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第98話 獣の使者 前編

◆ ノルミッツ王国 田園地帯 ◆


 ラフーレ達を倒してから半月余り、荒らされた城下町の復興やマッタンゴ撲滅のお手伝いをした。ラフーレの根のせいで地盤が危うくなっている場所もあってその辺りが立ち入り禁止になったり、本当に地盤沈下が起きたりでかなりメチャクチャな状況だった。

 死者38人、負傷者76人。多いのか少ないのかはわからないけど、結果としてすべての人を守れなかったという結果だ。それでもボクがいなかったら、国そのものがなくなっていたと王様に涙ぐまれて感謝された時はなんだか報われた気がする。

 東から西へ、北から南へ。もう一生分、この国を駆け巡ったと思う。力仕事なんかは率先して引き受けたし、出来る限りのお手伝いはした。お礼に果物やらたくさんもらって帰ってきたら、自分も行けばよかったとロエルに心の底から後悔された。


「必要な資材はすべてアバンガルド王国から運んでくれるそうだ。

いくら友好国とはいえ、さすがにおんぶに抱っこでは示しがつかんな……」


 アバンガルド王国からも復興のお手伝いとして兵隊が来た。おかげで建物の損壊は思ったよりも早く何とかなりそうだ。


「リュアさん。この野菜、本当にこの国の人達が作ったの?

私達が手伝える事なんてあるのかなってくらい、新鮮……」


 畑の事はよくわからないので、アズマの村人達に移住してきてもらった。コノカ達は畑の広さと野菜の質に圧倒されていたみたいだけど、王様は逆に子供みたいにはしゃいで彼らを歓迎している。


「ほうほう! これがアズマの……なるほど! 肥料のほうは……そういう事か!」

「この辺りの気候について詳しく教えていただけますか?」


 なんか畑談義が濃くなってきたので、ボク達は静かにその場から離れた。衣食住すべて任せなさいと胸を張っていたし、村人達の住居についてはこれで本格的に心配はなくなった。


「よかったね。あっちもこっちも、人がいっぱい」

「バームさんがマッタンゴの特効薬を作ってくれたみたいだし、これでこの国も本格的に平和になるね」


 あの騒ぎの中でバームの姿が見えないと思ったら、なんと宿屋の部屋で黙々と特効薬の開発に勤しんでいたみたい。あまりに集中しすぎて外が大パニックになっている事にすら気づかなかったなんて、いくらなんでも笑えない。


「マッタンゴの小屋はまだすべて焼き払っていないのですね?

それなら、しばらく国が管理して頂けないでしょうか。あれから特効薬に必要なエキスを抽出できるのです」

「わかった。製造方法と使用方法さえわかれば、後は大丈夫だ」


 今回の件でバームは王様からたっぷりと報酬をもらっていた。身を呈して町の人達を守ったジルベルト、畑で魔物から王様達を守ったロエル、そしてボク。混乱が収まった後はそれぞれが英雄のように祭り上げられている。

 すべての件が解決に向かっていて喜ぶべき状況なのに、二つほど心配事がある。


「リュアちゃん! こっち向いてぇぇぇぇ!」

「次に生まれ変わるならあの短パンになりたい!」

「俺のソニックスピアを見てほしい」


 花の三姉妹のファンをやっていた人達がボクにつきまとってくる。あの長い髪をした痩せ細った男の人もソニックスピアを打てるの、なんて思ったけど何だか嫌な予感がしたので関わらないでおいた。

 嫌われるよりは好かれたほうがいい。それはそうなんだけど、ボクと同じような格好をして呼吸を荒げている太った男の人に至っては完全に意味がわからない。やめてほしい。何なのあれは。


「オ、オレ、リュアちゃんに抱きかかえられたんだぞ……う、うらやましいだろ」

「てめぇは死ね豚野郎!」


 よくわからない事で畑でケンカを始めて兵士達に取り押えられる騒ぎにまで発展して、作業が中断される。

 こう言ったら何だけど、迷惑な人達だ。これだけの元気があるなら、働けばいいのにとつい思ってしまう。


「もう静かにして! リュアちゃんはね、働かない人は嫌いなの!」


 ロエルのこの一言で取っ組み合いまで始めていた人達が一斉に我に返った。瞬きを何回か繰り返した後、立ち上がったと思ったら全員行儀よく一列に並ぶ。

 ビシッと姿勢よく直立して、いきなり人が変わったようだ。


「俺、今日から働く!」

「オレ、本当は仕事したくてしょうがなかったんだ。ただ、適正が合わないっつーのかな。

皆と同じような平凡な人生を送るってのが嫌だったんだよ。でも今、ビビッときたぜ!」

「やれやれ……ようやく本気を出す時が来たか」


 別人のように農具に手を伸ばした人達を見て、ロエルは満足そうに頷いている。もしかしてボクをダシにしたのかな。そんなわけない。ロエルがそんな汚いマネをするはずがない。


「ロエル、ボク別にそんな事一言も」

「リュアちゃんが見てるよ! 早く仕事を教わって!」


「はいッッ!」


 これほどまでに気合の入った返事は今まで聴いた事がない。これで本当にいいのかな、そう思わずにはいられない。


「2人とも、本当にありがとう。すべての国民を代表して礼をいう。

国民の中には君達の銅像を広場に立てようとしておる者達も」

「それは絶対にやめさせて下さい!」

「それは絶対にやめて!」


 ボクとロエルの言葉が被るとは思ってなかった。それに圧倒されたのか、王様が曖昧な返事をして気まずそうに手ぬぐいで顔を拭く。


「我々は今まで、農業さえ営んでいれば国は発展し続けると思っていた。

しかし今回の件で、いかに平和ボケしているかがよくわかったよ。

これからはそんな時代に合わせなきゃいかんようだなぁ……」


 寂しげな王様の表情を見ると、この人は王様なんかやってるよりも一生畑仕事だけをやっていたいのかなと思える。何の根拠もないけど、王様なのに皆と一緒になって土だらけになったその姿がすべてを表しているように見えた。


「しかし、冒険者というのは本当に強いものだな。遠目からだが、あの大きな花が真っ二つにされるところを見て、畏怖の感情すら覚えたよ。あ、いや決して悪い意味ではなくてな……」


 取り繕ってはいたけど、冒険者の事はあまり好きじゃない感じもする。最初に会った時、ほんの一瞬だけどいい顔はされなかった。ボク達が来た時も、本当はすぐ気づいたけどあえて無視したんじゃないかな。考えすぎかもしれないけど。


◆ ノルミッツ王国 宿屋 ◆


「あ、リュアさんにロエルさん」

「アイは元気になった?」

「それが、よっぽどショックだったみたいで……」


 マイが目線で指した先には、部屋の隅で塞ぎこんでいるアイの姿があった。もう一つの心配事がこれだ。アイはボクにあんな姿を見られた事がショックでたまらないらしい。

 バーサーカーのスキル、バーサークは戦闘能力を一時的に大きく上昇させるけどその代償として我を失ってしまう。その姿は百年の恋も冷めるほどで、アイ自身もよほど危ない時じゃない限りは滅多に使わないとマイが丁寧に説明してくれた。

 ミィが優しく傍らにいてあげているけど、アイは亀のように閉じ篭ったままだ。


「私達もこれまで、散々男の冒険者にパーティを組もうと誘われたよ。

まぁ大半はアイ姉さんや私目当てばかりだったんだけど……。バーサークを見た後に残った人はゼロ。

悪い虫がいなくなってよかった面もあるけど、やっぱり私達だけじゃ辛い時もあるんだよね」

「ボクは別に何とも思わなかったけどなぁ……」

「わ、私は見てないから平気だよ!」

「ロエルさん、それあんまりフォローになってない……」


 あ、と口に手を当てたロエルはアイをちらりと見るけど、相変わらず微動だにしてない。

 何とも思わなかったというのはウソで確かにあれを見た時、ボクもある意味ショックだった。見たボクでさえ、それなのにアイ自身のショックはとてつもなく大きいはず。

 ボクも何て声をかけていいのか、まったくわからない。気にしてないからと何度言った事かわからないし、それで効果がないのもとっくに知っている。

 姉の頭を撫でているミィの姿が、健気でたまらない。


「ミィ、ありがとう。でもいいの、姉さんはもう生きる希望を失ったわ……」

「何て事いうの! 私達、これからだって誓い合ったばかりじゃない!」

「でも……私はもうダメ……」

「姉さん! 姉さん、しっかり!」


 なんかすごい大袈裟な事になっていて、悪い事をしたような気分になる。まさか本当に死ぬとは思わないけど、この空間には悲壮感が漂いすぎている。


「そっとしておこう、リュアちゃん……きっと時間が解決してくれるよ」


 つまりロエルもお手上げみたいだ。はぁ、と心底疲れた溜息を吐き出した直後、部屋のドアを誰かがノックした。


「アバンガルド王国から派遣されたリッタです。こちらにリュアという冒険者が……」


 赤いストレートの髪、その頭からぴょこんと飛び出た一本の毛。会うのはいつ以来か、リッタがそこにいた。軽装の鎧をまとっているという事は少なくとも、遊びに来たわけじゃないのは確かだ。今も多くのアバンガルド王国の兵士がこの国で活動しているし、復興支援の為に来たと考えるのが自然かな。


「来ていたんだ、久しぶりだね」

「はい、ノルミッツ王国への派遣は私が直接申し出たんです」

「私の分析が正しければ、リッタは用件を早く言ったほうがいいと思う。いえ、リッタ分隊長」

「うん……そうだった」

「しっかりして下さいよぉ、リッタ分隊長!」


 リッタの背後から出てきたのはイリンとシュリだ。リッタの背中を鎧の上から思いっきり叩いて、逆に痛がっているイリンはリッタを分隊長と呼んでいる。どういう事と聞きたいところだけど、用があるみたいだし中断するのはやめておく。


「あの、実はお願いがあるのです」

「リッタ分隊長、もっと堂々と!」

「は、はい! うむ! 実は二人にはやってもらいたい事がある!」

「王様の真似はしなくてもいいから……」


 呆れるイリンにボクも同じ意見だ。そして話がまったく進まない。とりあえず、リッタが分隊長というのに慣れていないのは十分に伝わってきた。

 あのリッタが分隊長にまでなったのはボクとしても何だかうれしい。でも、分隊長ってどのくらい偉いのかな。


「お、お二人にはぜひやっていただきたい事が」


 一息ついたらこれからあそこへ旅立とうと思っていたんだけど、リッタの頼み事を断るのは気が引ける。と思ったけどこれは依頼なのかな。


「ぜひ、獣の園との交渉の席に参加していただきたいのです」

「……なんて?」

「リッタ分隊長、もっと要点を掻い摘んで一から説明しないと……。いや、私が説明するよ」

「えっと、イリン。獣の園って?」

「実はここから北にあるスルアード港町に獣の園から来た魔物達が居座ってしまったんです。

今のところ、町に被害は出ていませんが彼らは私達に話があるから代表者を数人連れてこいと要求しています。

一週間以内に誰も現れなければ、町を壊滅させると……」

「なにそれ! わかったよ、ボクが倒してくる!」

「落ち着いて、リュアちゃん。わかってないから。イリンさん、獣の園というのは?」


 ロエルにたしなめられて恥ずかしくなってる場合じゃない。イリンが説明するには獣の園というのは、かつてのバラード大陸。今はビーストマスターパンサードが支配する密林の大帝国だ。

 そいつらは自分達を獣の園と自称しているらしく、魔王軍の中でも最大勢力で今や手がつけられないほどらしい。

 そんな獣達の大帝国が今、このアバンガルド王国がある大陸にまで迫ってきた。交渉とはいっても相手は魔物。討伐部隊を編成しつつ、彼らの要求通りに動くというのが今後の方針とか。


「Aランク、Bランクの冒険者の方々にも協力をしてもらってる。

でもリュアさん達にはそちらの討伐隊ではなく、交渉のほうに参加してほしいの」

「なんで? コウショウってボク、何をすれば?」

「魔王軍の主力部隊を次々と打ち破ったリュアさんは警戒するべき相手のはず。

そんなリュアさんがいれば、相手も下手な態度には出られないと思うの」

「そうかなぁ……」


 疑問はあるけど、進んで協力したいくらいだ。でもあの魔王軍が交渉を持ちかけてくるなんて、どういう事だろう。

 ラフーレにしたって今までの十二将魔は、話し合いなんてしそうにない奴らばかりだった。魔王軍にもいろいろな奴がいるという事なのかな。


「それで申し訳ないのだけど、今から出発の準備をしてほしいの」

「今から?」

「3日もあればスルアード港には着くけど相手は魔物。気が変わって暴れられたら大変だし、早いに越した事はないから」

「うん、わかった。ロエル、いいよね?」

「いいよ、私達に出来る事があるかはわからないけど……」


 交渉なんて言ってるけど、実際には港町の人達を人質にとっているようなものだと思う。彗狼旅団のグラーブとやってる事がまったく同じだ。行くしかない。やるしかない。


「町はすでに魔物達に占拠されている状態なので絶対に刺激しないで下さいね、リュアさん」


 なんでボクを名指しで言ったんだろう。やるしかないと決意した後にこれじゃ、心の中を見透かされたとしか思えない。しばらく見ないうちにリッタはそんな事まで出来るようになったのか。


◆ スルアード港町 ◆


 スルアード港町は海沿いにあるアバンガルド王国の次に大陸の玄関と呼ばれているみたい。結構大きな港町で、普段なら冒険者や行商人なんかで溢れかえっていて、アバンガルド城下町と同じくらい賑わっているそうだ。

 ここから、今は獣の園と化したバラード大陸にも船で行けるとか。

 大陸東部のアバンガルド王国、北部のスルアード港と二つの玄関のうち、一つを潰されたのだから大事だとリッタ達は騒いでいる。

 潰されたといっても滅んだわけじゃないなら、この町に着くまでのボクはそう思っていた。


「リュ、リュアちゃん。あっちにもヴァンパイアビーストが……」


 バラード大陸の港町を襲ったヴァンパイアビーストが鋭い眼光を利かせて町の至るところに座り込んでいる。出歩く人もまったくいなくて、町にはそれらの魔物達が我が物顔で徘徊していた。

 それ以外には特に荒らされたわけじゃなく、ただひたすらに静まり返っている。


「腹立つなぁ、倒しちゃおうか」

「もう、本当にやめて下さい! ここで交渉が台無しになったらリュアさんのせいですからね!」


 剣を抜いたボクを本気で止めにかかるリッタの様子からして、やっぱり只事じゃない。確かにあの魔物達が一度暴れ出したら、どれだけの犠牲が出る事か。そう考えたボクは自分の軽率な行動を反省した。でも歯がゆいな。

 あのお座りして、どこか優越感に浸ったような笑みを浮かべているように見えるソルジャーレオがなんか腹立つ。毛づくろいまでして、まるでボク達人間なんか何とも思ってないんだぞとでも言いたそうだ。


「代表である我々はどこへ向かえばよいのですかな、カークトン隊長?」

「あちらの酒場にて、話し合いを行うそうです」


 代表者としてこの場にいるのが王様と宰相のベルムンド、そして護衛を務めるカークトンだ。王様の同行について、城の偉い人達からは猛反発されたけどそれを押し切ってようやくここまで来たらしい。

 お城のほうは大丈夫かな、とボクが心配するまでもないか。


「あそこか。そういえば、酒場という場所には初めて足を踏み入れるな」

「本来、陛下のような方が入る場所ではありませぬ。あんなところを指定するとは、獣共め」


 兵士数人とカークトンに密着されるように守られた王様は酒場を物珍しく、屋根から扉までまじまじと眺めている。

 そして扉の前には猿のような猫背の魔物が番をしていた。猿の魔物はボク達に気づくと、キキッと鳴き声を漏らして飛び跳ねるように近づいてくる。


「ニンゲンの代表か?」

「そうだ、交渉しに来た。こちらがアバンガルド王国の」

「とっとと入れ! 待ちくたびれたとあのお方は首を長くしておられる!」

「……あぁ」


 名乗ろうとしたところで、遮られたカークトンは不機嫌そうに鼻から息を漏らした。


「それにしても代表が多いな?」

「言ってやるなよ。弱いニンゲンが俺達の前に来るとなると、そりゃタマが縮み上がるってもんさ。

ここに来ただけでも褒めてやろうぜ」

「キキッ! そうだなっ」


 キキキと笑い合う猿達。それをあえて無視して、先頭の兵士が扉に手をかけた。


◆ スルアード港町 酒場 海人の食卓 ◆


「キャッキャッキャッ! 来たな、ニンゲンども!

猿顔共がずらりと並んでよくもまぁ! キャッキャッ!」

「猿は俺達ですぜ、ボス」

「そうだった! キャキャッ!」


 何がひどいかって、まず目に飛び込んだのは荒れに荒れた室内だ。食い散らかされたチキンの骨、割れたボトルの破片が床にこれでもかというほど、散乱している。そしてあちらこちらから漂う異臭。

 この臭いの正体は言うまでもなく、アレだ。はっきりいって臭すぎる。部屋に入った瞬間、ボク達全員が即鼻をつまむほどの強烈な悪臭。

 酒場のテーブルをイス代わりにして座っているあそこの猿がボスだとすぐわかる。チキンをかじりながら、ボク達を見ている姿はまるで品定めでもしているかのようだ。


「要求通り、代表としてここに来た。こちらが」

「オレ様が獣の園139番隊の隊長、ソゴックだ! こう見えてもお前らよりも百倍賢いんだぜ?

敬えよ、お前ら。 キャッキャッ!」


 王様どころか、カークトンが喋る余地すらない。ソゴックと名乗った猿は話し合いをする気なんかないのかもしれない。わざとボク達を怒らせようとしているように思える。


「んー! お前もしかして!」

「ボ、ボク?」

「そう、お前だ。噂のリュアか?」

「なんでわかったの?」

「キャッキャッ! そりゃわかるだろ、サル! お前がこの中でとんでもなくつえぇ!

やばい、やばいぜお前! オレじゃ相手にもならねー! なるほどなるほど、そういう事か!」


 ボス猿は楽しそうに一層、チキンをほおばった。口の中に含んでいた骨を床に吐き捨てて、ボス猿は今度はボトルに口をつけて一気に飲み干す。

 意外だった。今まで戦ってきた相手にそんな事がわかる奴なんてほとんどいなかった。もしかして野生の勘かな。奈落の洞窟にも襲いかかってくるかと思いきや、恐れをなして逃げていった魔物もいた。

 ああいうのは何か本能みたいなものでボクの強さを察知したんだと思う。このソゴックもソレに近いものを持っているのかもしれない。 


「しかし噂のリュアがいたんじゃ、さすがの俺も萎縮せざるを得ないわなぁ。

まったく、猿脳どもの分際で考えやがったな」

「猿脳はオレ達ですぜ、ボス」

「キャーッキャッキャッ! そうだった!」


「……それで、そろそろ交渉を始めたいのだが」


 カークトンから、はっきりとした苛立ちを感じた。あの甲高い笑い声だけでも不快なのに更にこの室内だ。そしてよく見ると奥のほうで店の人が猿達に囲まれて、料理を作らされていた。

 この世の終わりみたいな真っ青な表情をして、震えながら鍋を振るうおじさんを見るだけでも怒りが沸いてくる。


「始めに槍を刺しておくぜ。町の奴らはオレの機嫌次第でどうとでもなる。

お前らがオレを馬鹿にしたり、不快な思いをさせてみろ。その時点で終わりだ。

といっても噂のリュアをここに連れて来た時点でオレの機嫌はすでにやばいんだけどな、キキッ」

「ボス、それを言うなら槍じゃなくて釘ですぜ」

「そっかそっか、キャッキャ!」


 それくらいボクにだってわかる。もしかして、初めて自分よりも頭が悪い相手に出会ったかもしれない。


「単刀直入に聞きましょう。そちらの要求は何ですかな?」

「言っちまっていいのかぁ? 拒否権なんかないんだぜ?」

「聞きましょう」


「獣の園じゃ、ニンゲン狩りってのが盛んなんだ。パンサード様は大変遊び好きでね。

制限時間、見事逃げ切った奴には生きる上で必要なものを一つ与える。服、食い物、住処。

全裸スタートの人間からすりゃ、どれもほしいところだろ?

けど、そろそろストックもなくなりそうなんでね。そこでだ、この大陸のニンゲンを1000人ほどよこしやがれ」


 気がつけば、ボクは剣に手をかけていた。交渉なんて始めからなかった。


◆ シンレポート ◆


きょうも れぽる


ラフーレのめぎつね いないとおもったら こんなところで あぶらうってやがったです

まちの あっちこっちで いやーんなことばかりが おこっていて

じゅんじょーな シンには しげきが つよすぎたのです

にんげんを ほねぬきにして ほうかいさせるとは ラフーレも かんがえやがったですね

でも にんげんは よくぼうには かてないといいますが りゅあには もっとかてないと

シンは おもうのです


あのめぎつね まおうさまに いろめつかったりして じゃまだったし

いなくなって せいせいしたです

それにしても えんどすれば ほぼむてきだった あのラフーレが ねぇ


そしてなにやら けもののその

ぱんさーどは あそびすぎです

あいつには めいかくな しんねんが そんざいしない

たべたいからたべる あそびたいからあそぶ かりたいから かる

こんかいのけんも ぱんさーどにとっては あそびのいっかんなのです


しかし あのくそがきの しんけいを さかなでする けっかに

あのいきおいで けもののそのに なぐりこみに いきそうです

でも もしかしたら ぱんさーどは それをねらっているのかも?


まったんご もぐもぐ

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