第33話『パルキールの街 殺人剣と活人剣』
登場人物
◎舞原 彰(まいはら あきら:アキラ)
男性 59歳
身長180cm超 バキバキの筋肉質 スキンヘッド まつ毛の長い、キラキラした瞳の女性のような目
定年間近の某県警刑事
剣道七段(練士)柔道五段
逮捕術上級(全国大会準優勝の経験あり)
雑学好きのうんちく親父
涙もろく人情派
素人童貞
殉職後、異世界にエルフの美少女に転生
◎マイカ(アキラ)
年齢16~18歳くらいの見た目
白金色の長い髪
緑色の瞳
先の尖った耳
巨乳
のエルフ美少女
舞原彰の転生後の姿
現在、異世界を彷徨い中
◎ケルン
モンスターであるケルベロスの子(♂)
3つの頭、尻尾は1本
中央の頭に他のケルベロスには無い、赤い尖った角が生えている。
火を吹く
甘いものが好き
◎ハンデル
男性 30歳
身長180cm強 細身の引き締まった体型
茶色くせ毛短髪 茶色の瞳
旅の行商人 剣の達人
街道筋の脅威となるモンスターや盗賊などの退治を請け負う「闘商」としても活動する。
割りと二枚目
◎エフェリーネ
女性 22歳
ラウムテ帝国摂政
第9代皇帝の女帝ヨゼフィーネの一人娘
ヨゼフィーネの死後、皇帝に即位した従弟のヤスペルの代理として政務を執り行なっている。
身長165cm 中肉
茶色セミロングストレートの髪
やや淡い茶色の瞳
◎リーセロット
女性 年齢不詳(20歳代前半から半ば辺りの見た目)
エフェリーネの側近くに仕えるダークエルフの女性
身長170cm 美しい体型 爆乳
黒髪の長髪 黒い瞳
◎ララ
女性 年齢不詳(20歳前後の見た目)
リーセロット配下のダークエルフの女性
身長165cm スリム体型 巨乳
黒髪ショートワンレングス ダークブラウンの瞳
クールだが、大のスイーツ好き
影の魔法を使う。
◎ウェイデン侯爵
男性 35歳 名はクンラート
ラウムテ帝国の貴族中、最も広い所領地を有する。
初代皇帝の三男を祖とし、初代皇帝の男系の血筋を継承している。
女帝ヨゼフィーネの異母妹を娶り、その間に生まれた息子のヤスペルが皇帝となる。
身長175cm 中肉
黒いクセのある髪 口ひげ
◎ベルンハルト
男性 25歳 姓はレーデン
ラウムテ帝国近衛騎士団長
身長185cm 一見細身に見えるが、脱ぐと筋肉バキバキ
金髪の短髪 アイスブルーの瞳
超イケメン
◎ヨゼフィーネ
女性 56歳
ラウムテ帝国第9代皇帝 帝国唯一の女帝
身長175cm 女性的な体型ではあるが、ガッチリ型
帝国中興の祖
マイカが転生してくる約1ヶ月前に他界
◎ドラーク公爵
男性 56歳
女帝ヨゼフィーネの夫 名はアルフレット
初代皇帝の次男を祖とし、初代皇帝からの男系血統を受け継いでいる。
身長190cm どっしり体型
白髪 白髯〈かつては灰色髪、灰色のひげ〉灰色の瞳
女帝である妻を精神的に支えてきた、実は豪の者
ヨゼフィーネが他界する約半年前に他界
◎ヤスペル
男性 5歳
ラウムテ帝国第10代皇帝
身長約100cm やせ型 金色短髪 濃い青色の瞳
ウェイデン侯爵と第9代皇帝ヨゼフィーネの異母妹であるシルフィアとの間に長子として生まれた。
従姉のエフェリーネのことが大好き
◎ノーラ
女性 10歳
圧政下にあるコロネル男爵領クライン村に住む少女
身長130cm弱 痩せ型
茶色い髪のオカッパ
青い瞳
厳しい状況下に置かれながらも夢を諦めない、明るく活発な少女
◎コロネル男爵
男性 44歳
ラウムテ帝国創立以来の名門貴族の当主
現当主で8代目
領民に重税を課し、圧政を敷くクソ野郎
◎セバスティアーン
男性 61歳
身長195cmの大柄
先代から仕える、コロネル男爵家の執事
ファーハイトの宿場町を出発したマイカとハンデル一行だが、帝都への本街道の渋滞混雑ぶりは相変わらずで、ノロノロと少し進んだら直ぐに止まり、また少し進んでは止まってしまう、ということを繰り返していた。
「こりゃダメだ、マイカ。
ここからほんの少し先にパルキールという宿場町がある。今日は日の高いうちに宿を決めて明日に賭けようぜ!」
まだ昼過ぎの頃にパルキールの宿場町に着き、今度はそれぞれ一部屋ずつ取ることができた。
更に頼み込んで、マイカはケルンと、ハンデルはブラムと同じ部屋で泊まれることになった。
宿屋の食堂で遅めの昼食を摂った後、その宿屋の広い馬車置場でマイカとハンデルは革製の鎧兜を身に付け、両刃の長剣を模した木剣を持って剣術の稽古を始めた。
当初、鎧兜を身に付けたのはマイカだけであったが
「ハンデルも防具を付けてくれ。私の剣がアンタの身体に届く事はないだろうとは重々承知しているが、それでも気兼ねして、私は思い切り剣を振ることが出来ない。
それでは良い稽古にならないから。」
と頼んで、ハンデルにも防具を身に付けてもらった。
(くっ、手も足も出ないとは、まさにこの事だな。剣道七段練士のオレが、まるで子供扱いだ。)
マイカが両手に力を込めて振るう木剣を、ハンデルは片手で事も無げに軽々と払っている。
「やっぱり出来るな、マイカ。
お前さん、思っていたよりも、よっぽど腕が立つぜ!」
(そう言いつつ余裕じゃねえか。癪に障るヤローだ!
ならば、これはどうだ!?)
マイカは木剣を斜めにしてハンデルが打ち下ろしてきた木剣の刃先を横手で受け、そのまま滑らすように自らの木剣を前に打ち出してハンデルの面を襲った。
(取ったか?)
しかし、マイカが振るった木剣がハンデルの兜に当たる直前、目にも止まらぬ素早さでハンデルは躱した。
「マイカ、何だ今の技は?凄いじゃないか!」
「ああ、元の世界での私の国の刀は片刃の両手剣でね、盾を持たないんだ。
それで、厚く作ってる刀の横手の部分で、鎬と言うんだが、そこで相手の剣を受けたり払ったりするのさ。
今のは、その鎬を生かした使い方だったんだが…ハンデルは初めて見たんだよね?こんな剣の使い方。」
「ああ、初めてさ。驚いたぜ!」
「初めて、なのに…あっさりと躱された…」
「…でも、俺以外なら躱せないだろうぜ。
マイカ、お前さん、本当に良い腕してるな。そこらの騎士より、よっぽど強いんじゃないか?」
マイカとハンデルが剣の稽古をしている馬車置場で、ケルンも走り回っていた。
走っては、大きな木に体当たりしたり、飛び上がって木の枝に噛み付いたりしていた。
遊んでいるのではなく、ケルンも、はっきりとした意識を持ってトレーニングしているのである。
アソゥ団に襲われた時、自分のせいでマイカを窮地に立たせてしまったとケルンは思っており、今度同じような目に遭ったら、その時は足手まといにならないように、いや、自分がマイカを守れるようにとの意識を持って鍛練しているのである。
日が暮れるまでマイカとハンデル、そしてケルンの稽古鍛練は続いた。
「ふーっ、昨日、あれだけハードに稽古したのに、どこも痛くない。
若い身体って素晴らしいなあ!」
朝早くパルキールの宿場町を出発したマイカは、馬車に揺られながら沁々と思っていた。
「なあ、ハンデルは大丈夫?疲れてな……いな、その様子じゃあ。
昨日、軽々と私の剣を捌いていたもんな…」
ハンデルは御者台の上、マイカの隣で二頭の馬の手綱を操っている。ようやく街道の渋滞が解消したので軽快に飛ばしている。
「いやあ、軽々じゃなかったぜ。本当に驚いたぜ!
お前さんほどの腕だったら、闘商も立派に勤まるぜ。どうだ、やってみる気はないか?」
「いや、無理だよ。私には人は殺せない。
私の剣は、相手を殺すことは無い、と判った上でのことだから思い切り打ち振るえるんだ。
殺してしまうかもしれない、と思ったら、手が止まってしまうだろう…」
「ほう。じゃあ、お前さんは人を斬ったことはないのかい?」
「ああ、無いさ。」
「人を斬ったこともないのに、あの剣の冴え…お前さんの剣の流派は何て言うんだい?」
「剣道って言うんだ。」
「ケンドー…?」
「剣の道、という意味さ。剣の修練をする事で心身を鍛え、己れの精神を昇華させる事を目的としていてね、人を斬ることが目的じゃないんだよ。
そう、人を殺す殺人剣ではなく、人を活かす活人剣の考え方が元となっているのさ。」
「活…人、剣?
へえー…初めて聞く。なんか、いいな、それ。」
「あ!判ってくれるのかい?
じゃあさ、ハンデルもどう?殺さない方向で剣を振るう道に進まないかい?」
こう言ったマイカの心には、ハンデルは何か勿体無いという気持ちがあるからだ。
ハンデルほど気の良い、また、人の痛みを判っている人間が、極悪人相手とはいえ躊躇うことなく命を奪うことを。
非難ではない。この世界の常識では、ごく当たり前の事となっていることをハンデルは行なっているだけなのだから。
だが、ハンデルにはもう人を殺して欲しくないという思いがマイカの心には芽生えてきている。
どうしてそのように思うのかは、マイカ自身も、今は判っていない。
「そうだなあ…この世界から悪人が一人も居なくなったら、俺もその活人剣とやらを極めるようにするよ。」
朝早くパルキールの街を出て、昼前になった頃、とある店舗街にマイカ達は立ち寄った。
このような店舗街は、旅人や行商人らのために帝国本街道にはいくつ設置されているという。
(へえー…なんか、道の駅みたいだな。)
とマイカが思ったとおり、そこには幾つかの飲食店と、現地の作物や土産物等を売っている店があった。
そこで昼食のため小休止して、あとはずっと駆け通し、夕刻過ぎに帝都に到着することができた。
(インハングの街も大きかったが、それよりも遥かにデカい!
大帝国の都だけのことはある!!)
帝都の市城門を通り抜けようとするマイカ達の馬車を、夕闇の深い影の中から、褐色エルフのララが見届けていた。
第33話(終)
※エルデカ捜査メモ㉝
この世界の、特にラウムテ帝国近辺の剣は、両刃の直刀で、その長さ太さによって片手剣と両手剣とに分別される。
ハンデルが所有している細身の長剣は片手剣に分類されるものであり、通常ならば、剣を持つ手の、もう一方の手には盾を装備するのだが、ハンデルの師であるドワーフ戦士・商人のヘルトが編み出した剣術は攻撃に特化していて盾を使っての防御などしないため、ハンデルも盾を持たずに闘う。
このように片手剣を使いながら、盾を持たずにいるのはハンデルやヘルトに限ったものでもなく、腕に自信がある者は盾を持たない傾向がある。
近衛騎士団団長ベルンハルト・レーデンも、片手剣を使いながらも、盾を持たない者の一人である。




