#34 強固かつ高密度な肉無し体
「カロロロロロロロロ!!!!!」
「っはは!なんという迫力……!」
流石に伝説の神魔ほどではないが、それでも相当なプレッシャーを放っている。
「これを砕くのは、文字通り骨が折れそうだ……!」
「まず手始めに俺が行く!しっかり観察しろよ!!」
「分かった!支援するよ!!」
まずスタートを切ったのはテリー。それにすかさずダロンが身体強化系の魔法を付与する。打ち合わせもなしにここまでの連携を行えるのは流石だ。
この骨の竜……肉が無い代わりに骨が発達したのか、体の大きさだけなら先のファレイルリーハを上回る。こいつが少し尻尾を振り回すだけでも十分脅威となるだろう。
だがテリーはそんなことを意に介することもなく突き進んでいく。
腰の鞘から取り出したのは、ヴェラリオではあまり見ない片手直剣であるフィランギ。一メートル半ある全長の一メートル強は鈍い鋼色の刃がギラリと輝いている。柄頭には何かの牙のような飾りがついているが………あれは意味あるのだろうか?ともかく、珍しい武器であることに変わりはない。
「うおらあああぁっ!!」
テリーは骨竜の頭部めがけて飛び上がり、そして渾身の一刀を放つ。だが骨竜はそれを皮のない翼の生えた腕でいともたやすくガードして見せる。
「うぐっ……!?クソ硬ぇ………!!」
飛び掛かって襲ったにも関わらず、ただガードしただけの骨に押し返されそうになるテリー。顔はみるみる険しくなっていくが、それでもその剣圧を緩めることはない。
「ぬうぉぉぉおおおおお!!!!!」
パキッ
「ぐああっ!?」
テリーの剣ははとうとう弾かれ、大きく吹き飛ばされた彼の身体は宙を舞った。
だが流石は戦いなれていることはある。宙で身を翻し、私たちの近くに見事に着地して見せた。
「大丈夫かいテリー!?」
「あぁ……しっかし相当硬いぞあいつ……でも、攻撃が通らないほどでもないな。ほんのちょっとだが、魔法で強化した俺の渾身の一撃でようやっとひびが入りやがった………っと、再生する気配はないな。まだひびは残ってる」
「目がいいんだな?テリー」
ここからテリーが攻撃を当てた箇所まではかなり離れているし、そのひびも小さすぎてよく見えん。
「まぁな……んな事より大将、あいつどうする?」
テリーはレイアに尋ねる。敵がどうであれ、戦力差がどうであれ、最終的な判断を下すのはリーダーであるレイアだ。そして彼女は、臆することなく言葉を口にする。
「攻撃は通るんだ。絶対に倒せない相手ではないはずだ。それに……私たちには非常に頼もしい助っ人もいるからな」
「……レイアさん………」
レイアが言う頼もしい助っ人。つまり私のことだ。だがそれは決して自惚れている訳ではなく、自分を客観的に見た結果だ。年齢、冒険者としての経験は劣っているものの、その積み重ねてきた修練、そしてかつての実戦での経験は誰にも負けないという自負もある。
「だが、こんな少女に頼っているようじゃ冒険者の名折れだ。私たちも負けるわけにはいかない………ここで全力を尽くして、街に堂々と凱旋しようじゃないか!」
その言葉に返ってくるのは、各々の気迫の籠った返事。その意思は誰一人のものも欠けることなく、闘志は相乗効果を見せどんどん膨れ上がる。
だがそれでも、私だって負けたくない。そう思いはするが、あくまでもやるべきことは目の前の敵の討伐。いつぞやの猪戦の時は一人であったため少々遊んでしまった部分もあるが、今私たちはチームなのだ。周りに迷惑をかけるわけにはいかないし、個人成績よりも連携が重要となってくる。
「………じゃあ、まず私たちが撹乱する……!行くわよロヴィ」
「えぇ、エル」
まず先陣を切ったのはエルトとロヴィエ。風刃と雷刃をそれぞれ手に、骨竜にへと向かっていく。もちろんすでにダロンの強化魔法が積まれ、そのスピードは先ほどよりも早くなっている。
「さぁ………」
「「存分に迷いなさい………!」」
骨竜が一緒にまっすぐ向かってくる二人に攻撃する素振りを見せた瞬間、二人が左右に分かれる。二人の思惑通りに竜は首を振ってどちらを狙うか迷い、一瞬動きが鈍くなる。
「そこっ……!」
先に攻撃を仕掛けたのはエルト。二本で立っている骨竜の足元に雷の斬撃を放ち、その衝撃は奴の体全体に響き渡る。攻撃を当てた箇所にはテリーの時同様ほんの少しの亀裂が走り、確実に攻撃が通っていることを示していた。
だが、エルトの雷刃の最大の武器であり、武器そのものでもある雷に関しては全く効いていない。思い通りの効果を発揮しない自分の技に軽く舌打ちするも、エルトは攻撃直後しっかりとヒットアンドアウェイの姿勢を取る。
骨竜は一度離れたものの自分を攻撃してきたエルトの方をターゲットとして定め、そちらに向かい腕を振り下ろした。骨密度の高い強靭な大骨は十分すぎるほどに殺傷力の高い武器となり、エルトにへと襲いかかる。
「でも、結局魔物……頭は…そんなに良くない………」
エルトに骨の一撃が当たる前に、今度はロヴィエが風刃による攻撃を骨竜の後頭部にへと叩き込んだ。それにより攻撃は中断され、骨竜は完全に二人に翻弄されているようだった。
「エルトとロヴィエ……やはり流石の連携だな。今回誘ったのは正解だったみたいだ」
口角を上げながらもレイアはそう言った。しかし、最奥に潜む骨竜の力はまだまだこんなものではなく……………




