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科学コラム  作者: もりを
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死んだらどうなるか?問題・19

「この世に物質が生まれた」の部分を入念に描写しているわけですが、本当にこの物語、死にまでたどり着く日がくるのですかね・・・?

それはさておき、比較的穏やかな環境を与えられた太陽系第三惑星で、原始世界はひとつの実験を開始しました。

電荷の勾配(+と-の強弱バランス)によるイオンや電子の移動と、化学反応(原子のモデル上の電子の出っ張りやへこみを噛み合わせるパズル)のみによって、多種多彩な分子の形成をはじめたのです。

組み上げられた分子はさらに組み合わされ、ますます多様な性質のものに展開されます。

数限りないピースの突き合わせが、ああでもない、こうでもない、と果てしなく繰りひろげられました。

原始世界は、元素間の相性を根気強く試したようです。

その結果、さまざまな分子が巧みに絡まり合うアミノ酸が「偶然に」生み落とされました。

生命をつくるのに非常に重要な素材です。

さらにアミノ酸は長大に連ねられ、とてつもなく複雑な構造のタンパク質が「偶然に」形成されました。

こんな偶然の連鎖(文字通り)が、実際に起きるものですかね?

しかしまあ、億年のケタとは、それが形成されるに十分な歳月なのかもしれません。

そもそも現代の結果からさかのぼれば、自然はその難しい方程式の解をあらかじめ用意していたわけですから、「できそうなものはできる」という法則から、必然的にそれはでき得たのでしょう。

こうして、自然は生命体を形づくる準備を終えたわけです。

それをこの惑星上で具体的な風景にスケッチすると、「ぬるい陽だまりの海辺にたまった有機物のスープ」という画づらになります。

そこへ、雷がドーン!と落ちまして、原始の生物が発生しました。

・・・というのが、古典的な科学(ただの直感?)による生命誕生物語の見立てだったわけですが、最新の理論によると、そうではないようです。

ここでもミトコンドリアの構造がヒントになっているので、生命発生のメカニズムの説明を聞く前に、予習しておきましょう。

ミトコンドリアというエネルギー製造装置は、電荷の勾配で発動します。

「プロトン(陽子)勾配」と呼ばれますが、ふたつの系の間に陽子の濃度差があるのです。

要するに、装置の外側と内側とで陽子の数が違っていまして、陽子を多く持つ装置外から浸透圧の原理で、この+電荷を中に呼び込むことができるわけです。

そして装置内への通過の際に陽子は、ある羽根仕掛けの酵素を回転させ、ころりとエネルギー(ATP)を組み上げるのです。

そのメカニズムはあまりに全自動的で、ミトコンドリアとしては「仕事をするぞう、それっ」という発意さえ必要ないほどなのです。

これはつまり、細胞内にミトコンドリアをもつ宿主(例えば人類)が、ミトコンドリアのエネルギー生産の働きを「自律的」と表現するのと入れ子になって、ミトコンドリアにとっても、ATPの生産は自律的であると言えます。

そういうからくりにできてるんだから、やろうとは考えなくても無意識下でそれをやっちゃう、という意味です。

無意識下!・・・これは非常に深い意味を持つ表現ですよ。

なぜなら、「生命体のある部分を動かすのに、意識は必要ない」「それはただの自然現象なのだから」と言っているのと同意なわけですから。

水が高いところから低いところへと流れるのと同じことが、そしてその流れが勝手に水車を回してしまうのと同じことが、生命体の内側に設置されたエネルギー製造装置において起きているのです。

そしてこの装置のメカニズムは、深海底にも存在するのだ・・・というのが、現在の発生生物学の主流となりつつある理論です。

昔むかし、太古の昔・・・ある深海底に、地下深くでマグマに熱せられた水が噴出しておったのじゃ。

・・・からはじまるお話ですが、これは次回に。「この世にものが生まれた」の部分を入念に描写しているわけですが、本当にこの物語、死にまでたどり着く日がくるのですかね・・・?

それはさておき、比較的穏やかな環境を与えられた太陽系第三惑星で、原始世界はひとつの実験を開始しました。

電荷の勾配(+と-の強弱バランス)によるイオンや電子の移動と、化学反応(原子のモデル上の電子の出っ張りやへこみを噛み合わせるパズル)のみによって、多種多彩な分子の形成をはじめたのです。

組み上げられた分子はさらに組み合わされ、ますます多様な性格のものに展開されます。

数限りないピースの突き合わせが、ああでもない、こうでもない、と果てしなく繰りひろげられました。

原始世界は、元素間の相性を根気強く試したようです。

その結果、さまざまな分子が巧みに絡まり合うアミノ酸が「偶然に」生み落とされました。

有機体をつくるのに非常に重要な素材です。

さらにアミノ酸は長大に連ねられ、とてつもなく複雑な構造のタンパク質が「偶然に」形成されました。

こんな偶然の連鎖(文字通り)が、実際に起きるものですかね?

しかしまあ、億年のケタとは、それが形成されるに十分な歳月なのかもしれません。

そもそも現代の結果からさかのぼれば、自然はその方程式の解をはじめから用意していたわけですから、「できそうなものはできる」という法則から、必然的にそれはでき得たのでしょう。

こうして、自然は生命体を形づくる準備を終えたわけです。

それをこの惑星上で具体的な風景にスケッチすると、「ぬるい陽だまりの海辺にたまった有機物のスープ」という画づらになります。

そこへ、雷がドーン!と落ちまして、原始の生物が発生しました。

・・・というのが、古典的な科学による生命誕生物語の見立てだったわけですが、最新の理論によると、そうではないようです。

ここでもミトコンドリアの構造がヒントになっています。

このエネルギー製造装置は、電荷の勾配で発動します。

つまり、装置の外と中で陽子の数が違っていまして、陽子を多く持つ装置外から浸透圧の原理でこの+電荷を呼び込み、装置内への通過の際に、ある羽根仕掛けの酵素を回転させ、ころりとエネルギー(ATP)を組み上げるのです。

そのメカニズムはあまりに全自動的で、ミトコンドリアが「意図的な仕事をする」必要さえないほどなのです。

これはつまり、細胞内にミトコンドリアをもつ宿主(例えば人類)が、ミトコンドリアのエネルギー生産の働きを「自律的」と表現するのと入れ子になって、ミトコンドリアにとっても、ATPの生産は自律的、と言えないでしょうか。

そういうからくりにできてるんだから、やろうとは考えなくても無意識下でそれをやっちゃう、という意味です。

そしてこの装置のメカニズムは、深海底にも存在するのだ・・・というのが、現在の発生生物学の主流となりつつある理論です。

昔むかし、太古の昔・・・ある深海底に、地下深くでマグマに熱せられた水が噴出しておったのじゃ。

・・・からはじまるお話ですが、これは次回に。


つづく

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 今話の前半のアミノ酸の長大な高分子、タンパク質が、原始の世界から、現在のようになる確率って、計算できないかな?、ざっくり最大と最小値とか桁だけでも。アミノ酸の諸…
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