第18話『恩人…それとも…』
登場人物
◎舞原 彰(まいはら あきら:アキラ)
男性 59歳
身長180cm超 バキバキの筋肉質 スキンヘッド まつ毛の長い、キラキラした瞳の女性のような目
定年間近の某県警刑事
剣道七段(練士)柔道五段
逮捕術上級(全国大会準優勝の経験あり)
雑学好きのうんちく親父
涙もろく人情派
素人童貞
殉職後、異世界にエルフの美少女に転生
◎マイカ(アキラ)
年齢16~18歳くらいの見た目
白金色の長い髪
緑色の瞳
先の尖った耳
巨乳
のエルフ美少女
舞原彰の転生後の姿
現在、異世界を彷徨い中
◎ケルン
モンスターであるケルベロスの子(♂)
3つの頭、尻尾は1本
中央の頭に他のケルベロスには無い、赤い尖った角が生えている。
火を吹く
甘いものが好き
◎ハンデル
男性 30歳
身長180cm強 細身の引き締まった体型
茶色くせ毛短髪 茶色の瞳
旅の行商人 剣の達人
街道筋の脅威となるモンスターや盗賊などの退治を請け負う「闘商」としても活動する。
割りと二枚目
◎ノーラ
女性 10歳
圧政下にあるコロネル男爵領クライン村に住む少女
身長130cm弱 痩せ型
茶色い髪のオカッパ
青い瞳
厳しい状況下に置かれながらも夢を諦めない、明るく活発な少女
◎コロネル男爵
男性 44歳
帝国創立以来の名門貴族の当主
現当主で8代目
領民に重税を課し、圧政を敷くクソ野郎
◎セバスティアーン
男性 61歳
身長195cmの大柄
先代から仕える、コロネル男爵家の執事
◎マティアス
男性 21歳
赤毛の短髪 灰色の瞳
身長約180cm ガッチリ型
ウェイデン侯爵領南端の街グレンス衛兵隊の一員
4人のリーダー格で良識家
◎ニールス
男性 19歳
亜麻色の短髪 黒い瞳
身長約175cm 中肉
グレンス衛兵隊の一員
やや軟派な性格だが、気の良い優しい青年
◎レオン
男性 20歳
金色の短髪 青い瞳 割れた顎
身長約185cm ゴリマッチョ
グレンス衛兵隊の一員
筋肉バカ 性格が良い
◎レクス
男性 18歳
金色の短髪 青い瞳 丸顔 頬にそばかす
身長190cm超 デップリ体型
グレンス衛兵隊の一員 レフィの弟
少しトロそうに見えるが、素直な良い性格の持主
「それで、エルフのマイカさんは何処へ行くつもりだったんだい?」
「帝都へ、帝都へ行くつもり。」
「帝都かい?で、何処からここまで来たんだい?」
「クライン村ってとこ、コロネル男爵領の。」
「コロネル男爵領?なら、どうしてウェイデン侯爵領を突っ切ってこなかった?
そっちの方が全然旅がし易いぜ、何せ凄く安全だ。」
ここでマイカはハンデルにクライン村でのことを話し、コロネル男爵が、マイカがウェイデン侯爵領を通過するのを妨害したことを話した。
「重税に圧政か…本当なら許せんな、コロネル男爵のヤツ。」
「そうだろ?だから帝都へ行って、偉い人に訴えようかと思って…」
「でもさ、当代のコロネル男爵って、貴族間での評判は頗る良いんだよなあ…」
「実際にコロネル男爵に会ったけど、あんな品がない男の、どこが評判が良いの?」
「何でも、豪華な贈り届け物で自分より位の高い貴族の機嫌を取りまくっているらしい。
コロネル男爵の豪華な買い物のおかげで儲けた商人も大勢いて、商人組合からの受けも良い。
…そうか…その大盤振る舞いの財源が領民からの重税という訳か…」
「豪華な贈り届け物か…自分を良く見せるためなら、大勢の人達を苦しめても構わないって、そんなヤツなんだよ、コロネル男爵って。」
「しかし、証拠が無いんじゃ話にならないぜ。いくらお前さんが真剣に話しても。
それに、偉い人に話すって、誰ぞ上級貴族に知り合いでもいるのかい?」
「そんなのいないよ。大体、こちらの世界に来てから、そんなに時が経ってないんだ。
知り合いといえば、クライン村の村人か、あと、ウェイデン侯爵領の4人の衛兵さん達くらいだよ。」
「あ…そういや、そうだったな。それじゃ昔馴染みなんている筈ないわな。」
「あっ!そうだ、いま気付いたけど、ウェイ…」
「ウェイデン侯爵なら無理だよ。コロネル男爵からの贈り物を一番多く受け取っているのは、男爵の上司に当たるウェイデン侯爵の筈だからね。
第一、一都市の衛兵程度じゃ、頼る伝手にしては弱すぎる。」
「う……」
「まあ、俺なら伝手が無い訳じゃないんだぜ。お客様の中には宮廷に仕える侍女や、貴族の使いの者もいるからな。」
「本当?じゃあ…」
「ああ、力になってやれないこともない。ただし条件がある。」
(あ!きた……やっぱり商人が無償で何かをしてくれる事なんて無いよな…提供したモノに対して報酬を求めることこそ、商売人の正しい筋道だもの…
暴漢から助けてくれたことに対する謝礼や、高価な薬の代金とかを、いらないなんて、おかしいと思ったよ…
金銭の代わりに、オレに言うことをきかせるつもりだったか…)
「ま、まさかアンタも私の、か、か、身体とかが目的か!?」
マイカは、キィッと強い眼でハンデルを睨んだ。
「はあ?ハ、ハハハハ。そんな訳ないだろ。何を早とちりしてるんだよ!?
そんなことが目的なら、お前さんが気絶している間とかに、とっくに手を出してるぜ。」
「ならば、あのアソゥ団の連中は、私を金持ちとかに売ると言っていた。アンタもそうか?
エルフは高く売れるらしいな!?」
「違う!!」
先程までニヤけた表情だったハンデルが急に真顔になった。眼に怒気をはらんでいる。
「で…でも、信用出来ないよ。商人なのに謝礼や報酬を要らないなんて言っておきながら、後から条件を付け足そうとするなんて、どう考えてもおかしいもん。
巧いこと言って、やっぱり私の身をアンタの意のままにしようとしか…売り払ったりしようとしか…」
「違う、違うよ…俺が人を売買するなんて絶対に無い。絶対にそんな事しない。信じてくれ。」
ハンデルは相変わらず真顔のままだが怒気は消えている。話す口調も穏やかになっていた。
お互い、暫く口をつぐんだ後にハンデルが口を開いた。
「…俺は、この帝国の最も北のアルム村って所の出身でな、小っぽけな貧しい村で何も無い村だった。
母親は、俺の8つしたの妹を産んで直ぐに死んじまってな…父親も病気になって、貧しい村の中でも最も貧しかったよ、俺達の家族は。
……で、とうとう、このままだと家族みんな飢え死にしてしまうってところまできて…
…ところまできて…妹が奴隷商人に売られちまったんだ……」
「えっ…?」
「妹はまだ6歳で、俺もたった14のガキだったから、どうにも出来なかった…
だから、だから!俺は絶対に人を売るなんてマネはしないんだ、絶対に!」
「…そうか…判った。すまない。
で、妹さんは?今?」
「それきりさ。今だにもって消息や居場所は掴めてねえ。
俺が行商人になったのも、行商人は広く、色んな場所へ行くから、いつか何処かで妹の事を見つけられるんじゃないかと思ってさ。」
「早く見つかるといいな、妹さん。」
「ああ、必ず生きていると信じている。
そして…、たとえどんな姿になっていても、必ず連れ戻す。」
重々しい口調で話すハンデルが、特に「たとえどんな姿に…」と口にした時、最も辛そうな表情をしたことをマイカは見逃さなかった。
奴隷として身を売られた者の、特に女の生きていく道が、どのようなものであるか想像出来た。
「……」
「……」
「なら、私に対する条件って何なの?」
「ああ、俺の商売の手伝いをして貰おうと思ってさ…おっと、闘商じゃないぜ。行商のほうさ、通常のな。」
「行商の手伝いって、どんな事をするの?私は商売の経験は無いよ。」
「なに、簡単さ。まず、エルフってのは、この世界では本当に珍しい存在なんだ。数がメチャクチャ少ないからな。
だから、まずエルフを連れてるってだけで人がたくさん集まる。んで、俺が取り扱う商品は、女物の服や装飾品が多くて、それをお前さんが身に付けて人前に出れば、凄い宣伝効果になると思うんだ。」
(なるほど、客寄せパンダ兼ファッションモデルという訳か…)
「ちなみに、服や装飾品なんかを宣伝の為に人に着させて見せる、なんて、今まで誰もやっていないやり方だ。
つい先日、俺が思いついたんだ。それで、どこかに適材はいないかって思っていたところさ。」
(…ということは、オレがこの世界におけるファッションモデル第1号という事になるのかな?)
マイカは、舞台上をモデル歩きでウォーキングしている自身の姿を想像した。
「どうだ、やってくれるか?勿論給金は払うよ。」
「…うん。やる。頑張ります。」
マイカは自分の想像に照れて、真っ赤になりながら答えた。
(ん…?これだと、エルフモデルって事にならないか?違う物語に…)
「どうした、マイカ?」
「いや、何でもない。」
(何だったんだ?今のは。何だよ、違う物語って。)
「街道を少し進んだ所に馬車を停めてある。
さあ、行こう。」
ハンデルとアキラ改めマイカ、そしてケルンも共に街道を歩き始めた。
第18話(終)
※エルデカ捜査メモ⑱
帝国における奴隷売買には、きちんとした制度が定められており、勝手に行なうことは出来ない。
奴隷商人になるための必要な手続きと届け出は厳格で、更に認可された後も、年に一回、必ず更新の手続きが必要である。
更に、奴隷の売買の際にも事前事後の届け出がそれぞれ必要で、徒らに人を奴隷とする事のないように定められている。
これらの厳格な手続きは、先帝の女帝ヨゼフィーネが定めたものである。




