#36 意地張り共
「レイアさん!」
「遅かったな、大丈夫か?」
「えぇもちろん!!」
返答しながらも、即座に骨竜にへと攻撃を叩き込む。
攻めることに重きを置いた私の一撃はダロンによる強化によりその剣圧を更に増し、両手で握りしめ全速力で走った分の勢いも追加したそれは、骨竜の肋骨部分辺りに直撃した。
コォキボキィィィ!!!!!
「カルルロロロロァァァアアア!!!!!」
そしてそれは大きな音を立てて一気に亀裂が走り、刀身を当てた一部分を粉々に破壊することに成功した。
骨竜にはこの見た目で感覚器官が備わっているのだろうか、はたまた自身の身体が崩れていくことに焦りのような感情を覚えたのか、声帯がないので無意味だというのにも関わらず叫びのような行動を取る。
といっても、あんななりじゃ脳もないだろうし、感情なんて普通あるはずないだろうが………やはり、まだまだ魔物は謎が多い。
「……スピードが乗っていたとはいえ……なんというパワーだ………」
私の骨竜への初撃に、レイアが驚愕したような声色でそう言った。
だがレイアもそう言ったように、先ほどの私の攻撃は加速力を掛け合わせたものだ。普通に考えればより大きなダメージを与えられるのでそれに越したことはないが、このレイアという冒険者、中々に負けず嫌いなのだ。村で修練に付き合ってもらっていた時も、子供相手の組み手で白星を全く譲る気がないのだからよっぽどだ。そのおかげで私もいい訓練になるので助かってはいるのだが。
まぁ少し年も離れているし、私はそれの下側だ。何かしら思うことがあるのだろう。私も昔は新入りの騎士に負けないようにと一人勝手に奮闘したものだしな。
「当たり所が良かっただけですよ」
「フッ……言うじゃないか……!!」
私が笑ってそう返すと、レイアも負けじと骨竜に攻撃を仕掛けた。
「瞬間炙熱……!」
レイアは怯んだ骨竜の隙を突き、左翼に向かって跳躍。大型の魔物と戦う際は、同じ部位を狙うのも有効的な手段……らしい。ほとんど人か狩猟する獣としか戦った経験がないためなんとも言えんが………
そして翼部分の骨にレイアの左手が触れた瞬間、彼女の魔法が発動。その部分の骨を集中的に、そして一気に熱し――そこにめがけて繋げるように右の剣を振り下ろした。
「ッ……たああああぁっ!!!」
するとどうだろう。炎によって脆くなった骨はいとも簡単に砕かれ、骨竜の大きな左翼はそれはそれは見事に欠損した。
「ナイスレイアさーん!!俺も負けねぇぞ!」
「今、テリーは私たちの僕……」
「そう、目の前のスケルトンに集中して………」
「んっだとぉ根暗双子ガールズ!?」
レイアにへとナイスを送ったテリーだったが、エルトとロヴィエのサポートに回っている以上、加勢するわけにもいかない。それでも、あまりにも双子からの扱いが酷いことに若干の憤りを覚えた彼であった―――――
「だが、現状は中々悪くない。このままいきたい所だが――」
「多分、それは無理です」
「なんだって?………!?」
一瞬私にそう言われたレイアはなぜそう思うかを聞こうとしたのだろうが、その答えはすでに彼女の目の前にある。
突如として、骨竜の全体が怪しく光り始めたのだ。そして竜はカロロカロロと音を出すばかりで何をしようとしているのかはさっぱり分からない。
「ッ……あれって!?」
その時、ダロンが何かに気付く、そしてそれは、彼が口にするよりも、私たちがなんだと騒ぐよりも前に、自分たちの目にも入ってきた。
骨竜の下、地面に展開されていく巨大な魔法陣。それは巨大な骨竜の身体を覆えるほどのサイズだった。
「クッ…!竜の身体が邪魔で、構築式を全部読み取れないッ……!!」
地面に付いている骨竜の足、それによって踏まれている箇所と足によって視界が遮られた場所。それらはダロンの構築式解読の邪魔となり、それによって対策案も考えられなくなる。
「シルカ!一旦距離を取るぞ!!………っおい!!何をしてる!?」
「はあああああ!!!」
確かに、ここは確実に引いた方がいい場面だ。もしここで爆発など起きようものなら、私の身体はひとたまりもないだろう。今やってるのは馬鹿のような行動だ。
けれども、分かっていても、ここで引いたらファレイルリーハの時と同じだ。
今の私を突き動かしているのは、単なる愚かな意地だ。
だが私はあの日、あの伝説の存在と戦った時に決めたのだ。例えどのような酷い死に方をしようとも、どれだけ愚かであっても私は私の考えを貫き通すと。そうした方が、私の戦王剣での戦いも、悔いが残らないような気がするから。
「せぇぇぇやぁぁあああ!!!!!」
振り下ろした剣は、骨竜の残り全ての肋骨の悉くを粉砕し、あたりには骨片がパラパラと落ちる。そしてそこでは―――魔法陣の奇妙な輝きは少しずつ増していた。
「さて……何が起こるかってうおっ!?」
「馬鹿なのかお前は!!何かしてくる敵に突っ込むとはどういう神経をしている!?」
レイアが私の身体を抱きかかえ、一気にバックステップ。骨竜から距離を取った。
そしてその直後、どうやらその光は最大にまでなったようだった―――――




