将を避けるために、馬を手懐けてみ~る~
うーん、そんな感じでクイーニア様やそのお友達たちとも、大分仲良くなってるんですけどね…
ちなみに、一番餌付けが効いてる、そもそものきっかけの小動物令嬢、リコリス・モーリンちゃん。
宰相子息、エイス・ダンティの婚約者でした…。
あれーっ? ひい、ふう、… 4人目…。
うーん、アキと知り合った頃はフェードアウトしようかと思ってたけど、現状それは厳しいしなぁ。主に金銭的に。
そもそも、クイーニア様との関わり、ワタクシに選択権はゴザイマセン…。
そこに餌付けしちゃって、リコリスちゃんにもそれなりに懐かれた。
うーん、回避はここに至っては無理だよね… でも彼女らの婚約者とは関わりたくないしなぁ…
…… ん? 現在3人とそれなりに友好関係築けてるし、むしろここは取り込むべきか?
将を避けようとするなら、馬に協力してもらうのって、いいんじゃな~い?
ということで開き直って、ナディア・ヤマト嬢も取り込んでみた。
うん、たいしたことは… そこそこ?
まず、実家の伯爵家の経済状況や生産品なんかを調査。で、とある果実に注目。
見た目は文旦みたいなでっかい柑橘なんだけど、領地のそこら中で実ってても、味がすごく酸っぱくて、食べる人ほとんどいない。
それを仕入れて、果汁を絞って、塩や蜂蜜、他の果汁とかと混ぜて、スポーツドリンクもどきを作ってみた。
よし、これなら酸味もいい感じ♪
あれからますます暑くなって、現在夏真っ盛り…。
炎天下で訓練してる騎士志望の子、最近よく倒れて救護に呼ばれるんだよね。多分熱中症…。
というわけで、暑い中での労働のお供に、このドリンクを。
ナーニワでこれも売り出してもらったら、結構売れてるそう。
なんか体が楽になる感じがするんだとか。
…塩? 塩が効いてる?
ちなみに、アクエリ*スって商品名だったり…。
ああああ、ゴメンなさい~。
意見聞かれて、うっかり ポ*リ? アクエリ*ス? ってつぶやいちゃったら、それらしくていいね!って決まった…。
その前から、中位貴族の意見も聞きたいってことでアイス差し入れたり、アクエリ*スの試供品あげたり、交流は増やしてたんですけどね。
さりげな~く、ね。
あ、ついでにそれ、婚約者へ差し入れてらっしゃい。
確か、そろそろそういうイベントの時期だったけど、私はパス。本来のお相手にお任せしますね。
私の代わりに仲を深めてくれたまえ。
そうして親しくなった後、ナーニワからその果実仕入れる契約を持ちかけて。
ヤマト伯爵家、基本堅実ではあるんだけど、そもそもの産業が少ないからね。ありがたい申し出ですよね~。
おかげでナディア嬢、恩にも着てくれてますね。よーし、順調。
公爵家での試食会にも引っ張ってきて。皆さん仲良くなりましたね?
さて。夏の長期休み、私はナーニワとハート公爵家からお誘いを。
うん、ハート公爵家はグルメシさんが一番熱烈歓迎してくれると思いますけど。
ナーニワにも行きますけど、先にハート公爵家に訪問します。
クイーニア様、アキ、リコリスちゃん、ナディア嬢、その他で。
でもやってることはいつもと変わりませんかね? 試作&試食。
既に、わりと勝手知ったる公爵家…。 あ、でもお泊りは初めてか。
さて。そろそろ滞在中の生活ペースも掴めてきたし… やるか。
それは公爵家に滞在している公爵令嬢の友人達がそろそろ状況に慣れたころ。
とある朝。
パタパタ パタタタタ~
「ごめんなさーい、ちょっと寝過ごしちゃって~」
「なんやアリス、珍しい…」
((((……誰?))))
その場にいた人間の心は、一つになった!
光を紡いだような金髪。抜けるような白い肌にはソバカスやシミも無く。露わになった顔は、人形のように完璧に整っていて。
いつものくすんだ金髪にソバカス、地味な姿とは全然違う…
でも先ほどの声は確かにいつも聞いてるアリスの…
「え? アリス? アリスなんやよね?」
「え? 何を言って…」 ハッ!
そこで先ほど部屋に入ってきた美少女は、何かに気付いたような様子で… 自分の髪をつまんで目の前に…
「あああああーっ!」
焦った様子でわたわたすると、何かの魔法を発動させて… 髪の色をいつものくすんだ金髪に。
肌の色も少々健康的?に。
そろーりと顔を上げると… あっけにとられた公爵令嬢様たちが。
えへ♡ 「えーっと、さっきの見なかったことに…」
笑って誤魔化そうとするも…
「えー! ちょっとなんなんですの!?」「なんで?」「どうして?」 失敗。
みんなが少し落ち着いてきたところで、改めて説明を。
「えーと、一言で言うと普段は目立たないように変装してます…」
「えー!? 何でですの勿体ない!」「そんなに美人さんやのに!」
「だからデス…。お付き合い申し込んできた方が、真面目に将来を考えてくれて私の意思を尊重してくれる人ならいいんですけど… 単に見目が気に入って自分が楽しめればいいって方ですと、ねえ…。
後ろ盾とかそれなりの繋がりがある皆さんと違って、私は身分も金もないですから。
断っても、権力を使われたり、悪評を広められたり、無理やり迫って私の責任にされたりされますと…」
「「「「……」」」」
「実際、孤児院で過ごしてた時にもあったんですよ。
養女に欲しいって話を、院長先生がやんわり頑張って断ってて… あとでその商人、子供が好みらしい、って話を聞いたり…。
お祭りの日に友人と露店見てたら、どこかの貴族かその従者かに 『ほお、これはなかなか。俺たちの相手に選んでやろう。光栄に思え』とか言って引っ張って連れて行かれそうになったり…」
「え? 子供が好みってなにかいけませんの?」「ええ、リコリス。貴女はそのままでいてちょうだいな…」
「え? それ大丈夫だったん?」「えーっと、まあなんとか隙を突いて(足を踏んで怯んだところを)振りほどいて逃げたけど…」
「「「「………」」」」
「といった訳で、面倒事は根本的に避けるべしっていう…」
「「そうですの…」」「そうか…」「せやったんか…」
「あとちょっと、個人的な憧れも。
私、この外見だとおおむね好意的に見られますけれど、その外見を隠した状態で好ましく思っていただけたら… 嬉しいです。
まあよくある地位や金に目が眩む、ってことは、そもそも持ってませんから心配無いんですけど」
「あー、うちやったらナーニワのこと抜きで好きや言うてもらえるようなもんか~。
せやね。そういうの、えーよね」
「そうですわね。私達は良くも悪くも家の名を背負っておりますけれど… そういったのも素敵ではありますわね」
「まあ、逆に言いますと… 今まで顔は知っていても親しくしていなかった方が、素顔を見せた途端、愛を囁いて気遣う素振りを見せたりしてきますとねぇ…(ええ、まさかとは思うけど某攻略対象者たちなんかがねぇ)」
「「「「それは…」」」」
「それって要するに見た目が好きなんですわよね? 年を取ったり、事故に遭ったりしてそれが失われたら… きっと冷たく捨てられちゃうんでしょうね~。悲しいな~」
「「「「……」」」」
「と、いうわけで。今後ともこの変装にご協力いただけますと大変ありがたいのですが…」
「ええ、任せなさいな! 貴女が平穏な学園生活を送るために、最大限の協力は惜しみませんわ! をーっほほほほほ!」
「ああ、任せておけ!」
「私もお手伝いいたします!」
「うちもや! ま、ついでにええ相手も見つかるとええね」
「ありがとうございます! うん、そーね…」
いよーっし、ミッションコンプリート!!
悪役令嬢達が味方になったよ!
この付き合いが今後も続いてくなら、どっかで変装のぼろとか出そうな気がするから、こっちがコントロールできる場面でばらしがてら協力を仰ごうと思ったんだけど、予想よりうまく言いくるめられた~♪
ちゃんと、『途中から態度変える男なんて信用できないしお呼びじゃないよ』 とも吹き込めたし♪
良かった~。
これでもインポッシブルになっちゃわないかドキドキしてたんで…。
これでうっかり攻略対象者たちがよろめいて来ても、いままでまあ最低限の礼儀は尽くされてたけど、仲良しじゃなかったのは知ってるからね。
急に『真実の愛(笑)』とか言い出しても、
「え? 素顔見た途端そんなこと言い出して、単に見た目でしょ?(白い目)」とか 「今まで虐めたりはしてないけど親切でもなかったのにその変わり様ってあからさまな(呆れ)」と判断してもらえるよね。
お断りや避けるのにも協力していただけるだろうし。
まあ願わくば、攻略対象者たちが、恋愛関係を拒否した時に、遠慮してるとか奥ゆかしいとか思い込むほどアホじゃないことを祈ってますね~




