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科学コラム  作者: もりを
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死んだらどうなるか?問題・23

「この世界は空である」推しがますます極まりつつあるこの読みものですが、その先に果たしてタイトルに準じた着地点はあるのでしょうか?

筆者としては、深い考えなしに(知識と科学的裏付けには正確を期しているつもりですが)その場での思いつきを並べ立て、ロンリの行方は成り行きにまかせているので、自分の指先から編まれる文章を読み返しては、「ええっ、世界ってこんな姿だったのか?」と驚き、興奮し、得心がいっているわけではないものの、それでもただ書き進めるしかないのが現状です。

こうしてまったく不意に現れてしまった、サイエンスでは説明のつかない「生気」なるものの存在は、筆者の手に負えるものではないので、いったんは横に置いておきます。

ここではまた深海底に場所を移し、分子が生物の前駆体である粗機能を組み立てているところまで、話を巻き戻しましょう。

ところで、ダーウィンの雰囲気的進化論は、今や精密に理論立てられた「ドーキンスの進化論」に取って代わられた感じです。

進化論を「キリンは、高い枝の葉っぱを食べようとがんばった結果、首が長くなった」という、今だに昭和時代の解釈(というよりも俗説)を信じているひとは少し問題があるので、きちんと理解しましょう。

キリンの首は、正確には「短いもの、太いもの、曲がったもの・・・いろんな姿に枝分かれした結果、長くまっすぐに伸びる方向に進化したものが適者として生き残った」のでした。

首の短い種が、何世代にもわたって高い枝の葉っぱを食べようとしたところで、首が長くはなりません。

たった一度の遺伝子のコピーミスが首の長い種をつくり出し、その有利な形質を獲得した当たり組が生存競争を勝ち抜いていくことで、ついに全キリンが首の長い種の子孫に置き換えられたわけです。

進化はランダムかつ全方向的であり、強い意欲と指向が種の形態を変貌させていくわけではありません。

要するに、あなたが肉体改造を試みてムキムキになったところで、その変わりっぷりは子孫の姿かたちにはつゆほども影響を与えない、ということです。

後天的な獲得形質は、次の世代に遺伝することはないのでした。

さて、話題は海底深くの熱水噴出口に戻っています。

その煙突は半導体素材でできており、側壁にうがたれた微細な小部屋内で、自然の力で発動するエンジンが・・・電子の通過による分子間のドミノ押し出しで駆動する機構が奇跡的に組み上がり、なおも物質の掛け合わせを繰り返して、洗練と複雑化を進めているのでした。

そして、素材の数知れないコンビネーションのトライアルは、ついにベストマッチを見つけ出したようですよ。

こうしてついに、有機物の合成は(はなはだ都合よくはありますが)RNAの形成にまでたどり着いたのです!

RNAはご存知の通りに、遺伝子の元、進化の基本単位みたいな性質のひとなので、おおいよいよか?という感じになってきますね。

ここで思い出したいのが、生物という概念における三大基本要素です。

それは、1・外界から独立している(膜に包まれたりとか)、2・自己管理をする(新陳代謝をしたりとか)、3・自己複製をする(子孫を残したりとか)・・・というものでした。

この中では、1番があまりにも簡単に実現できそうに見えるために、おっちょこちょいなひとは、最初の生命体が「まずあぶくの中に材料を詰め込み」「その中で新陳代謝を学ばせ」「最終的に自らの完コピを制作」できるようになるのが真っ当な順序だと考えるわけです。

ところが、これは残念ながら引っ掛け問題のNG解答です。

なぜなら、あぶくは儚いものだからです。

いっとき、奇跡のようにあぶく生物が発生したとしても、その命脈が一日と保つことはありません。

あぶくがはじけるまでの制限時間内に、新陳代謝と自己複製の能力を身につけることは、絶対的に不可能です(1億年もらっても足りないほどでしょう)。

だとしたら、ある場所に留まってじっくりと生命現象を身につけ、機能を完成させてから自前の容器(ぶっちゃけ、細胞膜)をつくり、満を持してその環境を離脱してポータブルになるのが現実的です。

つまり、この順序並べ替え問題の正解は、「まずは小部屋の中で自己複製の機能までをつくり上げる」でした。

われわれのご先祖さまであるRNAは、どうやらこの問題に正解したようです。


つづく

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― 新着の感想 ―
[一言] 「生気」については、一旦横に置かれたようなので、先話で、感想しなかった点をひとつ。「生気」を仮定する場合は、それを仮定すると何が説明できるかを示す必要があります。生命の存在がどうしても説明つ…
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