豆知識 重力の思考実験
相対論的重力理論をつづける。
ここからは思考実験だ。
われわれは地球を遠く離れ、無重力の宇宙空間を航行中だ。
あなたは上昇加速するロケット内の一室に立っている。
ロケットの床面があなたを上向きに押し込み、あなたは足の裏で自重を感じている(つまり地上とまったく同じ感覚だ)。
この部屋の壁に、水平に光線を発射する銃が取りつけられていて、向かい側の壁の同じ高さにある的に照準を合わせている。
発射!
水平まっすぐに光線が走る。
・・・かと思いきや、この光の航跡はなんと、下向きに曲がる。
光が水平方向に進む間に、ロケットは垂直方向に加速し、向かい側の壁が上にずれてしまうために、光は的より下に当たるわけだ。
これを「光はまっすぐに進む」と決めたアインシュタインは、「いや、曲がってないね。高速運動する物体が空間をねじ曲げただけだもんね」と言い張る。
まあ、相対的にはそうともこじつけられる。
が、本当に驚くのはここからだ。
宇宙から母なる地球に戻ったあなたは、地上に着陸・静止したロケットの一室に立っている。
地球の重力があなたを下向きに押し込み、あなたは足の裏で自重を感じている(いつもの感覚だ)。
ここで再び、壁に取り付けた光線銃の出番だ。
光線をさっきと同様に、向かい側の的に向けて発射する。
今度こそ光は水平方向にまっすぐに進み、的の中心に当たる。
・・・かと思いきや、またしても違う。
なんと、やはり光は下向きに曲がり、的の下側に当たるんだ。
アインシュタインは言う。
「なっ」と。
「(地球の)質量が時空間をねじ曲げたんじゃ」と。
ここでもう一度繰り返さなきゃならない。
光はどこまでもまっすぐに進むんだった。
ゆがんだ時空間上の測地線・・・すなわち、定点間の最短経路を。
光は決して曲がらない。
だとしたら、曲がるのは相対的に、時空間の方とするしかない(ただ、地球程度の質量の天体では、この曲率は無視できるくらいにわずかだ)。
質量は時空間をゆがませ、ゆがんだ時空間は加速度を発生させ、加速度はあなたに質量を感じさせる。
それこそが重力の正体だ!とアインシュタインの一般相対性理論は結論づけている。




