第346話 愚か者
◆ アバンガルド王都 跡地 ◆
「ようやく音声も繋がりましたね。ちょいと未完成な部分はありますが動作テストとしては申し分ないでしょう。ALEX改め”カマハルカ”、これから復興するメタリカ国にとって第二の目となる予定です」
「……何事か」
「文明を敵視していただけあって、やはり疎いのでしょうか。敵を倒すには敵を知るというのは、とても大切なのですが……」
「何をしたと問うておるッ!」
「多分説明してもおじいちゃんには理解できないので簡潔に言いますね。ここでのやり取りは映像をもってこの大陸内の一部に流れているんですよ。音声はたった今、繋がりましたけど」
アレックスじゃなくてカマハルカ、それがメタリカの新しいシステム。時間がないだの文句を言いながらも、しっかりやる事はやっている。”閃き”の天性だからこそ出来るのかな。どこから映してるんだろう。
「フォファ……つまり貴様は我が偉業を愚衆どもに伝えているわけか。良い! この神となったワシの威光がますます届く! 馬鹿な事を! 文明はどこまでも愚かよ!」
「わからないんですか? あなたという存在に多くの人が注目しているという事の意味が。つまりあなたという脅威は情報として伝わり、記録されるわけです。それはきっと後世にも語り継がれるでしょう」
「それが如何ほどの脅威となる? そもそも現時刻をもって人類に先などない」
「いえ、ここであなたが倒されてしまえば化け物として記録されるんですよ。時には子供に読み聞かせる絵本には化け物として登場し、研究機関では隅々まで研究し尽されるでしょう。人類の進歩の糧ともなりえますね」
「ワシが……倒される?」
【アボロはビックバンナックルを放った! 超越せし霊帝神ルルドに543321ダメージを与えた! HP 999456678/999999999】
「ぐぅッ……!」
あの万里の術を突破したアボロがついに一撃を浴びせる。小さなマーティの体に容赦なくめり込むけど、そこまでのダメージにはなってないみたいだ。”奇跡”で防げなかったという事は、なるほど。
「アボロォォォ! 死にぞこないが足掻くかッ!」
「どうやら貴様に起こる”奇跡”はこれまでのようだな。体を乗っ取ったところで、天性というものは完全にモノに出来ぬわけか。喜べ、貴様はサンプルとして役立ったようだ」
「ボクがあれだけ攻撃を浴びせたからね。それに”奇跡”はあくまで”奇跡”、ひ弱なマーティだからこそ何でも奇跡になったけど元々強いルルドに起こる”奇跡”なんてそんなにないんじゃないかな」
「そんな理屈が……!」
≪残る敵はあの少女の姿をした怨霊か。姿形はともかく、闘志は大したものだな≫
≪怨霊という表現は適切なのでしょうか?≫
≪太古の昔にくたばっておけばいいものを、未練がましく醜態を晒しているのだ。怨霊で問題ないだろう、ニースよ≫
≪まぁ私達も似たようなものですが……いつまでも妄執に駆られていないという違いがありますね≫
カシラムの王様とバルバス、それにニースかな。あっちも激しい戦いがあっただろうに、結構余裕がある。
ジーニアさんは情報が武器といっていたけど、これが聴こえることでルルドを確実に刺激しているのがわかった。なんだかんだ言いながら、自分がバカにしているヒトにあれこれ言われるのは我慢できないみたい。
「雑魚どもが好き勝手を! 死にゆくヒトが、哀れな事よ!」
「獣人の皆様もかつては復讐を誓っていましたが、今は人と向き合って未来へ進もうとしています」
≪オイオイ、リュアも難儀だな。あんな小さなかわいい少女を斬らなきゃいけないのか?≫
≪にゃんのほうがかわいいにゃん? かわいい……にゃん?≫
≪わかった結婚するから許して≫
「戦う事で結ばれた? まぁ、そういう方々もいますね」
セイゲルさんとマターニャはやっぱりついに結婚するんだ。いろんな女の子と付き合ってきたセイゲルさんにはいい薬だとクリンカは言っていたし、ボクもそれでいいと思う。
≪ルルドってやつ、すげぇ魔力だな! ハストのじいちゃんよりやばい……でもリュアねーちゃんの敵じゃないだろ?≫
≪問題ない≫
≪よくわかんないけど、トルッポさんがそういうなら問題ないんじゃない?≫
≪ま、ルトナにはわからないよなー≫
≪むしろ、いつまでもワシのような老いぼれが頂点呼ばわりでは困る……人は成長するものじゃ、それを否定するのがあやつよ≫
「出会う事で成長した方々……」
≪皆の者! 今、世界を滅ぼさんとするあの邪悪なる魔術師を倒す者の名はリュア! かつて闘技大会決勝戦にて、このグリイマンが相手をしてやったのだ!≫
≪ホントか!?≫
≪あの瞬撃少女と戦ったのか……それで生きてるって事は金武装グリイマン、伊達じゃないな……≫
≪問題は奴には装備が足りてない……かつては私が有用な装備を与えたものだがな……≫
≪俺が打ってやったディスバレッドがあるんだから負けるわけねぇだろ! てめぇ、ぶっ殺してやる!≫
≪な、なんだコイツは! いぎゃぁぁぁ!≫
「よくわからない人と、支えた人……」
グリイマンさん、しばらく見ないと思ったらカシラム国にいたんだ。ハンスさんに襲われているっぽいけど、デタラメな事言ってるし同情はしない。
「雑魚どもめ……! 己の文明で世界を汚すばかりか、声高々にワシの偉業を否定するか!」
カマハルカを通して聴こえる皆の声は確実にルルドを怒らせている。マーティの体を手に入れて、ボクも怖くないとまで言い切ったのにうまくいかなくて腹を立てているんだ。
≪そこにいるのだな、リュア。村は守り切った上に皆も無事だ。だから余計な心配はせずに思いっきり戦いなさい。母さんも待っている≫
≪パブロだよー! クイーミルから避難してきたし、無事に終わったらまた店に食べにくるよー! 特別メニュー超大盛りフェアやるよー!≫
「超大盛り?! せめて5倍増しだよね、パブロさん!」
「聴こえてないと思うよ……」
お腹は空いたし魅力的だ。だけどこれでクリンカが張り切ってくれるなら、これから繰り出すボク達の攻撃にも磨きがかかるはず。
「ここにいる英雄が帰るべき場所にいる人達……リュアさんの強さは彼らとの出会いによって、より育まれました」
「フォファッ! 英雄だと? 笑止! そこにいるのは英雄ではない! 英雄とは勇者一族のように生まれながらにして求められ、救う義務を課せられ、葛藤で揉まれながらも救える者の事! 断言する! そこの田舎娘に英雄の資質などなし!」
「この期に及んでそうまで言い切るか。貴様らの一族を含めた、幾多の英雄を叩き伏せたこのアボロですら敵わなかったのがあの娘だ」
【超越せし霊帝神ルルドの風霊の咆哮!】
「風の精霊よ! 自然界による鉄槌を下すのだ!」
【超越せし霊帝神ルルドの地霊の踊り!】
「大地の精霊よ! 喜びに打ち震えよ! 己を踏み締める咎人を葬れる歓喜を! そして……猛るがいいッ!」
地面が断続的に爆発したかのように上下に揺れ、ここら一帯をかき乱すかのような暴風。ストムエルの暴風に匹敵するほどの嵐、そして地震。更に追い打ちをかけるように、遥か彼方から何かが押し寄せてくる。
「まるで天災が一気に押し寄せるようですね……霊帝……その名のもう一つの意味。自然界における”精霊”という概念を操る事に成功した、歴史上でも例を見ない力に由来するものです」
悠長に喋っているジーニアさんは絶対に平気だ。何故かっていうとあの人はここにはいない。よく見たらホログラフだから。それがわかってるから、いくら怒ってもルルドも攻撃しなかった。どこにいるのか知らないけど呑気だよ。
「貴様が英雄であるならば救ってみるがいい! 押し寄せる自然の猛威が多くのヒトの命を吹き消すであろう! フォファファファファ!」
【リュアはソニックリッパーを放った!】
【クリンカはエンジェルリカバーを唱えた!】
思いっきり跳び、大津波が見える高さになってから体を回転。今のソニックリッパーはボクを中心に円を描くように放たれた。これから皆の命を奪う予定だった押し寄せる大量の水はソニックリッパーが飲み込み、かき消した。
それだけじゃなくて、ボクがその気になれば大陸の端くらいまでならそれを届かせることが出来る。つまり遥か遠くの津波も同時に”破壊”できたはずだ。でもさすがに世界の果てまで、とはいかないや。
「お前の脅威は万里じゃない」
地面の揺れも収まっている。クリンカが大地の状態を元に戻した、つまり”再生”したんだ。地震が起こらない、正常な大地へと”再生”できるまでにクリンカは成長している。
「ふぅ……すぐに収まったけど、他の場所は大丈夫かな? リュアちゃんのソニックリッパーなら平気だろうけど……」
「大丈夫、もうあそこにいる神様が何をしても無駄だよ」
「破壊と……再生……理ではない……概念を超越している……!」
自分が超越したと言っておきながら、ボク達が超越していると認めた。クルクル回っている文字のリングがどこか頼りなく、勢いを失くしたように見える。
【超越せし霊帝ルルドの陽光の術! 天からのすさまじい日差しが大地を照る!】
【天からリュアをめがけて陽光波が放たれる! リュアには効かなかった!】
【超越せし霊帝ルルドの神刀両断!】
「光の速度に達した陽光……」
「なに? なんて?」
上空から来た火のレーザーみたいなのは熱くもかゆくもない。今振り下ろされたこの大きな剣は、ひょっとして勇者の剣かな。ディスバレッドとこの勇者の剣は何か因縁があるのか、互いに目に見える白と黒の気を放ってけん制し合っている。こんな形で決着をつけていいのかわからないけど、使い手を選べなかったあっちが悪いんだ。
「グ、ググ……まさか……」
「ここはディスバレッドの勝ちでいいよね」
【聖剣ホープティングは粉々に砕け散って破壊された!】
「何故かァァァァァァッ!」
ルルドが照らした光が綺麗な破片に反射して、キラキラと光りながら舞って落ちていく。勇者の剣、思えば出会いはひどかったし持ち主はもっと最悪だった。それを考えれば少しは胸の内が晴れる。ディスバレッドは満足したかな。
「つ、次の術だ! 呪いか、末代まで影響を与えるほどの……いや、体が腐り落ちるあの術か……ええいっ!」
【超越せし霊帝ルルドの呪生の術!】
【超越せし霊帝ルルドの腐老化の術!】
【超越せし霊帝ルルドの錯乱の術!】
【超越せし霊帝ルルドの性感の術!】
一気に何かがボクの体を襲うけど関係ない。何回も言ってるのにどうしてわからないんだろう。
【リュアには効かなかった!】
「術が! ワシの術がすべて通じぬぅぅ! 幾百年もかけて編み出したはずが!」
「ジーニアさんのおかげで改めてわかったよ。確かにボクは奈落の洞窟で強くなったけど、それだけじゃダメなんだ」
この場にいる人達、ジーニアさんやプラティウ。クリンカ、エルメラ、メリアさん、アーギル。そして回復して続々と集まってきた皆。
「こちらも数を集めた! 拙僧を含め、再戦は可能だ!」
「その必要はないっしょ」
「えぇ、五高の私達なんて足手まとい」
ムゲンさん、シンブ、ユユ。見覚えのある冒険者やそうでない人達がルルドという一点に視線を集中させている。まだ完全に回復していないものの、槍を杖替わりにしながらもリッタがカークトンさんの腕を肩にかけて背負っていた。
「奈落の洞窟を出てからの経験……皆との出会い。全部が強さの糧だったんだ。それがボクの心を強くして……今は何の迷いもなくここにいる。ルルド、お前はずっと一人だったし今もそうだ。自然すら味方じゃない、単に思い通りに操っているだけ。何百年かけて術を生み出そうが計画を練ろうが、一人でやってきた事なんてそんなものだよ」
「あなたは文明を否定するけど、悪いところしか見てないだけ。ダメな部分もあるけど、それはこれから学んで直していけばいいの。人と人が繋がって協力して……悪いところに気づかされる。絶望して殻に籠りそうになったところで大切な人に手を差し伸べてもらえるんだから!」
「小生意気な……。瓦解した王都を見よ! ヒトが築き上げた文明とやらもこの有様よ! 何百年かかろうがその程度!」
「そんなものはまた作り直せばいいんですッ! 失敗しても、道を踏み外しても皆がいればやり直せるんです!」
リッタのその叫びがルルドを一瞬だけ停止させる。まさか思いもよらない相手に言い返されるとは思わなかったんだと思う。ボクに術を全部防がれて、もうほとんど打つ手なんかない。ルルドだって気づいているはずだ。
「マディアス……マーティが何度も人間の文明を壊しても、人間はここにいるよ。何度も作り直して、親から子供へ引き継いで……それでも立っているんだ。周りを見なよ、ルルド」
「何を……」
「お前は一人でボク達は一人じゃない……ボク達はお前の大好きな自然とも共存していける!」
【リュアはディザルトスピアを放った! 超越せし霊帝神ルルドに243359085のダメージを与えた! HP 756097593/999999999】
「ぐぅぁあぁッ!」
【万里の術を破壊した!】
もう奇跡なんか起こらない。いや、今はボクの破壊が上回っている。なんで奈落の洞窟の時は破壊を自覚できなくて、しかもうまく使えてなかったのか。今、わかった。天性は心なんだ。世界最強の男が生まれた時から”勝利”で生きてこられたのは、何の迷いもなくあんな人間としてすでに出来上がっていたから。
気質、性格。まだうまく言い表せないけど、ボクは結局非情になり切れてないところがある。人は完全に殺せないし、何かを壊すという事に向いてないのかもしれない。なんでそんな”破壊”がボクに宿ったのかはわからないけど。
「おぉ! 243359085! すさまじいダメージ!」
HPとかいう数値だけじゃなく、どうやらボクがあいつへ与えたダメージまで数値化して表示している。皆にもすごさは伝わったのか、悲鳴にも似た歓声が沸き上がった。
「ルルド、さっき確認したけどお前は人じゃなくて神なんだよね。だったら心置きなく殺すよ」
【超越せし霊帝神ルルドの無限再生術! ルルドのHPが全回復した! 999999999/999999999】
「は、破壊の力など……まだまだ、奇跡が、起こしよるわぁッ!」
やっぱり、それでもかろうじて対抗されているのが悔しい。ディザルトスピアなら完全に破壊出来ると思ったのに。これはかなり時間がかかりそう。
「クリンカ。お腹も空いたし、早く終わらせよう」
「アレをやるんだね?」
同時に頷き、ついにあれをやる時がきた。しかも、うまくいけば確実にマーティを救える。ボクが出せる最高威力の技、ディザルトインパクトを今こそ放つ。ちょうど宙に浮いているから、他に何も巻き添えにしないで済む。
ソニックスピアを放つ時と同じ構えで、ディスバレッドの先端をルルドに突きつける。少しの溜めと同時にクリンカが”再生”の準備。タイミングはバッチリだ。この日の為とは予想できなかったけど、時間を見つけては何度も練習したんだ。
「一撃で魂ごと破壊してやるッ!」
【リュアはディザルトインパクトを放った!】
竜神すらも倒したソニックインパクトに破壊の力が加わり、ルルドが憑依したマーティの体ごと包む。ただし、あの時とは違って無駄に広範囲じゃない。範囲を絞る事で反動を最小限にして、威力を凝縮。光よりも速く、この世の誰にも認識なんか出来ない。破壊という結果以外は残さない。
【超越せし霊帝神ルルドに999999004のダメージを与えた! HP 995/999999999】
「ファ、ファ……惜しかった、ようだ、な……!」
【超越せし霊帝神ルルドの無限再生術! ルルドのHPが全回復した! 999999999/999999999】
「奇跡の賜物よ! これにて証明された! 如何なる者であろうと、この神には」
【超越せし霊帝神ルルドに999999504のダメージを与えた! HP 495/999999999】
「な、に、ブ、フッ……!」
あのマーティの体だけにちょっとかわいそう。大丈夫、すぐに開放してあげるから。まさにもう一声。
「言ったよね。魂ごと破壊するって」
【超越せし霊帝神ルルドの無限再生術! ルルドのHPが全回復した! 999999999/999999999】
「何の――――」
【超越せし霊帝神ルルドに999999997のダメージを与えた! HP 2/999999999】
「………ッ!」
もう驚きの声さえ上げられない。なんで自分の体が破壊され続けるのか、たった一発のはずなのに。そんな風に驚きたいんだろうけど、それも許さない。
「次で終わりだね」
「アァァァァァァァァァァッッッ!」
【ルルドの魂がマーティの体から抜け出した!】
マーティから沸騰するヤカンの煙みたいに勢いよく何かが飛び出してくる。ルルドがマーティの体を捨てて逃げるつもりだ。魂の状態ならエクソシストでもない限りはダメージを与えられない。逃げるか、それとも誰かに乗り移られでもしたら終わりだ。
「か、かくなる上は……!」
【永久の邪霊ルルドが現れた! HP 0】
マーティに憑依した時はきっと、ボク達に気づかれないように煙上になって地面から忍び寄ったんだと思う。今は焦っているのか、そんな事をする余裕もない。
魂だけになったルルドはよぼよぼのおじいさんだった。皺だらけで全身がやせ細り、瞼が重そうに目を覆おうとしている。90歳以上、下手したら100歳くらいのおじいさんに見えた。
「それが本来のルルドなんだね。術で若く見せようが体を乗っ取ろうが、魂は嘘をつかない。それよりやっとマーティの体から離れてくれてありがとう」
「馬鹿めが……! むしろこちらが好都合よ! 霊帝のワシが魂の状態となったのは切り札ですらある! 集えッ!」
【永久の邪霊ルルドの元に怨霊が集まる! 永久の邪霊神ルルドが現れた! HP 400000/40000】
「詰めが甘いようだな! 小娘なくとも”奇跡”はすでに我が物よ! 大陸に怨霊蔓延る限り、ワシは不滅! これこそが霊帝神の力!」
「ボクが魂ごと破壊するなんて言ったからビックリして出てきたんでしょ。マーティの体を捨てて逃げられたと……」
【永久の邪霊神ルルドに999999990のダメージを与えた! HP 0/400000】
「思い込んでいた」
もう無理。どんな姿になろうがどんなに再生しようがどこに逃げようが、破壊という結果は絶対に残す。また怨霊を集めようが同じ。
【永久の邪霊神ルルドに9999999999のダメージを与えた! HP 0/400000】
「おおっと、ついにダメージがカンストしました! カウンターストップ! 表示限界はここまでです!」
【永久の邪霊神ルルドに9999999999のダメージを与えた! HP 0/400000】
「カン、スト、だと……まだ、まだ!」
【永久の邪霊神ルルドに9999999999のダメージを与えた! HP 0/400000】
「カ、ん、すと……だ、と!」
「魔法でも何でも、一度放った攻撃は永遠には続かない。だけど今は違う、消える炎がもう一度燃え上がるように……ボクの攻撃が”再生”しているんだよ。破壊という結果を残すまでね」
「”永久”の霊帝にふさわしい最期なんじゃないかなぁ……?」
集まる怨霊も底を尽きたのか、魂のルルドは塵になりつつある。頭の部分だけがおぼろげに漂い、まだこの世を未練がましく見つめている。だけどその表情もすぐに歪む。微笑するボクとクリンカが目に入った途端の事だった。
「勝て、ぬ……何度、転生しようと、憑依しようと、破壊と、再生、こんなものが、あっては!」
【永久の邪霊神ルルドに9999999999のダメージを与えた! HP 0/400000】
「表示上はカンストしていますが、実際のダメージはどうなんでしょうねぇ。底が知れません……」
「か、かんす、と、とは……」
【永久の邪霊神ルルドを倒した! HP 0】
「かんすとっぷゥ……フゥアァァッッ!」
【永久の邪霊神ルルドを破壊した! HP ―】
カンスト、カウンターストップ。ジーニアさんが何度も呟くその言葉は、なんだか妙に親近感が沸く。ルルドの断末魔が、まるで戦いの終わりを告げる合図に思えた。
◆ シンレポート ◆
どれだけ つよかろうが どいつも こいつも きづかないのです
はかいと さいせいを てきにまわしては いけないことに
そのてん るるどは さいごのさいごで みのほどを おもいしっただけ
かしこいのです
しかし るるどは なぜ あんなに しぜんがどうとか こしつしていたのか
これは しんの おくそくですが ゆうしゃいちぞくに せかいを すくうぎむが
かせられていて そのしゅくめいから のがれられないとすれば
るるども れいがいではなくて せかいをすくうという こんていは
ほかの ゆうしゃと おなじだったように おもえるのです
だとすれば るるども ゆうしゃのちに あらがえなかった
ううむ なんて のろわれた ち
ともあれ めでたく かんすと かんすとっぷ!
これにて れぽも おわり
え おわり?
ま まぁ ながかった しんの しごとが おわったのです
うん? なんだか めもとが ゆるゆる
なんで しんは なきそうに なってるですか




