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科学コラム  作者: もりを
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アイデンティティの獲得

有機体における最初の「入魂」って部分を知りたい!

その作業を経たものが、すなわち生命体となるわけなんだけど、なかなか取っ掛かりが見つからない。

つわけで、ついにわが探求の旅は、脳神経科学方面にまで踏み込んだんだった(この分野では、劇的な相転移ののちの進化展開しか教えてはくれまいが)。

ものの本によれば、原形質的な最初期の有機体は、体外近傍からの刺激に対する機械的な反応をまず覚えた。

酸に触れたら吐き出す、糖に触れたら取り込む、など、自分の構成成分を保持するための、これは意識なしの化学反応と言える。

ところがこの単純な自動的対応(反射)が進化し、ある時期にシンギュラリティを起こすわけだ。

外界のあれやこれやへの正確な対処のために、刺激受容体の感度を発達させたうえに、システムを一元化しはじめたのだ。

装置が緻密になり、大掛かりになり、洗練されると、やがて神経系を束ねた奥に中枢部(単純脳)をつくって、情報を統括するものが現れる。

体の外縁に触れるものの印象情報を総合すれば、周囲の状況や置かれた環境をおぼろにイメージできる。

すると今度は、イメージされた事物に働きかけようという機能が発達する。

神経束は、インプットされた刺激の統合→反射(忌避する、親和する)という原始的対応から、ついに能動的なアウトプット、つまり「活動」(追う、逃げる、戦う)を行うところまでを担いはじめた。

この操縦者こそが、原初の魂なのではあるまいか?

情報の収集と整理のみを行なっていた統括部に、目的という概念が発生し、それにともなう積極的な営みが開始されたわけだ。

原初意識は、ついに意思へと到達する。

さらに重要なのが、光受容装置を発達させた視覚の獲得だ。

受容体に飛び込んでくる光子に科学的に反応して光と影をオンオフで判断していた分子が、磨かれ、集まって画素数を増やし、神経のメカニズムを発展させて、外界の細密な姿を認識しはじめたのだ。

こうなると、周囲の狭いエリアを探るのみだった外意識が、遥か遠距離にまで拡大される。

近接物との直な触れ合いで肉体内のやりくりに終始していた閉鎖世界とは別ものの、「外界の中に位置するわたくし」というひらかれた認識と感覚は、進化のリミッターを完全に取っ払う。

生命は、世界の構造を理解するとともに、自分の立場や社会との関わり合いという難しい概念に到達し、ついに「食う」「食われる」の場における適者生存の競争を本格的に開始するわけだ。

こうして、情報解析と対処に莫大なエネルギーを投資したものが、世界を支配することになる。

・・・と、今んところはこんなまとめ方。

だけど、どの局面で入魂がなされたかは、まだ謎のまま。

つか、最初の時点で、すでに作業はすまされてたような気が・・・

究明にはまだまだ遠い。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「アイデンティティ」深い話題ですね。電子は区別できないことになっていて、排他原理(複数の電子が同じ空間、物理状態を占めることができないという物理法則←お題が哲学的なため、この感想が科学と哲学…
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