ここはファンタジー世界
この物語はフィクションです。
ファンタジーです。
細かいことはそうやってスルーして下さい…
場面変わって、とある鍛冶場。
「グラントのおっちゃーん、久しぶり~」
「おー、アキの嬢ちゃんか。あ? そっちの誰や」
おー、これがドワーフ! 初ファンタジー種族!
やっぱり背は低いけど…、平均的な私より頭一つぐらい? ちびマッチョっていうか。
かなりガッチリして筋肉が詰まってる感じ。こげ茶な髪と髭ももじゃっと。
うん、多分身長近い他のドワーフと並んだら、個体識別できない…。
そもそも顔がほとんど出てないし…。
んー、ドワーフって、恋愛ゲームには向かないタイプだよな…。
剣と魔法と冒険の世界、だと脇役でいい味は出しそうなんだけど…
「はじめまして。アリス・ワンダーと言います。アキのクラスメイトです。
今回、ナーニワ商店とお付き合いをすることになりまして、氷を加工するための刃物と、氷を凍ったまま保つための容器を試作していただきたく、説明のために参りました。
あと、できればいろいろな金属や加工のことについてもお伺いしたく…。あ、これお土産です」
と、そっとアイスの容器を渡してみ~る~。
「あ? これは?」
「ナーニワで売り出すつもりの、新しい氷菓子です。まあどうぞ」
「…… ! なんじゃこれ! うまい!」
ふっ、釣・れ・た☆
ちなみにご提供させていただいたのは、酒入りアイス。
ラムレーズンとかあるよね? それにヒントを得て、甘さ控えめにして、こっちの酒の種類はよく分かんないけど、風味のある酒を混ぜ込んで作ってみました~。
うん、アルコールも凍るんだね? ちなみに材料提供は、ナーニワ商会から。
鍋の半分くらい食べたところで、こっちに戻ってきたグラントさんと、改めてお話し合い。
でもまあ話早かったね。
何でも言いな! その代りコレもっと…、 と。
もうちょっと強い酒で! かーっ、コレ酒と一緒にやっても旨そうだ!
…え? 酒アイスが酒のつまみに?
…… まあ、いいけどね?
で、もう一つ。
やりたいことは、これなんですけど、とかき氷を製作。
アイスほどのインパクトは無かったみたいだけど、お手軽だし、これはこれで美味い、と。
氷結は魔道具がありますけど、風刃を実際の刃物、プロぺラ? 扇風機? みたいなので代用して、同じように薄く削れるようにしたい。
刃物は、ハンドルを回したら一緒に回るようにして欲しい、と描いてきた絵を見せつつ説明。
かき氷器、テレビでは、昔の氷を横に固定して、縦にハンドル回したので削っていくのも見たことあるけど、氷の保持を考えると、お手軽な上部ハンドル横回し式がいいかなあ。
刃物の形とか厚さは、目的のために最適になるように作ってね。プロにお任せ~。
それと、こっちもさっき描いた図解を見せつつ、アイスを保管するためにほら、持ってきたの入れているコレみたいに、二層にして、間に空間を空けたものを作ってくれませんか?
この層には、ある程度力がかかりますから、内も外も そこそこ丈夫に。
できれば、内側の材質は、錆びや腐食に強く、温度を伝えにくいものがいいんですが。
形は、鍋より一回り大きいサイズと形で。
かき氷器に関しては、気軽にふんふん頷いてたグラントさんだけど、真空容器の注文ではちょっと固まっちゃった…。注文多くてごめんね…。
まあ、でもちょっと考え込んで、いくつか質問されたけど、まあいけそうかな、と。
とりあえず作ってみるか、ってことでトンカンやり出したグラントさんの脇で、こっちはこっちで実験。
で、容器には細工っていうか、真空にしないといけないんだけど、アキ風属性だったよね。出来る?
自力でやってみて、ダメだったら魔道具を提供しようか。
え~と、真空いや、ここ、何も無いように見えるけど何も無くするというか…
??? って状態だったけど… やってみたら出来るものなんだ…
まあ、手取り足取りっていうか魔力取り?で。
へー、他人が魔術使ってる時に、自分の魔力で相手の魔力の動きをトレースしてその通りにやってみるとかいう方法もあるんだね。
うん? 同じ属性で単純なのなら、か。
これなら真空容器は任せてもいいかな。
おや、グラントさん、もう出来た?
とりあえず実際に試しながら調整していくってことで、かき氷器(試作)に、魔道具で作った氷セットして、シャリシャリシャリシャリ~
おー、軽やか。削れた氷も細かいね。
うーん、削るのはこれでいいけど、容器に取るのは、こここうしたほうが…、ああ、それでもいいよね。
こっちは少し調整すればすぐいけそうだね。
かき氷の方は、道具が完成したらさっそく店に配置して売り出すらしい。
グラントさん、どんどんこれ作って売り出してね~。
にしても、すっごく切れ味良いし、手応えが軽いね。
え? オリハルコンの刃?
へえ… 初めて使うのがかき氷器でかぁ…
この通り、切れ味良いし錆びないから最適! お値段は…、ああ、刃の先だけだからそこまでではないのか。
で、真空容器は… へえ。外側のパーツと、一回り小さい内側のパーツを…
お? なんかの液体に潜らせて… 銀色にコーティング。それを溶接して…
「こんなもんでどうかね?」
ふうーん。形状はこれでいいと思うけど、さっき見た感じだと厚さあんまり無かったけど、強度は大丈夫なの?
へぇ… ミスリルコーティング…?
強度もアップするし、腐食にも強い。熱や冷気も伝えない! ドワーフ秘伝の技術だそうです。
なんか… ミスリルとかオリハルコンとか、ちょっと憧れてたんだけどなぁ…
ロマンがな~い…
ふーん、オリハルコンやミスリルはわりと身近な材料なの?
そんなに安くはないけど、よく使われてる。
オリハルコンは前世での工業用の金。ミスリルは不純物の入ってるプラチナみたいな感じ?
ちなみにアダマンタイトとかあります? ヒヒイロカネとかは?
ほー。アダマンタイトは、噂としては聞いたことある、と。
実際には… コレがそうだ! って武器とかはたま~にあるけど、確かに性能は良いんだけど、はっきりしない?
奇跡的に出来た、特殊効果を帯びた合金のことを、それぞれがそう言ってるんじゃないか、って。
ヒヒイロカネ? あー、無ければいいです。気にしないでね~。
まあここ、西洋風の世界だしね…
気を取り直して、出来た保管容器に~ アキ、さっきの細工をしてね。
出来た? どれ、うん、空気無いね。
じゃあ、これにアイス入れて、どのくらい冷たさが持つか、アイスの劣化はどのくらいか試そうか。
氷は、普通のと塩入りでやってみよう。氷結の魔導具も作って…
ほー、アイス入りの鍋のすぐ外側を凍らせたけど、空気とミスリルの層を挟んだ容器の外からじゃ、全然冷たさが分からないな。
しばし後…
お? 塩入りのほうが低温なのかな? こっちのアイスの方が固い。
あれ? でも氷が溶けるのも塩入りの方が早いのか。
うーん、一定時間で氷結が発動するように、タイマーみたいなのを作れないかな…。
それとも、氷が一定以上溶けた状況に反応して、再凍結かかるようにするか。
あ、そういや風呂の水が一定以上になると鳴るタイマーとかあったっけ。
よし。ちょっと材料貰ってきて、<液体に漬かるとその液体を凍らせる>魔道具を作ってみる。
これを~ 底から… 10センチくらいのとこに貼り付けてみよう。
で、しばらく観察してると、氷が溶けてって、液体になってって、それが魔道具の上まで来たら…
よーし! ちゃんと再凍結~♪
必要なければ、魔道具外すか、水を捨てればいいよね。
あ。
あとちょっと気になったので、こっそり殺菌効果の魔道具も追加~。
凍ってたら大丈夫な気もするけど、食中毒とか出してたまるか! せっかく儲けられそうなのに!
まあ、凍結と同じペースで殺菌も作動させれば、アイスがアイスの状態であればまあ大丈夫かな?
売ってから放置して溶けたのとかで起きたら… そこまでは知りません…




