#37 形態変化
「ッ!?」
先ほどまででは考えられないような突然の激しい光。骨竜を包む光量は凄まじいものの、それでも奴の姿だけははっきりと捉えられる。だが、奴の足元に展開されている巨大な魔方陣は、奴にとってのこの状況をひっくり返す攻撃手段―――というわけではなかった。
「な、なんだ……?」
「竜の身体が………小さく……!?」
光に包まれた竜は、その神魔を上回るほどの巨体を一回り……いや、二回りほど小さくさせた。やがてゆっくりと光は弱くなっていき、再び骨竜の姿が視界にしっかりと映る。
「………姿自体は、あんまり変わってねぇな…?」
「……いや、違う………」
パッと見、体のサイズが変わったこと以外は何も変化が無いように見えたテリー。だが、数刻もしないうちに、ロヴィエが奴の身に起きた異変に気付いた。
「………砕いた箇所が……全部治ってる……」
「なんだって!?………本当だ……さっきシルカが派手にぶっ壊した肋骨も、きれいに戻ってやがる………!」
砕けた肋骨はその全てが修復されており、欠損していた左翼もその鋭い爪が元通りになっていた。
「………テリー…普通、レイアが破壊した左翼を見れば誰でもすぐ分かる……と思う」
「……ロヴィの言う通り………テリー、視野が狭すぎると思う」
「ッ!……だあぁクッソ言い返せねぇ………!!」
テリーの顔は恥ずかしさで本人の意思とは関係なく赤面し、必死に言い訳を探そうとするも思いつくものは何もなかったそうで、頭をポリポリとかきながら二人から目を逸らした。
だがこいつ、本当に小さくなって骨が戻っただけなのだろうか?
見てくれは少しこじんまりしただけのようだが、なぜだろうか………先ほどよりも厄介になっている気がする。
「……………フゥッ…‼︎」
「シルカ……‼︎」
ガギィィィィン!!!!!
「チッ……‼︎やっぱりそうか‼︎」
この骨竜……体を小さくしたことで骨密度を高め、耐久力を上げている。
いや、それだけではないな。
フォフォン……フォン……
「まっ…⁉︎魔法陣が増えた……‼︎」
骨の体を保つための魔力が減ったことにより奴の余裕が増え、その分召喚魔術に費やせるようになったのだろう。そして余裕ができたかつ先ほどまでの戦いでもしもやつが私たちの攻撃を学習していたのならば………
「小さくなっても同じことだ……‼︎ 瞬間炙熱‼︎」
「……………」
レイアが先ほどのように奴の骨に触れ、その一部をこれでもかというほどに焼き尽くす。それは先ほどのそれとも比べものにならないほどの火力であり、本来それは熱した骨をそのまま焼失させてしまってもおかしくなかった。だが、
ガギィィィ・・・!!!!!
「ッ!?なぜだ!?なぜ刃が通らない……!?」
「やっぱりか………!」
振り落としたのちに響いた音は焼けた骨が砕けるような音ではなく、まるで剣が盾に弾かれたかのような、金属音に近しいものであった。
そう、骨竜は行使できる残った魔力を自身の鎧として利用している。魔力の盾は魔法によって生み出された熱からその身を守り、更に学習したことで熱にもかなり強くなっているだろう………
「あれ食らって煙一つ上がってねぇ……どうなってんだ…?熱されてなかったのか……?」
「いや……確かに私は魔法を発動させたし、骨は熱されていた……だが、おそらく熱が足りなかったのだろう………」
「足りなかったって……あれってレイアさんの最大火力じゃないっすか……!?いくら何でも適正ランク第四階級のノーマリエでそんなのに耐えれる奴なんて………」
「だが、奴は耐えてみせた………さっき奴に触れた時、先ほどとは比べ物にならないほど、奴の身体は冷えていた……まるで、深い海の底にある石のような………」
冷えていた………海の底……
「………もしや、これがファレイルリーハの影響か………?」
「……水の力で自分の身体を冷やしてる………ってこと?」
「かもしれんな。だとすれば………ここまで使った戦法は、もう使えないと言ってもいいだろう………!」
さて、相当厄介なことになってしまったな………!
元より火属性の魔法、魔術を得意としていたレイアの戦力は半減してしまったといっても過言ではない。更に骨の強度が上がったから剣ではどうしようもなくなって―――――
「………なんて言ってたら、この間と一緒ではないか……!!」
以前と変わらない。という言葉は様々な場面に用いられる。
久しい友との再会、十年越しに食べた家族の料理、人の心の本質。
だが、こと戦いにおいてそれは、なにも成長していないことを指している。
重ねた修練の数は間違いなくその時よりも多いというのに、その時と強さが全く変わっていない。強くなりたいと願う戦士に、そのようなことはあってはならないのだ………!
「……このままだとまずいな……最悪…撤退も視野に……!」
「何を言っておるのだ、レイア……!」
「……!?」
「一回攻撃が通用しなかっただけで、心にひびが入ってしまっているではないか。自分の心よりも先に、ひびを入れ、砕かねばなるまい相手が目の前におるだろうに」
「……急にどうしたんだ………まさか、シルカも竜の影響を……!?」
「心配するな。そのような事ありゃあせんわ」
竜の影響とやらを受けたら、私も強くなるのだろうか?まぁ、目の前のこいつのようにはなりたくはないわな。
「あの骨の強度は相当なものにまで高まり、更に強固な魔力の鎧……さっきまでの儂らの攻撃じゃあ、あいつには勝てんだろう………」
「………儂?」
「ならばどうするか………それ以上の、奴が耐えきれないほどの攻撃を叩き込めばいいだけよ………!!!」
ここにいる全員、もれなく力を貸してもらおう。その代わり……こいつは絶対に倒す………!!




