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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
冒険者試験編

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#44 その騎士長、一文無しかつ迷子

 ひとまず、街に行かないことにはなにも始まらない。私は森を抜けるために歩き続けた。


 街自体へは、半日も歩けば普通にたどり着くほどの距離らしい。そんな距離であるのに父さんたちが街に行ったことがないのは、多分行くほどの理由がなかったからなのだろう。武具や装備、調味料、服なんかも商人が街と同じ価格で持ってきて売ってくれるし、村には医者もいる。薬の材料もほとんど周辺の森で取れるし、非常事態などあの村では滅多に起きない。ほとんど自給自足の平和な村だった。


「………しかし、行ってみたいとも思わんのだろうか?」


 実際、私もそう思っているので村を出たわけで、少なからずそう行ったことを思う者も村にはいるはずだ。両親にも以前聞いたが、今の暮らしで十分幸せだからなのだとか。そう思っているのならなにも言うことはないし、私も冒険者という夢がなければそのまま共に暮らしていただろうし、あの生活も中々楽しかった。


 ……………もしあのまま村の娘として育っていったのなら、私はどのような感じになっていたのだろうか?話し相手もいないので、歩きながら何気なくそんなことを考える。


 畑を手伝い、獣を狩り、村で見合い……嫁いで………子を授かり……………


「………考えなかったことにしよう……………」


 ろくな想像が出てこない………






 そうして歩き続けること半日。とうとう私の視界に木以外のものが入ってきた。

 それは明らかに人工物。高台のような建物だった。


「………ははっ!本当に……何年ぶりだろうか‼︎」


 いざ改めて街の風景を見ていると、なぜか自然と顔に笑みが浮かび上がってくる。

 十何年ぶりかにみるリアマルトの景色はかなり変わってしまっていた。当時も城から眺めていただけなのでなんとも言えんところだが、それでもところどころ見覚えのある建物がなくなっていたり、逆に見慣れない目立つ建物があったりなど、街は面白いほどに変化していた。


 ともかく、行ってみないことにはなにも始まらない。時間はまだたくさんある。街を見て回る余裕は十分にあるだろう。




 ーーーそこから十分後……………


「あーーー……………」


 この私とあろうものが、完全なる放心状態に陥っていた………

 下手をすれば戦場よりも多いであろう人の数、立ち並ぶ無数の店、そしてなんとも言えない少し汚れた空気。私が混乱するには十分すぎる要素がこの場所に集約していた。


「とりあえず腹も減ったが……あれ?そういえば金ってどうやって使うんだ………?」


 騎士団時代、思えば一度も金を使ったことなどなかった。強さ以外特に欲しいものもなかったし、剣の手入れのための道具は城の修練場に揃っていた。そもそも鍛錬ばかりで城の外に出たことすらなかったので、どういうふうに使うのかがこの年になって理解できていなかった。まったく恥ずかしい話である………


「こうなるのだったら、修練する前に父さんの交易している様子でも見ておくんだった………」


 金の存在を知らないわけではない。さっきも言った通り村に商人も来ていたし、多くの者はそこで狩った獣の皮や肉、あとは野菜などを金銭に交換したり、その金で色々購入していたのは知っている。私の場合、特に欲しいものもなかったし、仮にあったとしても任せっきりだったからな………自分の教養が足りんことをここまで嘆いたのはこれが初めてだ……………


「……とりあえず財布だな……金を店の者にでも見せれば教えてくれるだろう………あれ?」


 腰のポーチを漁る。小さいのですぐに手元に持ってこれると思っていたのだが、母から渡された財布はそのどこにも入っていない。


「………おかしい……確かに行く前に入れようと………」

 

 もしやこの短期間で盗まれたか……?いや、それに気づかないほど私は鈍感ではない………ん?()()()()()


「…………………あ」


 財布持ってくるの………忘れた……………




 さて、かなりまずいことになってしまったのかもしれない………

 一度村に戻って財布を取ってくるか……?いや、あまりにもカッコ悪すぎる………恥を気にしているような場合ではないのだが………それでもあんな風に見送られて初日で舞い戻るのはあまりにも気まずすぎる………!


「いや落ち着け………ギルドのクエストを受ければ日銭くらいは稼げるはず………あ」


 クエストを受けられるのは冒険者ライセンスを持っている者だけだった………


「誰だそんなしがらみを作ったやつは………!」


 いや私だがな!

 にしてもいよいよどうしたものか………もしかしたら前世でまったく使わなかった分の金が残っているかも……駄目だな……グフストルとしてならともかく、シルカとして城に行ったものなら捕えられて打首はほぼ間違いない………


「そもそもここがどこかも分からん………どこだ冒険者ギルド……………」


 道に迷い、金も無く………放浪者……?


「はぁ〜〜〜……………」


 そりゃあ、こんな大きなため息も出る。街行く人々を眺めながら、近くにあったベンチにへと腰掛けていた。


 えぇっと……とりあえず水はどこかで手に入れるとして………うん……最悪そこの噴水のでも構わん………水さえ摂取していれば数週間はひとまず死なない………なんとか試験まで耐え凌げば……………


「………あの……」


「ん?あぁすまん、今少し考え事を………」


「いや……こんなところでなにをしているんだ……シルカ?」


「え………ってレイア⁉︎なんでここに⁉︎」


「ははは……こっちが聞きたいよ………」


 考え込んでいた私に突然声をかけてきたのは、普通の服に普通のロングスカートを纏って、果物がたくさん入った紙袋を抱えている街の娘。そんないつもとはまったく別の格好をしていたレイアであった。

余談ですが、この作品を思いついた時の元のタイトルは、「戦王剣は新米冒険者〜TS転生したのは世間知らずの騎士長様〜」でした。

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