!?」


「いつの時代の話だ?今じゃもういろんなところに普及してるよ。まぁちょっと高いがな」


 ケーキ。それは私が指揮官を務めていた頃。何度かこの目で見たことがある。あの甘味嫌いの王でさえ好んでよく食べておられた究極の菓子。王子、王女なんかはそれ以上に喜んで食べておられたな。そんな国のトップに君臨されるような方々が食すものが、今私の目の前に……何ならレイアの前にも存在している……!


「た……食べて大丈夫なのか……?これを食らって打ち首などまっぴらごめんだぞ………?」


「そんなもの店は提供しない……その感じだと、食べた時の感想が楽しみだな………」


 私は恐る恐る目の前のフォークを取る。こんなに緊張したのは初めてだ……ファレイルリーハと戦った時でさえここまでの緊張はなかった。まぁあれはどちらかというと戦う高揚感が緊張を上回っていただけなのだが。


 フォークでケーキを上から切ってみる……柔らかい。パンに近いか……いや、そんな硬さではない。上等なパンよりも更に柔らかいとは、一体これは何なのだろうか?


 そして中に挟まっている、そして表面を纏っているこの白い何か………なんだ?

 あとは苺なんかも挟まっている。流石の私でも、森に生えている苺くらいは知っている。


「い……いただきます………」


 いつもであれば、これがいつもの肉なんかであればすぐにでもがっつくのだが……今回ばかりはそうはいかない………いや、攻めろ……!口に入れてしまえば全て分かる!毒など入っておらぬだろう!


「あむっ……ッ!!!」


 なるほど……!この白いものの正体は牛の乳か!それにふんだんに高級甘味である砂糖を混ぜているのだな……!


 更にこのパンのような柔らかい何か!しっとりとしていてこちらも甘い……!一体この品だけでどれ程の砂糖を使用しているというのだ!?


 そして何よりこの苺!!どこでこのような上物を採取できるのか!!村周辺の森に生えている野苺とは全くの別物……!酸っぱいよりも先に甘いという感想が頭に浮かぶ苺だと……もはやこれは苺なのか!?一体どんな魔術を使った!?


 それら全てが口の中で混然一体となって私の脳を美味しさと極度の甘みが凄まじい速さで駆け巡る……!この私の脳をもってしても追いつけないほどに……!


「よ……よっぽど気に入ったみたいだな……」


 食べる手が止まることを知らない。消えた瞬間に再び味わいたくなってしまう。これはあの王も好むわけだ………そう言えるほどに美味い……!


 ………だが、ケーキを半分辺り食べたところで、そろそろ口が甘すぎると感じるようになってしまった。できればもう少しアの感動を保ったままいただきたかったが……………


「………ハッ!?この瞬間のためのコーヒーか!!」


 まだこいつのポテンシャルには上があるというのか!?

 私はケーキの皿の横にあったコーヒーカップを持ち、少し冷ましてから飲む。

 芳醇な香り。家で淹れるそれとはまったくと言っていいほど別格の香り。そして心地の良い確かな苦み。それによって口の中の甘みがリセットされたその瞬間。私はとうとう真理にへと辿り着く………!


「まさに……不変の幸福………食べ終わるまで続く永久の喜び……………」


「そこまで気に入ってくれたのなら、私も嬉しいよ。少し大袈裟な気もするがな」


 私にそう言うレイアにも、変わらぬ笑顔が浮かんでいた………おや?


「レイアのケーキは私のと違うのだな?」


「今シルカが食べているのがショートケーキ。これはチーズケーキだ………流石にやらんぞ……?」


「分かっているさ。私はこれで十分満足だからな」




「……私より大人だな………」


 大人げなさ過ぎただろうかと少し羞恥を覚えながらも、レイアは自身の目の前にあるチーズケーキとストレートティーを遅れて楽しむのだった。

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