第79話『アッケルマン辺境伯城へ』
登場人物
◎舞原 彰(まいはら あきら:アキラ)
男性 59歳
身長180cm超 バキバキの筋肉質 スキンヘッド まつ毛の長い、キラキラした瞳の女性のような目
定年間近の某県警刑事
剣道七段(練士)柔道五段
逮捕術上級(全国大会準優勝の経験あり)
雑学好きのうんちく親父
涙もろく人情派
素人童貞
殉職後、異世界にエルフの美少女に転生
◎マイカ(アキラ)
年齢16~18歳くらいの見た目
白金色の長い髪
緑色の瞳
先の尖った耳
巨乳
のエルフ美少女
舞原彰の転生後の姿
ハンデルの営むヘルト商会にて稼働
ラウムテ帝国の皇家直臣となり、異世界初の警察組織建設のため奮闘中
◎ケルン
モンスターであるケルベロスの子(♂)
3つの頭、尻尾は1本
中央の頭に他のケルベロスには無い、赤い尖った角が生えている。
火を吹く
甘いものが好き
◎ハンデル
男性 30歳
身長180cm強 細身の引き締まった体型
茶色くせ毛短髪 茶色の瞳
旅の行商人 剣の達人
街道筋の脅威となるモンスターや盗賊などの退治を請け負う「闘商」としても活動する。
割りと二枚目
◎エフェリーネ
女性 22歳
ラウムテ帝国摂政
第9代皇帝の女帝ヨゼフィーネの一人娘
ヨゼフィーネの死後、皇帝に即位した従弟のヤスペルの代理として政務を執り行なっている。
身長165cm 中肉
茶色セミロングストレートの髪
やや淡い茶色の瞳
◎リーセロット
女性 年齢不詳(20歳代前半から半ば辺りの見た目)
エフェリーネの側近くに仕えるダークエルフの女性
身長170cm 美しい体型 爆乳
黒髪の長髪 黒い瞳
雷の魔法を使う
◎ペトラ
55歳(見た目は常人の20歳代半ばくらいの若さ)
女性 姓はリデル
ステルクステ騎士団団長
身長約230cm 筋肉質だが丸みを帯びた体型で、腹部腰部が細く括れている。
赤い肌 赤い瞳 銀色の蓬髪
亜人のオーガ族で大陸最強の戦士と謳われている。
レズでドM
好ましいと思わない相手には、とことんドS
◎アードルフ
41歳 獣人種である狸人族の男性
身長約170cm ずんぐりむっくりな体型
焦げ茶色の短髪 同じ毛色の太い尻尾
頭上に半円形の耳
ステルクステ騎士団団長ペトラの副官
巨大な戦闘斧を使う剛の者
変化の魔法を使う
◎イエルン
21歳 黄色に所々黄土色の斑点がある毛に全身を覆われた獣人、豹人族の男性
身長190cm弱 スリムでしなやかな体型
ステルクステ騎士団団長ペトラの副官アードルフの従士
非常に速い速度で走れる
◎アッケルマン辺境伯
男性 42歳 実年齢より若く見える
身長約180cm 細身 栗色短髪七三分け 榛色の瞳
ラウムテ帝国 伯爵 名はフィリベルト
その所領地は帝国貴族中、ウェイデン侯爵家に次ぐ広大さ。
北方を敵対するフリムラフ教国と接する為、その抑えの任に就く。
モンスターの収集家で、モンスターの狩猟捕獲だけを目的とする部隊を編成している。
◎ライン
男性 37歳
身長約185cm 筋肉質
黒髪短髪 黒い瞳 黒色の髭面
アッケルマン辺境伯に仕える騎士
アッケルマン伯爵が編成するモンスター猟獲隊の隊長
◎シュルス
男性 61歳 実年齢よりかなり老けて見える。
身長約155cm 痩せ型 肩までの長さの白髪
アッケルマン辺境伯に仕える魔法使い
眠りの魔法を使う
「…大きい…馬…だよね?」
マイカはペトラが曳いてきた巨大な黒馬を見上げながら言った。
「おおよ、マイカ。儂の愛馬ウイントだ、風よりも速く走るぞ。
こいつに乗って駆ければ、最早追い付けなくとも、ケルンを拐った奴らがアッケルマン伯の城に着いた瞬間を捉えることは出来るかもしれん。」
ペトラは、アッケルマン辺境伯が抱えるモンスター猟獲隊がケルンを拐ったものと断定したかのような物言いである。
「でもペトラ、そうと決まった訳じゃ…」
「いんや、儂の勘がそう言ってる。儂の勘は良く当たるのでな…
さ、行くぞマイカ。このウイントは気難しいゆえ儂以外の者は背に乗せぬが、共にならば大丈夫だ。」
「そう…」
と、マイカはペトラに答えた後、ウイントの正面に廻って
「ウイント号、宜しく頼みます。」
と、ウイントに向かって深々と頭を下げた。
「フフンッ」
と、ペトラは鼻で言ってウイントを見つめているマイカを抱き上げ、自分の右肩に乗せた。
「フフンッ、やはり儂の勘に間違いはないわい。いや、これは人を見る目かな?
マイカのその、我が愛馬に対する誠心誠意な態度…惚れが増すということよ!」
ペトラはそう言ってマイカを右肩からウイントの背に移し、自らも飛び乗った。
「さあ行くぞ!
イエルン、いくら遅れてもよいから付いて参れ!!」
と傍らに控えていたアードルフの従士イエルンに向かって言った。
「はっ、団長閣下。しかし私は豹人族の中でも最も俊足を誇る獵豹種でありますので、遅れは致しません。」
「フッ、申すことよ。
アードルフ!貴様も後から付いて来いよ!」
「へい、手筈のとおり、団長とあっしの従士100名ばかりを連れて行きやすよ。」
「おう。では行くぞ!進路は西!アッケルマン辺境伯の城へ!!」
(は、速い!これ本当に馬の速度か!?)
マイカとペトラを乗せた巨大馬ウイントは猛然と街道を突き進んでいた。
その走るスピードは、マイカが目を開くことが困難になる程の向かい風から判断すると、前世の世界の馬とは比べ物にならないくらい速く走っているように思われた。
その凄まじい速度で走っているウイントの横に、豹人族であるイエルンがピッタリと徒走で付いてきている。
(いやいや、イエルン君も何でこんなに速く走れるんだ?この世界はモンスター以外の、普通の生き物も人も、オレの前の世界より、よっぽど能力が高いみたいだな。)
ペトラとイエルンはシャツにズボンといった平装で、武器もイエルンが短刀を一振持参しているだけでペトラは丸腰だった。武装していないのは、相手に余計な警戒心を持たせないためというより、単にこちらの方が速く走れるからという理由らしい。
マイカもエルフの衣から白い長袖シャツと乗馬ズボンといった姿に着替えている。
そして30~40分程駆けて行くと登り坂に入ったが、それでもウイントとイエルンは速度を落とさない。
「あと少しでこの台地の上に建つアッケルマン伯の城に着く!
…ん?前方に何かおるぞ。」
丁度その時、マイカ達の背後の空が明るみ始め、ペトラが前方に居る何かを発見した。
「儂には何か判らん。マイカ、イエルン、判るか?」
「うんペトラ、私は夜目が利くから、よく見てみるね。」
空が明るみ始めたとはいえ充分暗い。
そこでマイカが
「光の魔法!収光瞳!!」
と唱え、前方の物体を注視してみた。
「うーん、ダメだ。遠すぎて黒いゴマみたいにしか見えない…んー……」
(あっ、そうだ!前に光の魔法「空間照写」を使った時、映し出した映像をトリミングして縮小出来た。あれを応用して拡大も出来るんじゃないか?)
「…これだけ離れてると、単にカメラじゃなく、望遠鏡のイメージかな?…ん…
光の魔法!遠望照写!!」
マイカが右掌を前に出してそう唱えたところ、マイカの前に顔の大きさ程の光の輪が現れた。
マイカはその光の輪を右手を窄めて5本の指先で触り、続けて手の指を大きく「パー」の形に広げた。
すると、その黒いゴマのような物が忽ち拡大された。
覆いの被さった荷車である。荷車が前へ進んでいたが、馬で牽いているにしては少し遅く感じられた。
「当たりだ!真後ろゆえ見えんが、あの遅さ、人が牽いておるに違いない!
やはり儂の勘が当たったわい!!」
マイカの後ろでペトラがウイントの手綱を操りながら言った。
「だが残念じゃが城に入る前には間に合わんの。奴らが入れば門は閉ざされてしまうわい。」
段々と空が明るさを増していったことにより前方の景色が良く見えるようになってきた。
前方の岩がちな台地の上に武骨な石壁が見えてきた。
「あの石壁に囲まれておるのがアッケルマン伯の城よ。ま、城と言うより要塞と言うべきかな。」
進行先に見えているその石壁が目指すアッケルマン辺境伯の城であることをペトラはマイカに伝えた。
すると、前を行く荷車は、その石壁に設けられた一つの鉄製の門をくぐり中へ入っていき、荷車が入り終わると門は固く閉ざされてしまった。
「おう、間に合わなんだ。門が開いておれば続いて入ろうと思ったのじゃが…」
ペトラは愛馬ウイントの足を止め、その背から降り、マイカも抱えて地に降ろした。
「どうするのペトラ?」
「普通に正面から訪ねて行っても儂ならば中へ入れてはくれようが…ケルンのことは知らぬ存ぜぬを決められてしまうだろうな…」
「でも、本当にケルンがあの荷車に居ると決まった訳じゃ…」
「いや、居る!儂の勘がそう告げておる!!」
「はい、ペトラ団長閣下のおっしゃる通りです。間違いありません。」
イエルンが地に顔を近付け、前方を進んでいた荷車の轍の跡と人の足跡の匂いを嗅ぎながら言った。
「この足跡から私に道を尋ねた男の匂いがします。あと、轍の跡から微かにケルン殿の匂いも。」
「ほーれ!やはり儂の勘は当たるじゃろう?
非常事態が起こった際、儂の勘は冴え渡ってくるのだ!」
「ハハ…確かに凄いや。それってペトラの特殊能力なの?」
「スキル?そんなのは知らんな。
さて、先に言った通り正面から出向くと知らぬ存ぜぬを通されるだろうから、ここは一つ、奇襲といこうか。」
「きっ、奇襲!?まさか戦いを挑むつもりなの?」
「ふんっ、心配いらんマイカ。要は相手の出鼻を挫いて相手の優位に事が運ばぬようにするだけさ。」
「なるほど。で、奇襲って、どうやるのペトラ?」
「あの石壁を越えて入ろう。
イエルンよ、貴様、崖登りは得意か?」
「シャキイィーンッ」
イエルンの両手指の爪が長く伸びた。先端が曲がった鉤爪だ。
「はっ!団長閣下。この爪先が懸かる所であれば何処にでも登れます。」
「よし!では先に儂とマイカが派手に石壁を越えてみせる。されば城兵は儂に気を取られるだろうから、イエルンよ、その隙に壁を登って内から門を開けろ。」
「はっ!!」
「そしてウイントよ、おのしはその開いた門から城内へ入って、そこら辺で駆け回ってくれ。」
「ヒヒィィーンッ!!」
ペトラの指示がウイントには理解出来るらしい。前足で地を掻いてやる気満々だ。
「よし!行こうか、皆!!」
「ちょ、ちょっと待ってペトラ。あの壁を派手に越えるって、私はどうやればいいの?」
マイカは、その少なく見積もっても40~50メートルは有りそうな石壁を遠目で眺めながらペトラに聞いた。
「おうマイカ、おのしは儂の背におぶされ。」
「え?私をおぶったまま壁を登るの?大丈夫?」
「大丈夫だ。さっ、早く!」
マイカはペトラに言われたまま、ペトラの広い背におぶさった。
「おっ!マイカ、おのし小柄な身体の割に中々…」
ペトラは殊更前屈みになってマイカの胸が自身の背に密着するようにし、更に両手でマイカの臀部を鷲掴みにした。
「ちょっ!ペトラ!!変なことするなら降りるよ!!」
「おう、すまんすまん、つい…
おっとマイカ、これを持ってくれ。」
と、ペトラは馬上鞭をマイカに手渡した。ウイントを駆る時に持っていたが、一度もウイントに対しては振るわなかったものだ。
「…え?ムチ?…何に使うの?」
「よし!皆、行くぞ!!」
ペトラはマイカからの鞭に関する質問には答えず、いきなり全速力で走り出した。
なんと、後から尾いてくるイエルンとウイントとの差がどんどん広がっていく。
「え!?嘘!何、このスピード!?」
「ハハハハ、驚いたかマイカ。実は儂が本気で走ればウイントに乗って駆けるより速いのよ!!」
そうこう言っているうちにアッケルマン辺境伯の城の外壁がどんどん迫ってくる。
「ちょっ、ペトラどうするの!?このままじゃ壁に激突するよ!!」
「おう!マイカ、その鞭で儂の尻を打ってくれ!」
「え!?いや、そんなこと!!」
「早くせんと壁にぶつかるぞ!
ほら、その鞭で、早く、早く打ってぇーっ!!」
「あわわわっ!」
マイカは壁が迫り来る恐怖に訳が判らなくなり、言われるまま馬上鞭でペトラの臀部を強かに打った。
「違うんっ!そんなんじゃ足りないんっ!
もっと!儂を壊すくらいにもっと強く打ってえぇーーっ!!」
「ええーい!もうヤケクソだーっ!!」
マイカは、今度は渾身の力を込めて馬上鞭でペトラの大きな臀部をぶっ叩いた。城の外壁のすぐ手前で、最早、僅かな距離しかない。
「良いーーっっ!!身も心も飛っぶーーーっっっ!!!」
走るスピードを落とさないペトラが城壁に激突すると思われた刹那、ペトラの身体がマイカをおぶったまま高く宙に舞い上がった。
ジャンプしたのである。壁にぶつかると思って思わず目を瞑ったマイカが再び目を開いた時、丁度、城壁の上を飛び越えようとしているところだった。
驚くべきことに、何十メートル有るのか判らない程の高い城壁の、更に10メートル程上空を越えていた。
城壁の上に幾人かの城兵が居たが、昇りつつある朝日を背に飛んでいるペトラ達は良く見えなかったらしい、誰も気付いていなかった。
(う、嘘!?と、飛んでる…)
マイカは両手両足を広げて飛んでいるペトラの背から落ちないように必死にしがみついた。
第79話(終)
※エルデカ捜査メモ〈79〉
何もかもが規格外のステルクステ騎士団団長のペトラは、その筋力も怪物じみており、彼女の愛馬、風よりも速く走ると言われている駿馬ウイントよりも速く走れる脚力を持つ。
その脚力で、アッケルマン辺境伯の城の外壁ごときは、実はマイカに鞭で打たれなくても普通に越えることが出来る。
今回は色んな意味でペトラが炸裂した回でしたね…
次回も(もしかして次々回も?)ペトラ回になります。その大陸最強と謳われる実力の片鱗が見れることでしょう。
あと、今回マイカの新しい魔法も登場しましたが、次回は新しいスキルについても登場するかもしれません。
どうぞ次回をお楽しみに!
これからもよろしくお願いいたします。




