表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
科学コラム  作者: もりを
61/102

死んだらどうなるか?問題・20

死んだらどうなるか?を考えていたのだと、ふと思い出すわけですが(いつも忘れます)、ずいぶんと回り道をしているものです。

ただ、その目的地にたどり着くまでに、まずは「生命現象」という途方もない道のりをゆかねばなりません。

そして、死を語る前に、どうしても誕生を考え詰める必要があるのでした。

あなたが生まれた話ではなく、生命そのものが生まれた話を、です。

ダーウィンは「生ぬるい小さな池」あたりから生命は発生したと考えていたようで、確かにその環境だと、有機的なスープが凝縮され、温められたり日を浴びたり濡れたり乾いたりを繰り返すうちに、生命の素のようなものがころりと生まれそうな予感があります。

実際に、太古の地球上に存在し得た物質を煎じて電気を流す(カミナリの代わりに)、というバカバカしい実験で、アミノ酸が生成された事実があります。

さらに、干潟の満ち干で細胞膜がつくられ(これも実験ずみ)、その中に収められた有機的なスープがうまい具合いに循環すれば、ダーウィン的進化の初手になり得るという研究もあるようです。

ところで、今さらの感はありますが、生命誕生には必要最低限の三つの条件があります。

すなわち、

1、閉じた系である(細胞膜などに覆われ、外界から独立している)

2、自分の体を自分で維持管理できる(養分を摂取してエネルギーをつくり、新陳代謝をする)

3、自己複製ができる(自分の形をした子孫を残す)

というものです。

上に紹介した「スープにカミナリ説」は、「まずは膜の中に材料を入れてしまおう」という順序なわけです。

一方で、ぼくはこちらの方がオススメなのですが、「生命現象をつくったのちに、それをカプセルに入れて環境から独立させよう」という考え方もあります。

それが、現時点で最も有力な生命発生理論である、「深海底熱水噴出口生命起源説」です。

地球が出来たての頃、大気には酸素がなく、当然ながら、海洋にも二酸化炭素が充満していました。

その深海底に、地底のマグマで熱せられた水が噴出する穴が空いていた(現在の深海底にも存在します)ところから、物語ははじまります。

この熱水は数百度もあって、文字通りにアッチッチなわけですが、その周囲に、比較的穏やかな温水噴出の口があると想像してください。

そこからは、硫化水素が主成分の(つまり、二酸化炭素の海水とはpHが違う)水が噴き出しているのです。

温水には硫黄やら鉄やらといった重金属も含まれているために、その成分が積もり積もった噴出口は、まるで煙突のようになっていまして、見た目通りに「チムニー」と呼ばれます。

さて、チムニーには非常に微細な孔がたくさん開いており、スポンジのような内部構造になっています。

その入り組んだ迷路のような孔に、都合よろしく、前生命物質が安定的にひそむことができそうなのですね。

現代のような酸素たっぷりの海の中に水素が飛び込むと、両者は安定を求めて水(H2O)になりますが、当時の二酸化炭素の海では、メタン(CH4)になります。

C!なんとなんと、この記号はゆうきの証です(有機物とは、炭素=C混じりである、ということです)。

ただ、メタンで生命が創造できればいいのですが、その後に誕生したわれわれの肉体は、極めて雑な言い方をして、「メタンになりきる前の中間物質」である、ホルムアルデヒドからメタノールあたりの「雰囲気」でできています。

つまり初期生命は、安定した水素と二酸化炭素の壁は化学変化で飛び越えたが、メタンに到達してしまうほどには変化しすぎなかったようです。

その中間の不安定な物質に留まって、生命は創造されたわけですが、こんな難しい作業を魔法で実現させてくれるのが、チムニーの多孔質な壁面というわけです。

チムニーを形成する素材である鉄と硫黄の化合物は半導体で、電子が都合よく通過できるようになっています。

そして、水素を噴出させるチムニー内と、外界である二酸化炭素の海との間に、前章でミトコンドリアの構造を例にして説明した電荷の勾配(「陽子=+」と「電子=-」の濃度による電荷の差)が存在するのです。

要するに、内と外とで陽子の数が違うために、浸透圧により、陽子も電子も多い方から少ない方に流れたがります。

この勾配(理論上の坂の角度)により、噴出してくる水素まじりの熱水から、二酸化炭素の海に向かって、半導体であるチムニー内を電子がほとばしります。

電気の発生です。

このエネルギーを獲得し、チムニー内で眠っていた無機物が有機化され、多孔質な小部屋のひとつひとつに、生命の素とも言うべき初期物質(単純なアミノ酸など)が濃縮されてたまっていくと考えたら・・・あなた、興奮しないでいられますか?


つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ