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第54話 初めての船旅 終了

「その船に乗ってる奴が一人も死ななければおまえの勝ち! 一人でも死ねば俺の勝ちな!」


その言葉を聴いた瞬間、今すぐにでも倒してやりたい衝動に駆られた。でもまずはロエルを医務室に運ばないと。攻撃できないとわかっているのか、そいつは悠々と海に潜った。


「俺は新生魔王軍十二将魔の一人、シーマスタードリドン! ヴィト、チルチル、バルツの仇を討たせてもらうぜ!」


今度は反対側からドリドンの声が聴こえた途端、船体が激しい波で揺れ始めた。立っていられないほどの揺れみたいで、その場にいる誰もが何かにしがみついている。こんなもので転ぶボクじゃない、構う事なくダッシュで医務室まで向かった。揺れる船内では乗客がパニックに陥っている。

ロエルが遊んであげた子供が泣きながら、両親に抱かれていた。個室にいても不安だったのだろうか、ほとんどの人達が通路まで出てきて何事だと騒いでいる。

船員がなんとか落ち着かせようとしているけど、静まる気配がない。


「すみません! ロエル、いやこの子をお願いします!」


返事を待たずにボクはロエルをベッドに寝かせてすぐに出ていった。本当はロエルが心配でたまらないけど、一刻も早くあいつを倒さないとそれどころじゃない。

船に乗ってる人が死ねばおまえの勝ちだって? ふざけるな。


「波に飲まれるなよ! その手を絶対に離すな!」


甲板に戻ると、すでに波が押し寄せていた。甲板に着水した波から身を守るようにシルバやジジニア、ボートムを始めとして全員が中央に寄っている。かろうじて武器を構えているけど、こんな状況であいつの手下が襲ってきたらまともに戦えるはずがない。

多分、あいつは海の中から攻撃してくる気だ。そこならボク達が手を出せないとわかってて、こうして追い詰めようとしている。


【フィッシュランサー×6が現れた! HP 600】

【デッドロブスター×3が現れた! HP 820】


上半身だけが人間のドリドンに似た魔物が六匹、甲板に上がってきた。ドリドンと違ってこっちは全身が鱗に覆われている。それの後から追ってくるように人間の大人サイズのザリガニが飛び乗ってくる。


【オケアーノが現れた! HP 3610】

【帝王イカが現れた! HP 4730】


遠くで海水ごと盛り上がったと思ったら、この船の何倍あるかわからないイカが出てきた。その近くの海面から同じ要領で顔を出す海の蛇。あんなが暴れ出したらこの船なんて簡単に沈んでしまう。

これがドリドンの言うゲームか。おまえは敵討ちだといったけど、そもそも自業自得じゃないか。

魔王軍だか何だか知らないけど、どいつもこいつも命を何だと思ってるんだ。


「ドリドォォン! 勝負したいなら出てきなよ!」

「ドリドン様と戦いたければ、海にでも潜るんだな」


驚いたことに半魚人が喋った。ケラケラと嘲るように笑っている。この揺れる船上でもこいつらは平然として立っていた。いや、下半身が魚だから立っているという表現はおかしいか。

他の皆は相変わらず、戦うどころじゃない。波にさらわれないようにするのがやっとな状態だ。


「皆は船内に戻って! ボクが何とかするから!」

「し、しかしだな……いくら君の腕が立つとはいっても……」

「いや、ここは任せてみよう……。アバンガルド王国を襲った魔王軍の幹部を倒したのはあの子だ。

あの時だって誰も太刀打ちできなかったのだから、我々でどうにかなるはずもない。

どうか、賭けてはみないか?」


反論するボートムをシルバがなだめるように言い聞かせた。何の材質で出来ているのか見当もつかない槍を振り回して、半魚人が襲ってくる。こんなのに構ってる暇はない。こいつらと遠くにいる大きいイカ、まとめて片付けよう。


「ソニックリッパーッ!」


ソニックリッパーの斬撃が半魚人とザリガニを消し飛ばして貫通した。その勢いで十本もの足を振り上げて、攻撃に移ろうとしていたイカをも貫く。


【リュアはソニックリッパーを放った!

 フィッシュランサー達と帝王イカに428293のダメージを与えた!

 魔物の群れを倒した!】


胴体ごと消し飛ばすように切断された足がばらばらと海中に落ちて沈んでいった。暗くなったと思ったら、もう一匹の海蛇が大きく口をあけて船を飲み込もうとしている。遠くにいた時はわからなかったけど、かなりの大きさだ。

こいつもドリドンの部下なんだろうか、こんなのがいるんじゃ航海なんて出来るはずがない。

これからの為にも、何より今この瞬間の為にもその口を塞ごう。


【リュアはソニックリッパーを放った!

オケアーノに438781のダメージを与えた! オケアーノを倒した! HP 0/3610】


口を塞ぐどころか、そのまま開ききったかと思ったら裂けて破裂した。残された蛇の胴体が後ろに倒れるように海に沈んでいった。その勢いが激しく、波で船がひっくり返らんばかりになった。

それでなくても甲板には頻繁に波があがってきて、どっちが海だかわからなくなるほどひどい。

ボクも皆も頭から波をかぶり、全身が濡れている。


「ボートムさん、見ただろう?」

「あ、あぁ。任せよう……」


波がこないうちにボク以外の全員が船室へと避難した。とはいっても、これじゃそれじゃきりがない。

あの半魚人によるとドリドンは海の底から出てこないだろうし、当然あいつは倒さないといけない。

覚悟を決めるしかない。

奈落の洞窟でも、水の中に潜る事はあったけどかなり戦いにくかった。

やっぱり泳ぎは魚のほうがうまい。あの時はまだ低層だったから、そこまで息を止めていられなかったけど今はどのくらい持つだろうか。

でもボクはここである事に気がついた。ボクがいない間、誰がここを守るのか。

それに船そのものを攻撃されたら、あっという間に沈んでしまいそうだ。


「もう! 方法なんて思いつかないし考えている暇なんかない!」


ボクはその場で服を脱いだ。流されないように乱暴に着ていたものを船室に放り込む。すぐそこの通路にうずくまっていた人達は何か驚いていたけど、構ってる暇はない。下着一枚だけになってボクは海に飛び込んだ。


◆ 海の中 ◆


やっぱりというか、流れが激しい。普通に泳いでいたら、流されてもみくちゃにされるだけで何も出来なさそう。この剣だけは手放さないようにしないと。

バスタードソードが水中で使えるかどうかはわからない。もしかしたら錆びてしまうかもしれないけど、この戦いの間だけもってくれたらそれで問題ない。

ドリドンはどこにいるんだろうか。辺りを見渡しても暗い海中が広がるだけで何も見えない。

いや、いるのはドリドンだけじゃない。

さっきの半魚人や無数の魔物が餌を見つけたかのようにボクに突進してきた。


【フィッシュランサー×20が現れた! HP 600】

【デスシャークが現れた! HP 1200】


昨日見たキラーシャークに似た鮫の魔物も混じってる。さすがに水中に住み慣れているせいもあって、動きが速い。的確にボクを食い殺そうと大口を開けて向かってくる。水中で多少、動きが鈍くなってるけどこの程度の相手なら問題ない。一撃で斬り飛ばした。鮫の血が少しだけ水中で混ざり合ったけど、残りは消えてなくなった。

どこまで息止めが持つかわからないので下手に動こうとせず、その場に浮いて敵を待ち構える事にした。それでなくても向こうから、殺気満々でやってくる。

全部で20匹ほどいる半魚人が槍でボクを突き殺そうと必死だ。このまま相手にしたところで、次々と沸いてきたら面倒だ。あの方法しかない。

幸い、あの半魚人達は言葉を喋るみたいだし、それなら理解もできるはずだ。

ボクは構えもせず、その場で隙を見せた振りをして棒立ちで浮いた。

予想通り、チャンスとばかりにその槍がボクの体に突き刺さる。

いや、刺さってない。ゴムの玩具で体を突かれたのかと錯覚するほど、槍がボクに血を流させる事はなかった。

なんだこいつは、そう聴こえるようだ。

ボクを刺したいならせめて奈落の洞窟の深層にいたあの豹みたいな魔物の牙くらいじゃないと。

あの魔物は恐ろしかった、その前の階で拾ったどんな刃すらも通さなかった盾を簡単に食いちぎったし、実際にかじられた時は腕がちぎれるかと思った。

半魚人達は諦めたのか、ボクから離れて遠巻きから様子を伺っている。

ようやく実力差を理解してもらえて助かった。面倒な時はこれに限る。


その時、足に何か絡みついた。


あっと思った時には一気に海中の底まで引きずりこまれる。

下を見ると指の一本をタコの足ようなものに変えたドリドンが笑いながら、ボクを見ていた。


「この水圧にまで耐えて潜ってくるとか、正真正銘の化け物だな」


水の中でもあいつの声がはっきりと聴こえた。ボクが喋っても多分、言葉にすらならない。

あいつの技か何かだろうか、口の動きまではっきりとわかる。


「ま、それを期待してたんだけどなっ」


水の流れが変わった。あいつに近づこうと思ったボクを押し流すように弾かれたと思ったら、今度は海中全体がまるで生きているかのように渦状に海流が発生した。


【ドリドンはメイルシュトロームを放った!】


海流に海流が重なってもみくちゃにされ始めた。海流をものともせずに、ドリドンの触手がボクに接近する。触手による打撃がボクを容赦なく襲う。海流で流された先に触手、また流されて触手。

たまに巻きついてボクの動きごと封じようとしてくるけど、そんなものは引き千切るに限る。

それでも切られた触手はすぐに再生してまたボクに向かってくる。


「クックックッ、どうだい? 水中じゃ満足に戦えないだろぉ?

十ニ将魔の中にも、水中で俺に勝負を挑んで勝てる奴なんざいねぇ! 知ってるか? この世界の6割以上は海で出来ている!

生命の源でもあるこの大海を制するという事はすべてを制するって事だ!

どんな腕自慢でも、その様さ! それに息のほうは大丈夫かい? クックックックッ!」


この暗い海の中だっていうのに、あいつのテンションは異様に高い。でも心配してもらったところで悪いけど、奈落の洞窟で潜った時も最大で30分は止めていられた。今ならもっと長く潜っていられる。

あいつがあんなに自信たっぷりなのは、ここなら絶対に負けないと思っているからだ。

確かにこんなの予想もしていなかった。


――――ボクがここまで甘くみられていたなんて。


「ところで上の人間ちゃん達はどうなったんだろうなぁ? 俺の手下にでも殺されてっかなぁ?

船底に穴でも開けられて沈没するかもなぁ? 一人でも死ねばおまえはその命すら守れなかった!

ジュオの野郎の話を聞いた時にピンときたんだ! こいつは見ず知らずの奴の命すら、全力で守ろうとする甘ちゃんだってな!

どれどれ一人死ぬかな何人死ぬかなそれとも全員かなぁぁ! 楽しみだなぁ!」


こいつはそれをゲームと言っていたのか。それならもうこいつに対して情けだとか、そういう気持ちは必要ない。


【ドリドンは海中を高速に泳ぎ回った!】


海流をものともせず、ドリドンは弾丸のようにボクに突撃してくる。かわしてもすぐに向きを変えて同じように攻撃を行い、四方八方からドリドンが襲ってくる。そして移動中に指の触手を振り回して十個ほどの渦を発生させる。


【ドリドンはアクアハリケーンを放った!】


泡が渦巻いて高速で接近してくる。海流で身動きがとれず、もうここまでかな。なんてそんなわけがない。奈落の洞窟でも水中でここまで多彩な技を駆使して襲ってくる奴はいなかったから、少し意外だった。十ニ将魔ならあの三人と同じくらいの強さかな、なんて漠然と考えていた程度。それだけだ。

もうこの水中戦にも慣れた。もうこんな海流に流されてやる必要もない。

弾丸のように飛び交うドリドンを目指してボクは泳ぎ始めた。

余裕を見せてボクをいたぶっていたドリドンは追ってくるボクを見て、面食らった様子だった。


「なっ、なんだあの動きは……」


今まで笑っていた顔が一変した。

自分の力を最大源に発揮する為に得意な場所で戦う、重要な事だ。でもそんな奴とは子供の頃から飽きるほど戦ってきた。鉄すら溶かす溶岩の上で待ち構える魔物、鼻水すら凍る寒い場所で待ち構える魔物。

数えればキリがない。でもそんな相手なら、こっちも慣れるのが一番だ。

その上で勝負、これが当たり前だと思っていたからあいつの焦り様が理解できなかった。

水中では自分が一番強いとか言ってたけど、それってただ自分と同じくらいここで動ける相手がいなかっただけの話じゃないのか。


「て、てめぇ……!」

「はい、追いついた」


あいつの真似して喋ってみたけど、がぼがぼ言うだけでまったく喋れない。はい、おいついた。って通じたかな。まぁいいか。


【リュアの攻撃!】


バスタードソードの刃部分が触れる瞬間、ドリドンのサイズが大きくなったと共にその衝撃で吹き飛ばされてしまった。これはもしかして、と思った時には予想通りの展開になっていた。

定期船の何倍はあるかわからないほどの怪物。人間の上半身だけは残しつつも肌は白く、鮫がそのままくっついたような頭、指からはタコの足がそれぞれ生えている。下半身は魚のまま、異様な姿へと変わった。

他の三人の十二将魔と同じ要領でこいつも化け物になった。

人間なのかそうでないのかさっぱりわからない。でもただ一つ言える事は、少なくとも心は人間じゃないという事。ゲームで命を奪おうとする奴なんて化け物で十分だ。

この醜い姿がそれを表している。


【怒る大海原の暴主ドリドンが現れた! HP 31000】


「全部ぶっ壊してやるぜぇ! 人間も人間に作られた物も人間が食う物も人間が愛する者も人間が興味を持ったものも人間みてぇなものも全部全部全部全部破壊してやるッ!」


こいつの大きさに比べればボクなんて豆粒みたいなものだ、それくらい差がある。もし本気で暴れられたら、定期船どころか世界中の海が壊されかねない。根拠はないけどそう感じるほどの凶暴性、そして憎しみ。

そのタコ触手が放たれた時には手下の魔物まで貫かれ、あるいは締め殺された。

自分のボスをなだめようとする半魚人さえもその餌食になる。見境がない、そうとしかいいようがない。


「沈めてやる……あの船を沈めてやるぜぇぇぇ!」


巨体が海面へと向かった。どう見てもあいつは定期船を狙っている。

あいつが特に何もしなくても、海面からあの図体が出ただけであの船なんて転覆してしまう。

もちろん、そんな事をさせるわけがない。

ボクは上昇するドリドンと並んで泳いだ。まずは遠くにいってもらおう。


【リュアの攻撃! 怒る大海原の暴主ドリドンに7802のダメージを与えた! HP 23198/31000】


人間の胴体から下を軽く蹴った。かなり手加減したのにドリドンの巨体はものすごいスピードで遠くへ弾き飛ばされた。


「がはッ……! な、なんだとッ……」


【リュアの攻撃! 怒る大海原の暴主ドリドンに13730のダメージを与えた! HP 9468/31000】


飛ばされるドリドンに追いついた。そして今度は下に潜りこみ、さっきよりずっと強く蹴り上げた。

さっき以上のスピードでドリドンの巨体は海面へ向かっていく。後はそれにボクも追いつくだけだ。

ドリドンが海面から飛び出すと同時に盛り上がった海水が大きく波を作った。

海から空へ高く投げ出されたドリドン。

あの瞬間、あいつは得意の海から放り出された。


「オイ、まさかおまえ……」

「これだけ迷惑をかけたんだ、原因を作ったおまえが倒されたって皆にもはっきりわかるようにしないと」


ドリドンを追いかけるように海面から飛び出したボク。ドリドンが上でボクが下、空中に一瞬だけ止まっている状態はあの遠くにいる定期船からでも見えるはずだ。よく見えないけど、あの何人かの人影はボートム達だと思う。

船内にこもっていても魔物はやっぱり待ってくれなかったか。

やっぱり定期船は魔物に襲われていた。皆、無事でいてほしい。

でもまずはこれで終わりだ、ドリドン。


「こ、こいつ水中戦にも対応しやがって……ありえねぇだろ……」


【リュアはソニックリッパーを放った! 怒る大海原の暴主ドリドンに430018のダメージを与えた!

怒る大海原の暴主ドリドンを倒した! HP 0/31000】


最後まで言い終わる前にボクのソニックリッパーがその巨体を引き裂いて、消し飛ばした。

でもこれも一瞬の事で、ボクは重力によってまた海へと落ちていった。

少しの間だったけど、地上の空気が吸えた。最後のほうは少し息苦しくなってきたのでちょうどよかった。


◆ 定期船 ◆


「あ、あれはもしかして!」


ボートムが見たその光景は、見たこともない巨大な魔物が空中で軽々と誰かに一閃されている様だった。

その人影はすぐに海に落ちていったが、ボートムにはそれが誰かわかっていた。定期船を襲っていたフィッシュランサー達こと半魚人、魔物達は唖然としてその一部始終を見終えた。


「まさかドリドン様がやられた……?!」

「何かの間違いだ! あれがドリドン様のはずがない!」


それまでは優勢だった魔物側も、その事態を飲み込むと同時に戦意が低下していった。

しかし完全になくなったわけではない。獰猛なこの魔物達がその次にやる事といっても、一つしかない。


「人間ども、やってくれたな……!」


すでに満身創痍な者も多数抱えているこの状況。シルバやジジニアも、深手を負ってほとんど動けていない。あと少しリュアがドリドンを倒すのが遅れていれば、この瞬間まで彼らは生き延びる事が出来なかった。何匹かの魔物は仕留めたものの、多勢に無勢な上に実力は相手のほうが上。

ここまでよく粘ったとボートムらも内心、覚悟を決めていた。

定期船の周りを囲うようにして集まってくる魔物。船底を攻撃されなかっただけでも奇跡だと固唾を飲む壮年冒険者達。ここにいる誰もがリュアの帰りを待ち望んでいた。


「シルバにジジニア、あの子が帰ってくるまで生き延びられるか?」

「出来るかどうかではなく、やるしかない。ここまできて死ぬなどご免だ」


立つ事すらもやっとなボートムなりの激励だった。自分を奮い立たせ、なんとか戦意を保っていた。

その気迫にわずかに気圧された魔物達。少しの間、膠着状態が続いた。

そしてついに、定期船の周囲の魔物が先ほど遠くに見えた同じ斬撃で葬り去られた。

沸き立つ一同の目の前には確かにリュアが帰ってきた。海から顔を出して、魔物を牽制する少女。


「殺せぇぇ!」


やけになったフィッシュランサーの一人が叫ぶと同時に魔物達は戦いを再開した。

定期船の上が再び戦場になろうとした時、その魔物達を背後から貫くような光が遠方から放たれた。

海、船上とまだまだ数え切れないほどいる魔物達はその光の柱で次々と撃ち抜かれていく。

動揺する間もなく、その攻撃を放つ主を確認する間もなく魔物達はものの数秒で一掃された。

一瞬の事態を飲み込めないボートム達、そして海から上がってきたリュア。


「戻ってこれたぁ……皆、無事でよかった。ところで今のは?」


下着一枚のリュアよりも、その場にいる人間の興味は遥か遠方にいる船に注がれた。


「あ、あの船のマーク! メタリカ国だと?! なぜこんなところに……」


近づくにつれ、一目で把握したシルバ。

定期船よりも数倍の質量、鋼鉄のようなものに包まれた船体。

そこには一枚の銀色の翼がシンプルに描かれたマークがあった。

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