豆知識 天動説から地動説
この世界は、どこまでもひろがる平原。
この不動の地を覆う丸天井が回転することで、頭上の星はめぐる。
太陽と月には特別なレールが用意されてて、一日に一度、その軌道を運ばれていく。
あったりまえの事実だ。
主観的には。
ところが、七つか八つばかりの大きめの星だけは、天球の流れに従わず、昨夜あっちに出たかと思えば、今夜はこっち、明日はどっち・・・という具合いにうろうろとさまよってることに、あなたは気づく。
そこで探究がはじまる。
ようく観察してみると、その中の二つの星、すなわち水星と金星は、太陽の周りをぐるぐると回ってることがわかる。
なにしろこのふたつは、昔から暁の明星、宵の明星といって、明け方と夕刻にしか姿を表さない。
すなわち、太陽「周辺」にしか。
あの二つの星が太陽の周囲をめぐってるとなると、太陽とは地平を隔てたところまで放浪するあの三つの星、すなわち火星、木星、土星はどうなってるのか?
これまたようく観察してみると、おいおいどうやらあれらの星も、地球をまたぐ軌道でぐーるうう~・・・っと太陽を周回してるようだ。
その昔、動かない地球とその天球上を運ばれる太陽と月、そしてその太陽をめぐる星々を図説するのに、プトレマイオスは地球を中心にして、まるで歯車式の時計のように複雑なメカニズムを描いた(天動説)。
神さまとはこれほど難解な天体構造をお考えになるのだなあ、さすがさすが、と。
ところがあなたは、プトレマイオスが見落としてた天体の仕組み、しかも最も重大な事実に気づく。
すなわち「この地球も太陽の周りを回ってんじゃね?」って点に。
太陽の近くをめぐる水星、金星と、太陽から逆サイドまでを大きくめぐる火星、木星、土星の間に、地球もまた軌道を取れば、この全天の運動にうまく説明がつく。
主観と客観が素晴らしくうまく噛み合う。
しかも、あの見苦しい周転円(小歯車)をふんだんに配置したプトレマイオス式のカラクリよりも、シンプルに図説できる。
天体のすべての運動は同心円上、という形で。
こうまで美しくあってこそ、神さまの仕事じゃね?
知識のないひとは、地上からの狭い視点だけで夜空を見上げて満足する。
そこ止まりでもロマンティックで悪くないが、新しい知識を持つだけで、あなたは宇宙からの広大な視点を手に入れられる。
神さまが創造したメカニズムそのものの理解によって、神さまがごらんになった光景が拝めるんだ。(ここからさらに進めば「神さまの不存在」の説明まで可能だ)
知識を持つのは、必要だからって喫緊の理由だけじゃなく、人生を豊かにするため。
勉強していろいろ知ってかしこくなろうってのは、社会をうまく渡ってくためじゃない。
知って面白がれる人間は、きっとしあわせだと思うんだよ。




