#38 灼熱のレプリカ
「………っけどよ!!どうすんだよシルカ……!?武器も効かない、魔法も通じない……!!奴に勝てる方法なんて………」
「たわけ、それでも冒険者か…!」
「んなっ⁉︎(……こいつ、なんでこんな急に口調が変わってんだ!?)」
「今さっき言っただろうが!!奴が耐えきれないほどの力で押し切ればいいだけだ……!」
「む、無茶苦茶だよ……!!」
「シルカ、落ち着いて……なんだか目が血走ってる………」
「正直、一度戻って応援を呼んだ方がいい………」
確かに、今私の言っていることは、皆からは滅茶苦茶なように聞こえてしまっているだろう。だが……………
「いやロヴィエ……それは正直やめておいた方がいい」
「……え?…どうして……?」
「簡単なことだ。今儂らがここを離れたら、気が立っているこの竜はダンジョンの外に出てしまう可能性がある。体も小さくなっておるし、十分に考えられる状況だ………皆が街から応援を呼んでくるまで下手をすれば一日はかかるだろう……もしそうするのであれば、儂一人でこの場を凌いでいても構わないが………」
「ッ!!馬鹿な事を言うな!!そんなことできるわけがないだろう!?」
「………だろうな。お前たちは優しいから………だからここで倒す……!此奴を外へは一歩も出さん……!!」
そこまで言うと、皆は一人の例外もなく黙り込んでしまった。少し口が悪かっただろうか……だがこうでもしないと、子供の私の言うことなど聞いてくれはしないだろう。
そして、その静寂を打ち破ったのは、私の隣にいるレイアだった。
「………分かった。私は何をすればいい?」
「……!?レイアさん!!本気っすか!?」
「………本気だ。そこまで言うのだから、お前には策があるのだろう?シルカ」
「あぁ、もちろんだとも………五分だ。五分時間を稼いでくれ。儂が奴にとっておきを食らわせてやる………!!」
「……皆!聞いての通りだ!死ぬ気でシルカを守りつつ、時間を稼ぐぞ……!!もう、この子に託すしかない………!」
「……情けねぇな、俺たちも………了解だリーダー!役目はきっちり果たす!!」
ほかの三人も私を信じて頷いてくれた。感謝の気持ちで一杯一杯になりそうだが、今はそのようなものに浸っている場合ではない。ここまで言ってみせたのだ。必ずやり遂げねばなるまい。
「………ふぅぅ……はぁぁぁ……………」
私は早速、魔法の準備に取り掛かった。
レイア達の必死の足止めを食らっている骨竜は私をターゲットにすることはなく、落ち着いてイメージを集中させることが出来る。
「世界を創りし神よ、我が名はシルカ・リザリア。人の作りしヴェラリオに生まれ、育った者……………」
魔力のチャージに二分……詠唱に約二分三十秒………!レイア達には少し余裕が欲しいため五分と言ったが、形態変化により強化された骨竜がどれほどの力を持っているのかは分からない………!
「ダロン!!最大強化頼むぜ!!」
「当然!もうやってる……!!」
「カロロカロロカロロロカロロ……………!!!!!」
「ぬぅぅ……!なんとしてでも時間を稼ぐぞ……!!」
戦場、それも最前線で目を瞑る。それは本来自殺行為であり、戦うことを諦めた者が取る行動だ。だが、今私の瞼もそのように閉じている。イメージを更に固めるためだ。
一人では絶対に出来ない、あまりにも隙が多すぎる技。だがそれが決まれば、この状況は一気にひっくり返る……!
「……!?ぐあっ………!!」
「ロヴィ……クッ………!!」
ロヴィエが骨竜の右翼に吹っ飛ばされる。攻撃と防御を繰り返しているレイアとテリーの得物はすでにボロボロ。レイアの方に関しては魔法をかなり使ったため体力が限界にまで近づいてしまっている。エルトの雷刃も原型が崩れつつあり、ダロンの杖もとうの前に限界を迎えていた。
全員が極限状態。意識が途切れ途切れになるのも時間の問題となってきた。
そして、発動準備が出来るまで、残り約二分―――
「……真似し太陽…模倣する熱…それは万物を導き……万物を灰燼と化す………」
詠唱などすっ飛ばして今すぐ放ちたい衝動に駆られる。だがこの魔法はこの詠唱が最も重要と言っても過言ではない。ここをおろそかにすれば、技の威力は十分の一では済まない。
助太刀に入りたい。そんな気持ちに自然となってしまう。
だが彼女らは今、私のために、この骨竜を倒すために命を賭けてくれているのだ。期待は絶対に裏切りたくない………!
「カロロロロロロ!!!!!」
「あと三十秒だ!粘れ粘れぇ!!」
「うおおおおお!!!」
厳しい状況下であっても共に励まし合い、共に背中を預け、共に命を賭して戦う。
そんな彼女らを見て、私は改めて思った。
(………やはり、私はこのパーティが好きだ)
「………うらぁっ!!シルカ!!五分耐えきったぞこの野郎!!!!!」
「全員骨竜から離れろ!!ダロン!竜の動きを止めて、シルカにありったけの強化を!!」
「……相棒、最後まで耐えてくれよ………!!」
ダロンは己の杖に願いを言いながら、再び私に最大出力の強化魔法をかけてくれた。竜が一瞬硬直し、とどまった瞬間、私はそこへと狙いを定め―――――
「……………ならば今はただ、この天上の火をもって、その全てを焼き付くそう―――模創太陽原初の火!!!!!」
そして放った太陽を模した灼熱の魔力塊。それは骨竜の身体の中央辺りを中心に生成を始め、徐々に大きくなっていく。やがてそれは骨竜の体全てを包み、私たちの目の前には疑似的な太陽。巨大な炎の球体だけが残された。
シルカの模創太陽原初の火詠唱全編
世界を創りし神よ、我が名はシルカ・リザリア。人の作りしヴェラリオに生まれ、育った者。
御身の世界の均衡を保ち、そして崩す要因となるその力の源を行使し、敵を討ち滅ぼす赦しを頂こう。
使い手は我。使いしは火。火を超えた炎、炎を超えた業火。太陽に届きうる神の炎。
だが、それは模倣。存在する灼熱には遠く及ばず、しかして万物を焼き尽くす、人類の祖により培われてきた聖なる熱光。
真似し太陽、模倣する熱。それは万物を導き、万物を灰燼と化す。
火は暮らしに、炎は戦いに、そして太陽は神話に。
紅蓮の英雄、業火の魔王。そのどちらにもなり得る赤き球は、あらゆる未来と結末を有し、今日もまたどこかで世界を照らし続ける。
それを創ったのは神自身か?自然の摂理か?はたまた言い表すことのできない英知を超えた事象か?
されど、この我が愚かな考えは答えを持たず、我の生が尽きるまでたどり着けないこの世界の真理。
ならば今はただ、この天上の火をもって、その全てを焼き付くそう―――模創太陽原初の火!!!!!
この模創太陽原初の火が、現状この世界における火属性魔法の最高位です。




