豆知識 エントロピーの法則
熱は、エネルギーそのものに見えて、実はエネルギーの最終的な「形」を指すんだって。
すべてのエネルギーは、最後は熱になっておしまいらしいよ。
これが科学における根幹にして最重要知識、エントロピー(熱力学)の法則だ。
エネルギーは、使えるタイプのやつから使えないタイプのやつになる・・・とだけ言ってるのが、エントロピーの概念だ。
エネルギーは絶対になくならず、ただ形を変えるだけなんだ。
石油は燃えてエネルギーを解放し、世界を揺るがして燃えカスになるけど、熱は残る、って具合い。
鉄球を持ち上げると、「重たいよう」という(位置)エネルギーが蓄えられる。
その手を離すと鉄球は落下運動を開始し、つまり別の形のエネルギーになる。
その運動エネルギーが床にぶつかり、衝撃と音と熱というまた別の形のエネルギーになる。
衝撃とは、エネルギーが起こした仕事のこと。
その際に散らかる音とは、空気の震えのこと。
そして発せられる熱とは、粒子の震えのこと。
震えは系内(地球や宇宙)をどこまでも伝わっていき、やがては平衡状態におさまる。
この過程で、震えが徐々に弱まることから、熱いものは冷めていく。
が、逆行程はあり得ないので、冷たいものは熱くはならない(新たにエネルギーを加えないかぎり)。
宇宙にあるすべてのエネルギーが、仕事を終えた後に震え・・・すなわち熱に落とし込まれる。
音でさえ、空気を震わせる熱と言える。
震えは平衡状態に向けて広く薄く散開しつづけ、温度が下がりきったところで、宇宙は使用可能エネルギーゼロの完全な静穏状態に落ち着く。
最終的には一切の原子が震えを止め、この世界は絶対0度であるセ氏−273度に凍りつく(現在の宇宙は−270度くらい)。
原子が動かなくなったら、もちろん生物は生きていられないし、地球も銀河も形をとどめてなんかいられない。
こうなると、宇宙は摩擦なしの真っ平らにならされて無となり、要するにおしまいだ。
(※正確には、エネルギーの保存則から、震えは完全には止まらず、運動の最小値=基底状態で超安定となる)
宇宙の最後に、素粒子は静止する。
宇宙の営みとは、最当初に与えられたエネルギーを解放して、原子で構築された世界を徐々に動かなくしていくことに他ならないようだ。
この不可逆性を説明するのが、エントロピーの法則だよ。
みんな、長生きしたかったら、エネルギーを無駄遣いしないことだ。
宇宙は、無限でも永遠でもないらしいからね。




