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サザやんのこと・1
とある酒場のカウンターで、いつものようにひとり飲み。
その目と鼻の先に、サザエやアワビの入った生けす・・・というか、小さな水槽がある。
これはアホの大将が「マジでか?」というほどの金をかけてしつらえたシロモノで、観賞用と言っていいほどに水がきれいなんで、友だちのいないオレは、そのシンプルな生物たちをいつまでもながめて過ごして飽きるということがない。
彼女たち・・・つまりサザエやアワビたちを見てると、食欲を越え、あるいはシンパシーなどをも越え、友情に似たものが芽生えてくる。
つまりなんというか、その生活環境が他人事でなくなるというか、感情が移入してしまうのだな。
中でも、ひとりの立派なサザエがお気に入りだ。
この子をじっと見守ってるうちに、目の前にいる彼女が人格を獲得していき、呼び捨てでは申し訳ない気持ちになってくる。
このサザエさんは、酒の場でのオレにとっては、食べ物以上のナニモノかなのだ。
いや、「サザエさん」というと、ある特定の人物のイメージに支配されてしまいがちなんで、ここは「サザやん」としよう。
今夜は酔っ払ってるんで、明日につづく。




