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第96話 魅惑なる花々は田園に咲く その3

◆ ノルミッツ王国 田園地帯 ◆


「さぁ、やっておしまい!」


 花の三姉妹の一人の指示で植物の魔物達は様々な手段で攻撃を開始した。花びらがはらりと落ちたかと思うと、それらが疾風のように刃同然で飛んでくる。猛毒らしき液体をシャワーのようにばら撒き、女の人の形をした木の魔物は地属性魔法と、豊富な攻撃手段。

 出来ればその毒の液体はやめてほしい。そんなものを畑にばら撒かれたら、作物がダメになる。


【死妖花は花びらの刃を放った! リュアはダメージを受けない!】

【ジュヌードはバッヂストーンを唱えた! リュアはダメージを受けない!】

【ベノムフラワーは猛毒の液を放った! リュアは毒を無効化した!】


 大粒の岩、花びら、猛毒。痛くはないけどあまり気持ちのいいものじゃない。


【リュアの攻撃!】


 実際、植物の魔物は結構厄介だ。奈落の洞窟にもこういう花のお化けみたいなのがいたけど、状態異常を得意とする上にちょっとのダメージならすぐに再生してしまう。

 状態異常に耐性がなかった時はそれはもう、苦労した。力押しで勝てるうちはそれらを見落としやすい。状態異常に足元をすくわれてから初めて気づく、この危険性。


【魔物の群れに501499のダメージを与えた!】


 それもあくまで昔の話なんだけど。今ではこいつらに捉えられる事もなく、根まで消し飛ばせる。16匹の魔物程度なら、簡単だ。ちょっと畑を踏み荒らしちゃうけど、数回ステップする感覚でシュッと剣でなぎ払う。

 シュッと、もっと他に表現がないかなとたまに思うけど本当にこれしか思いつかないから仕方がない。


【ベノムフラワー×8を倒した! HP 0/620】

【死妖花×2を倒した! HP 0/1020】

【ジュヌード×6を倒した! HP 0/795】


「……! あ、え、えっ?」


 つい数秒前まで自信に満ち溢れていた三姉妹が一転して、塵になった植物の魔物がいたところを必死に見渡している。やっぱりこの三姉妹もボクの動きが見えていない。十二将魔でさえ出来ないんだから、当たり前か。

 もちろん、あのラフーレにだって無理なはずだ。そのラフーレは口をヘの字に曲げて顎を突き出し、呼吸を荒くしている。クソガキ、メスガキ、たくさんの罵倒を呟いていた。


「ねぇ、ラフーレ達は魔王軍なんでしょ? 十二将魔だよね?」


「気安く呼んでんじゃねぇよ糞ガキが! ラフーレ様に触れんじゃねぇ!」

「どんなスキルを使ったのか知らないけど、私達をさっきのザコと同じだと思わないほうがよくってよ!」

「それに本当のお楽しみはこれからなの」


 三姉妹の一人が高々と手を掲げたかと思うと、それが蔓になって空を目指して伸び始めた。蔓同士が絡み合って、お互いに巻きつくように直立した形になる。

 でもそれだけで何か仕掛けて様子もない。


「ま、町のほうが騒がしいぞ……」


 誰かが城下町へと続く道のほうを見た。かすかに人の叫び声が聴こえる。それも一人や二人じゃない、大勢だ。大人か子供かもわからないほど悲鳴が混ざり合うほどのパニック。この状況から考えられる原因は一つしかない。


「ウフフフフ、始まった」

「まさか手下の魔物に……!」

「さぁ?」


 今からボクがやるべき事。三姉妹とラフーレを倒して、町の皆を助けに行く。それしかない。


「いい事思いついたわ、チュリップ、ラベンタ」

「……わかったわ、バアラお姉様!」


 何かの相談をしたかと思うと三人は蔓状になって細くなり、地面に吸い込まれるように消えていった。逃げられたと気づいたのは数秒後だ。


「アハハ! それじゃあんたはここで死のうか?」


【ラフーレが現れた! HP 8300/8300】


 腕が植物の触手になり、太ももから先は木の根のように何本も別れて地面に潜りこんでいる。肩には鎧代わりとでもいう様に葉っぱが装着され、体は木の幹が胴体に巻きつけられている感じだ。

 戦闘体勢、それがすぐに伝わるほどの異様な姿。


「さぁ、私の力」


【リュアの攻撃! ラフーレに484910のダメージを与えた!

ラフーレを倒した! HP 0/8300】


 何をするつもりだったかは知らないけど、今はこんなの相手にしてる場合じゃない。再生しないよう、全力の一振りで葉っぱ一つ残さずに消し飛ばしておく。

 ボスのラフーレを倒しておけば、後は安心だ。すぐに町へ行って、残りの手下も倒してしまおう。


「リュアちゃん、私も行くよ!」

「ロエルは残っていて! またここに魔物が現れたら、あの人達が危ないよ!」

「そ、そうだね……わかった! すぐに全滅させてきてね!」


 化け物達を一瞬で消した一連の流れについていけず、ただ呆気にとられている王様達。そして全滅させてきてねなんて、軽々しく言い放つロエルとそれをあっさり受け取るボクのやり取りにも多分、ついていけてない。

 確かに全滅は出来るだろうけど、どれだけの数がいるのかはわからない。あの三姉妹だけは他の手下と比べて別格だろうから優先して倒さなきゃいけないし、まずは見つけるところから始めないと。


「あ、あの子は人間なのか……?」


 走り出す間際に王様のそんな失礼なセリフを聞いた気がするけど、そういうのも慣れた。


◆ ノルミッツ王国 城下町 ◆


【ベノムフラワーが現れた! HP 620】


「うわぁぁぁぁ! なんだよこれ、かわい子ちゃんが化け物になったなんだこれぇぇぇ!」


 発狂している人相の悪い男の人の様子を見る限り、どういう状況だったのかは大体想像がつく。道の真ん中で腰を抜かして動けないでいる男の人の前に立ち、すみやかにそれを処分した。


【ベノムフラワーに514720のダメージを与えた! ベノムフラワーを倒した! HP 0/620】


「あ、あ、ありがてぇ……?」


 気が動転しすぎているせいか、なんかお礼っぽくない発音だ。別にそんなのいいし、いつまでもここにいるわけにはいかない。


「危険だから、おじさんはあっちの畑に行って。あそこなら安全だから」

「君、冒険者か? あとおじさんじゃない、こう見えても20だ」


 どうでもいい情報を受け流してボクは屋根の上に飛び乗る。二階建ての民家からこうして見渡しただけじゃ、どこで何が起こっているのかよくわからない。もっと高い建物があればいいんだけど、この国はアバンガルド王国と違って建物もどこか古臭いし、下手をしたら大きな布のようなものを上にかけただけの家まである。

 貧乏なのかはわからないけど、アバンガルド王国よりも全体的に綺麗な感じはしない。でもこの国は町の入り口に宿屋みたいな施設の建物が集まっているだけで後は畑、畑、たまに家。そんな感じだから、この辺りさえ調べれば後は楽そうだ。


「花の三姉妹はどこかな……ていっ!」


 この国全体どころか、遠くにあるアバンガルド王国まで見渡せそうなほどジャンプしてしまったのはちょっと失敗だったけど、おかげで三姉妹の居場所はわかった。

 あの広場だ、あそこにいる自分達を応援してくれた人達さえも殺そうとしている。3人で取り囲んで、腕から生やした触手で一人ずつぐるぐる巻きにしていた。気持ち悪いし好きになれないけど、あの泣き叫ぶ姿を見て助けないわけにはいかない。


「なんで、なんでこんな事するんだよバアラちゃん! な、これ何か仕掛けがあるんだろ? 降ろしてくれよ!」

「あら、あなた私に縛られて踏まれたいとか言ってなかった?」

「バアラお姉様に欲情するなんて、醜い豚ね。豚は豚らしく、食べやすくされておきなさい」

「クスクスクス……」


「てぇいっ!」


 広場近くの建物から垂直に降りたと同時に、太った男の人を捕らえている触手を斬った。触手から解放されて落下して悲鳴を上げそうになっている男の人を受け止めた時に何かねちゃりとした。汗だ。

 酸っぱい臭いをかいだ瞬間、ボクは抱えていた男の人を落としてしまった。短い悲鳴をあげた男の人には悪いけど、こんな事がないように今度からはきちんとお風呂に入ってほしい。

 ボクも面倒くさがらずにお風呂には入ろう。


「あらあら、もう嗅ぎつけてきたの?」

「ラフーレはもう倒したよ。降参するなら……」

「すると思う?」


 ラフーレを倒したいうのに、三人の余裕たっぷりといった感じの微笑。

 そしてこの3人も、畑で戦った奴らみたいにみるみると変貌していく。バアラの体が薔薇の棘のついた茎状になり、チュリップの体が細い一本の茎になって頭が四等分に割れたと思ったらそれがそのまま花びらになる。唇をすぼめたような巨大な花だ。

 無数の花びらに覆われた花の化け物になったラベンタと、棘で覆われた茎をくねらせて薔薇の蛇といった表現が似合いそうなバアラ。見事に魔物化してボクと戦う気満々だ。


【茨の女王バアラが現れた! HP 2570】

【吸い尽くす花姫チュリップが現れた! HP 2240】

【妙香の花乙女ラベンタが現れた! HP 2130】


「美しいものに棘があるわけじゃない、棘のあるものが美しいのよ」

「あなたのすべてを吸い尽くしてあげる」

「香り漂う花々に抱かれたまま眠れ」


 棘だらけの触手をくねらせて、それは伸縮自在に伸び始めた。ここにいる町の人達を巻き込むのはやめないのか、やれやれと思った矢先。

 バアラの赤い花びらに炎を帯びた矢が突き刺さった。金切り声をあげて花びらを燃やすバアラ。炎はすぐに消えたけど、バアラの蛇みたいな体がのた打ち回っている姿を見るにかなり効いている。

 炎に矢、誰のスキルだろう。ボク達以外に冒険者が――――


「お久しぶりです、リュアさん」


 なつかしい声だ。これは矢を放った主の声じゃない、そのお姉さんだ。この丁寧でゆっくりとした口調、悪質なガメッツ商会にも心から屈しなかった三姉妹の一番上のお姉さん。


【マイはアローファイアを放った! 茨の女王バアラに319のダメージを与えた!

HP 2251/2570】


「よしっ! アローファイア命中! 植物系の魔物には効果テキメンだね!」


 明るくて調子のいいマイ。その後ろで姉の影に隠れる小さな少女、ミィ。クイーミルで出会った駆け出し冒険者だった三姉妹が今、ここに立っている。そしてボクの前であのバアラに一撃を与えていた。


「三人とも、なんでここに?」

「依頼で遠出した帰りに立ち寄ったんです。そしたら、大変な事になっていて見過ごせなくて」

「やーやー、もうここに来るまでに何匹の気持ち悪い花どもに襲われた事か!」


【マイ Lv:30 クラス:ライトハンター ランク:B】


「強くなったね……でも、ライトハンターって……」

「最初はスナイパー目指してたんだけど、弓手ギルドの試験連続で落ちちゃってさ……。

もういっそ自己流で技を磨いたほうがいいんじゃないかって、あはは……」


 そういえばクラスごとに独立したギルドがあって、そこで見事試験に合格すれば上級クラスになれるって前に聞いたっけ。ボクもソードマスターを目指してみようかな。

 それにしてもライトハンターというマイの独自のクラス、何かすごくいい。ボクもいい加減、ソードファイターのままじゃ格好がつかない。


「お喋りはそこまでですよ、2人とも。恐らくあの3匹が植物達のボスです。

リュアさん、ここは私達に任せていただけませんか?」

「アイ達が? 厳しいと思うよ……」

「大丈夫です。あの3匹には負ける気はしませんし、それに町中で暴れている魔物達を全滅させられるのはリュアさんだけです。さぁ、急いでください」

「本当に? 信じていいんだよね?」

「はい」


 そんなやり取りを黙って見過ごすはずがない。ラベンタから放たれた誘われるような甘い香りは間違いなく状態異常の効果を含んでいる。


「黙って聞いていれば、私達には負ける気はしないって?

生きながらにして、体内にベノムフラワーの種を植えつけてやろうかしら」


【妙香の花乙女ラベンタは眠りの香りを放った!】


「ミィ、お願い」


【ミィのセーフティレイン! パーティは一度だけ 状態異常を防ぐようになった!】


【ミィ Lv:29 クラス:メディカル ランク:B】


 無言で頷いたミィから振りまかれた水滴は3人に降りかかった。よく見たら水滴のようで水滴じゃない、粒々になった光だ。それらが3人を包み込み、そしてそれぞれに吸い込まれるようにして消えていく。見た事もない魔法だ。


「き、効かない?! まさか耐性?」

「植物系の魔物が得意とするものなんてお見通し、だって」

「こくり」


 ミィの言葉を代弁するマイ。相変わらず姉達の後ろに引っ込んではいるけど、戦う意志だけは前に出ている。魔物の前でお漏らしをしていたか弱い少女の姿はここにはどこにもなかった。

 3人とも、戦える。それをボクに見せ付けてくれた。大丈夫だから、無言でボクに目で語りかけてくるマイ。わかった、本当は3匹とも、一撃で倒せるからいいよなんて事は言わない。ここは一つ、3人を信じてみよう。


「わかった、でも本当に気をつけてね。

あのバアラは棘に何か毒でも仕込んでいるみたいだし、葉の影に小型の虫の魔物を隠している。

射程も広いから、多分攻撃の軸はあいつだよ。ラベンタは状態異常がメイン、チュリップはわからないけどあの唇みたいな花の部分には捕まらないようにね」

「え、えぇわかりました……すごいですね。戦ってもないのに、そこまで……」


「バ、バアラお姉様! 手の内を読まれてるわ!」

「フ、フン……慌てる必要はなくってよ。でも、このアブラビートルを読まれたのは少し痛いわね……」

「そこは最後まで隠し通すべきよ、バアラお姉様?!」

「あっ……」


 そんな狼狽した3人を尻目にボクは街中へと駆け出した。ああは言ったけど、本当はかなり心配だ。3匹とも、見たところじゃBランクの冒険者が10人いても足りないくらいだ。

 少し強くなって調子に乗る気持ちはボクにもわかる。それで痛い目に遭った事もあるし、これからもそうならないとも限らない。


「それじゃ、頼んだよ!」


 任せる振りをしてボクは全速力でたまに様子を見に来る事にした。本気で駆け抜ければ、魔物を倒しながらでもこの城下町くらいの広さなら数分で一周できる。頼むから死なないで、そう心から願いながらボクはそこら中で気持ち悪い触手を伸ばして暴れている花のお化け達の退治に向かった。








「アイ姉さん、本当によかったの?」

「もちろん、だってこれで本気が出せるんですもの」


【アイ Lv:33 クラス:バーサーカー ランク:B】


「本気で戦っている姿は信頼している人に見てほしくない。特にリュアさんには……ね」


◆ ノルミッツ王国 城下町 北部 ◆


【死妖花を倒した! HP 0/1020】


「あ、あ、ありがとうございました……あの、どうすれば……私、どうすれば……」


 禍々しい花の魔物の触手に捕まっていた女の人は気が動転していて、まともに逃げられそうにもない。突然の事態を飲み込めずにいる人達が大半だし、当然といえば当然だと思う。

 だからボクはひとまず、あのロエルがいる畑に送り届けた。あそこで町の人達をロエルに守ってもらえば、ボクも安心して戦える。でも国中の人達全員は無理だから、なるべく早く全滅させるようにしよう。


「ふぅ、かなりのペースで倒したはずだけど……あとどのくらいの数がいるんだろう?」





「ほとんど倒してやんの、超キモいんですけどぉ」


 どこからともなく聞こえる間の抜けた声。ほとんど倒したんだ、よかったなんて喜ぶはずがない。だってこの声はボクが倒したはずのラフーレのものなんだから。


「ラ、ラフーレ?! 生きてたの?」

「アッハハッ! マジ、あれで倒したと思い込んでるとか超うけるんですけど!

アタシがあれごときで死ぬわけないし? バッカじゃない?」


 どこにいるんだ、出て来いなんて言ったところで無駄だ。それどころか出てくるなと言っても、すぐにこいつは出てくる。


――――ズゥゥゥン


 国全体が揺れるほどの地鳴り。


 そして次にいたるところで地割れが発生する。家々をなぎ払って地面から出てきたのは巨大な根だ。黒に近い茶色の根。その横幅だけで建物一つを叩き潰せるほどの大きさ。

 それが何本も、踊るように地面から姿を現す。まるで根のダンス大会だ。


完成化(エンド)したの?」

「はぁ? 見るからに馬鹿そうだったけど、ホントに馬鹿じゃん。

あんたの報告は散々受けているっつの、瞬撃少女リュア。そんなデンジャラスなガキ相手にナメてかかったドリドンとジーチはもっと馬鹿だけど。

その点、アタシは違うんだよね。完成化(エンド)した、じゃない。答えは最初から」


 最初から。この様子がその答えだ。ラフーレはこの国で初めから完成化(エンド)していた。地中深くに潜み、根を張り。


「このまま、ここら辺の養分を吸い取って作物が育たないようにするかぁ。

根をアバンガルド王国にまで伸ばすかぁ。悩んだんだけど」


 途方もない大きな化け物になっても、ラフーレの口調は相変わらずだ。声は女の子、ただし見た目は化け物。一目で収まらないほどの巨体。


「ちょっとナメられたままじゃムカつくっていうか?

アタシ達、植物のコンジョー見せてやろうみたいな?

ハッキリいってね、アタシ達は魔物の中でも最強の部類だと思うの。

だってそうでしょ? あんた達は暑けりゃ涼み、寒けりゃ家の中で暖をとり。

環境から逃れようとしてるじゃん。その点、アタシ達は違う。どんな過酷な状況でも、雨にも負けず風にも負けず耐えている。石を突き破ってでも芽を出す。

植物もアタシ達魔王軍もずっとそうしてきた。負けてやるわけないじゃん、糞人間どもが」


 町の中心から顔を出す花。血をぶちまけた様な斑点の花びらを伸ばし、その大きさはアバンガルド城に匹敵している。花の塔といってもいいそのラフーレは、町の禍々しいシンボルのように大きくそびえ立っていた。


「何が言いたいかってムカつくんだよ、リュア。どっちが上か、ここでハッキリさせよーじゃん。

新生魔王軍、プラントマスターラフーレ。十二将魔の中じゃ超イケてるほうだし、負ける気しない。

『根張り強い』。それが戦いにおいてすべてを決めるって事、教えてあげる。

ただしあんたの命と引き換えだけどね」


【妖艶なる大怪花ラフーレが現れた! HP 33000/33000】


 その静かな挑戦状はボクだけじゃなく、この町。いや、世界全体へと向けられているような気がした。

【ベノムフラワー HP 620】

根から茎まで猛毒を含んだ花。毒の沼地で咲いた花が魔物化したと言われている。

毒の蜜で獲物を即死させ、その死体に種を植え付ける習性がある。

また、獲物が好みそうな姿に擬態する危険な習性も最近になって確認されており、更なる注意が必要となった。


【死妖花 HP 1020】

美しい女性の姿に擬態し、獲物を誘き寄せる。森で遭難した人間は錯乱状態の中、この魔物に襲われて命を落とす。

また花びらを一旦、はらりと落として柔らかそうだと油断させた後で刃となり、獲物の命を刈り取る事もある。


【ジュヌード HP 795】

女性の姿をかたどった木の魔物。か弱い見た目からは想像も出来ないほど高い魔力を持つ。

非業の死を遂げた女性達の怨念が木に乗り移ったものだと言われているが、定かではない。

人間の女性に擬態し、人里に下りてきて紛れ込む事もあるので厄介。

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