第22話『異世界初のファッションモデル?』
登場人物
◎舞原 彰(まいはら あきら:アキラ)
男性 59歳
身長180cm超 バキバキの筋肉質 スキンヘッド まつ毛の長い、キラキラした瞳の女性のような目
定年間近の某県警刑事
剣道七段(練士)柔道五段
逮捕術上級(全国大会準優勝の経験あり)
雑学好きのうんちく親父
涙もろく人情派
素人童貞
殉職後、異世界にエルフの美少女に転生
◎マイカ(アキラ)
年齢16~18歳くらいの見た目
白金色の長い髪
緑色の瞳
先の尖った耳
巨乳
のエルフ美少女
舞原彰の転生後の姿
現在、異世界を彷徨い中
◎ケルン
モンスターであるケルベロスの子(♂)
3つの頭、尻尾は1本
中央の頭に他のケルベロスには無い、赤い尖った角が生えている。
火を吹く
甘いものが好き
◎ハンデル
男性 30歳
身長180cm強 細身の引き締まった体型
茶色くせ毛短髪 茶色の瞳
旅の行商人 剣の達人
街道筋の脅威となるモンスターや盗賊などの退治を請け負う「闘商」としても活動する。
割りと二枚目
◎ノーラ
女性 10歳
圧政下にあるコロネル男爵領クライン村に住む少女
身長130cm弱 痩せ型
茶色い髪のオカッパ
青い瞳
厳しい状況下に置かれながらも夢を諦めない、明るく活発な少女
◎コロネル男爵
男性 44歳
帝国創立以来の名門貴族の当主
現当主で8代目
領民に重税を課し、圧政を敷くクソ野郎
◎セバスティアーン
男性 61歳
身長195cmの大柄
先代から仕える、コロネル男爵家の執事
◎マティアス
男性 21歳
赤毛の短髪 灰色の瞳
身長約180cm ガッチリ型
ウェイデン侯爵領南端の街グレンス衛兵隊の一員
4人のリーダー格で良識家
◎ニールス
男性 19歳
亜麻色の短髪 黒い瞳
身長約175cm 中肉
グレンス衛兵隊の一員
やや軟派な性格だが、気の良い優しい青年
◎レオン
男性 20歳
金色の短髪 青い瞳 割れた顎
身長約185cm ゴリマッチョ
グレンス衛兵隊の一員
筋肉バカ 性格が良い
◎レクス
男性 18歳
金色の短髪 青い瞳 丸顔 頬にそばかす
身長190cm超 デップリ体型
グレンス衛兵隊の一員 レフィの弟
少しトロそうに見えるが、素直な良い性格の持主
出発の時間となり、部屋を出て階段で1階ロビーまで降りると、大勢の人達が待ち構えていた。
この宿屋の従業員一同と、それ以外にも、宿泊客と思われる男女もいた。高級店の客らしく、皆、上品な身なり風体だ。
マイカが姿を現すと
「ワァーーーッ!!」
というような大きな歓声が沸き起こった。
「本当にエルフだ!」
「まあ、なんて可愛らしいのかしら。」
「本当、お人形さんみたい。」
「エルフと同じ宿に泊まったなんて、故郷に帰ってから、大いに自慢できるぞ!」
宿泊客達が次々と感想を述べる中、ハンデルが大きな声で
「さあさあ皆さん!手前は行商を営んでいるハンデルと申します。
本日の午過ぎより、クラームの76区画にて店を開きます。
こちらのエルフのマイカ嬢も共に参りますので、お時間がおありの方は、どうぞいらして下さい!」
と宿泊客達に向かって言った。
「おおーっ!行く!行くとも!!」
「まあ、それは素敵。アナタ、共に参りましょう。」
「ところでハンデルさんとやら、あなたのお店では、どんな品物を取り扱っておられるのかね?」
「はい。主に女性のお召し物や装飾品…、男性用の物もありますよ。身の回りの小物類や武具なども各種取り揃えております。
なお、女性用の物については、こちらのマイカ嬢が実際に身に付けて、皆さんに御覧頂こうと思います。
是非、御購入の参考にして下さいませ。」
「おおーーーっ!!」
宿泊客達は、一斉に大歓声を上げ
「行こう!皆で行こう!」
「こんなの黙ってられない!街中の人達に知らせるぞ!」
「ええ、こんな機会ないですもの!」
と、次々に興奮した口調で話し合っていた。
目の前で起こっていることの、あまりの展開に、マイカは目を白黒とさせていた。
(何だったんだろう?さっきのは。)
ハンデルと馬車に乗り、通りを進みながら、マイカは先程の狂騒ともいえる騒ぎを思い出していた。
また、例の大きな麦わら帽子を被って耳を隠し、一目ではエルフと判らないようにしている。
「どうしたマイカ、面食らったか?
あれがエルフに対する一般的な反応だよ、知らなかったかい?」
「いや、今まで会った人達も、私に驚きはしたけれど、何て言うか、あんなスターみたいな扱いは…」
「スター?スターって何だい?」
「あ、そうか、判らないか。
うーん…そうだなあ、有名な舞台の看板女優みたいな、って言えば判るかな?」
「ああ、なるほど、確かにそんな感じだったな。」
「クライン村の人とかは、あんなんじゃなかった。」
「クライン村の人達は、圧政に疲弊しているせいだろうな。疲れ過ぎていて、喜びや楽しみの感情を爆発させにくかったんだろう。」
「うーん…」
「その点、このインハングや帝都の人達は違う、豊かで毎日、人生を謳歌している。楽しいことを、しっかりと楽しむことが出来るのさ。
そういった人達にとっては、お前さんは、とっておきの娯楽のタネなのさ。」
「本当に、エルフって珍しい存在なんだね、この世界では。」
「ああ、一生見ることがないって人が大半だからな。」
マイカとハンデル、そしてケルンを乗せた馬車は、白い壁の三階建ての建物の前で止まった。
泊まっていた宿屋の豪壮さとは比べものにならないが、この街の建物の中では小さいほうではない。
しかし、この街の建物は白い壁のものが多い。
「ここが行商人組合のインハング支部さ。
盗賊団退治の依頼金の後金を受け取るのと、預けているウチの伝令を引き取るのさ。」
ケルンを荷車の中に残してマイカとハンデルは馬車を下り、建物の中に入った。
ハンデルは何故か、例の大きな鳥籠を手に持っている。
「いらっしゃいハンデルさん。直に組合支部長が参りますので、暫くお掛けになってお待ち下さい。」
入口を入って直ぐのカウンター越しにいた受付の女性に言われ、二人はカウンター前の椅子に座った。
「やあ、ハンデル。この度はご苦労だったな。」
年齢40歳ほどに見える、黒髪を綺麗に七三分けに整え、口ひげを生やした男性が奥から出てきた。
紳士然とした雰囲気だが、着衣にも浮き出るような筋肉から、只者ではないことが、一目で判った。
「やあ支部長、ご機嫌よう。」
ハンデルが支部長と呼んだその男性も、大きな鳥籠を持っており、中には大きな鳥が入っていた。
その鳥は、全身の色や模様はよくいる鳩とそっくりだが、上嘴がカギ状に下を向いているところや、足が大きくて鋭い爪を持っているところなどは、猛禽類の特徴がある。
大きさは、大型のオウムくらいだ。
「はんでる!はんでる!」
(わっ!この鳥、喋るんだ。)
マイカが驚いていると
「やあブラム、伝令ご苦労さん。」
と、ハンデルがその鳥の名を呼び、ハンデルと支部長がそれぞれ鳥籠の入口を開けると、そのブラムと呼ばれた鳥は支部長の鳥籠からハンデルの鳥籠の中に移っていった。
「ハンデル、報酬の後金の受け取りはどうする?金貨か?それとも銀貨でか?」
「銀貨で頼みます、支部長。」
「銀貨で、となると枚数が多くなるから少し時間がかかるな…ちょっと待ってくれ。
そうだ、酒でも飲んで待つか?用意するぞ。」
「いえ、これから店を開けるつもりなので、今は遠慮しときます。また夜にでも。」
「そうか、じゃあ今から店を押さえておくぜ。
…ところで、隣の美しいお嬢さんはどなただい?またお前の新しい彼女か?」
(…また?って、やっぱりハンデルの野郎、モテやがるのかコンチキショー。
確かに見た目も良いし、金も持ってるし、腕っぷしも立つし、それに昨晩、錯乱してたオレに見せた、あの優しさ…女にモテない要素は無いわな…
ん?いや、いやいやいや!オレは心は男だからな、ホレるわきゃないぞ!…でも、確かにあの優しさには助けられた…)
「いえいえ、彼女はウチの従業員ですよ。新しく雇ったんです。
ん?どうした?」
ハンデルがマイカの方を見て、そう言った。
マイカが自身から自己紹介すると思っていたのに、何か考え事をしている様子で黙っていたためだ。
「あ!失礼しました。」
物思いに耽っていたマイカは我に帰ると帽子を取り、支部長に向かって挨拶をした。長い耳が表に現れる。
「御挨拶が遅れて申し訳ございません、マイカと申します。どうぞよろしくお願い致します。」
「あっ!!」
支部長は、そう一言を発したまま固まってしまった。
カウンター越しの受付の女性も、マイカを見て、目を丸くして固まっている。
(やっぱり、エルフを見たらそういう反応になるのね…)
マイカは額に汗が流れるのを感じた。
「エ、エルフ、エルフだな?おい、本物のエルフだな?
行商人達の話には何回か出てきたが、実際に会うのは初めてだ。」
(何回か話に出てきた?行商人の中には、他のエルフを知ってる人がいるのか?)
「ハンデル、エルフのお嬢さんを使ってどんな商売をするつもりだい?」
「ええ、俺が取り扱っている商品を、このマイカ嬢に身に付けて貰ってですね、大勢の人にお披露目するんですよ。そうすれば凄い宣伝になると思いまして。」
「それはいい!大儲け間違いなしだ!
ハンデル、その新しい商法、特許登録するかい?」
「いいえ必要ありません。他にもやりたい人がいれば、好きにやって貰えば。
もっとも、ウチのマイカ嬢ほどの逸材は中々見つからないでしょうがね。」
「ハッハッハ、違いない!では、この商法を考案したのは、ハンデル、君だということは全組合に伝えておこう。
他に特許の横取りをするヤツが出ないようにな。」
「はい。それはお願いします。」
「ところでハンデル、この商法の名前は?何て名付けた?」
「名前ねえ…そういえば考えてませんでしたな。何か適当に…」
と、ハンデルが考え始めた横で
「ファッションモデル…」
と、マイカがボソッと呟いた。
「ファッション…モデル…?」
「ファッション…モデル…?」
ハンデルと支部長が同時に声を発し、マイカが呟いた、この聞き慣れない言葉を反芻した。
「ファッションのモデルか……
いい!それはいい!!この商法の名はファッションモデル式だ!
マイカさん、あなたはファッションモデル第1号だ!」
と、支部長が感に堪えない様子で言った。
(あ…謀らずとも、やっぱりこの異世界でのファッションモデル第1号になってしまった…)
と、マイカの心はやや複雑だった。
第22話(終)
※エルデカ捜査メモ㉒
行商人組合は、帝国の経済流通における最も重要な機関で、そこそこ大きな都市には必ず支部が設けられている。
組合に属してなくでも商売は出来るが、属することによって、組合に属している他の商人達のネットワークを通じて情報や幇助を受けることが出来るため、行商を営む者にとっては、非常に有利である。
インハングの街自体は、帝国本領第3の都市であるが、帝国各地への街道が伸び、帝国の入口とも言える街の性格から、行商人組合インハング支部は、帝都に次ぐ規模を誇り、代々の組合本部長は、ここ、インハングの組合支部長を経ている者がなっている。




