豆知識 天体の運動
紀元がはじまる頃にプトレマイオスが確立した天動説は、天上の星々の動きをわりとうまく描写してたようだ。
この考え方は千年以上も(あの教団による異端弾圧のおかげで)生き延びつづけた。
ところが、改めてきちんと観測してみると、完全な円であるはずの惑星の軌道が、実は楕円にゆがんでるという問題が持ち上がってきた。
おかしいなおかしいな・・・と感じながら、中世になった頃、コペルニクスがようやく「天動説まちがってんちゃうん」と言い出したんだった、死を覚悟して。
考えてみりゃ、地球を中心に頭上の天球(空にかぶされた壮大なドーム屋根)が回転してる、って理論基礎はあまりにも古くさい。
そこで、全天の星背景を不動のものとし、相対的に地球を回転させる(すなわち地動説)ことにしたわけだ。
なにしろ、太陽を中心に、水、金、地、火、木、土、の惑星が同心円上を周回してくれる図はシンプルで、かつ美しい。
ここにガリレオが望遠鏡を手に現れ、木星を周回する衛星を見て「やっぱコペ説、まちがいねーわ」と、太鼓判を押す形になったんだった。
ところで、天体の運動論におけるガリレオの役回りの重要性はそこじゃなく、本文とはまったく関係なく思える「慣性の法則」の論理立てだ。
かいつまんで言うと、「動きはじめたものはずっと一直線に動きつづける」「ただし外から力を加えない限りな」というやつだ。
それは少し横に置いておく。
さて、天上世界(宇宙空間という概念はまだない)の構造理解が更新されても、やはり惑星の軌道は楕円に見えてしまう。
最先端の天文台を任されたケプラーが、精密な観測記録を元に軌道計算すると、惑星の描く楕円形は二次関数の法則に正確に従ってることが明らかになった。
こうして、正円軌道という幻想は完全に葬り去られる。
そしてついに、微分と積分(二次関数の表現式!)の発明者であるニュートンが現れるんである。
まあ逆に、惑星の軌道を数式で説明するために微積分法をつくってしまったわけだけど、それほどの天才だ。
ここでガリレオの慣性の法則が出てくるんである。
この法則をもちろん知ってるニュートンは、大砲の弾道を研究してた。
大砲のタマもこの法則に従い、「動きはじめたら一直線に動きつづける」はずなのだ。
ところが、撃ち上げられたタマは、なにかわからぬ下向きの力を受けて軌道を曲げ、放物線を描いて地上に落ちる。
二次関数だ。
・・・まてよ、この曲線のスタートとエンドをなめらかにつないだら・・・まさか楕円形にならん?
これを読んでるみんなも、ちょっと興奮してこん?
天上界の星の動きが、地上のルールと結びついてるとしたら・・・
いいとこだけど長くなりそうなんで、「万有引力編」につづく。




