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第337話 激動の天地 その1

◆ 天界 ◆


 空は薄いピンク色で雲がまったくない。足首くらいの長さの草が延々と生えていて、デコボコもなく地の果てまで続いている。空気はかなりおいしい。一見、天界だと言われなかったらピクニックにでも最適かなと思う。

 だけど異様なのは見渡す限り草原。このまま寝っ転がって眠りたくなるくらい、のどかな風景だ。ここで絶対に油断はしない。見た目は静かでも、すぐに異様な場所だとわかった。作られたかのような平らな草原、花の一つもなくて草ですら同じ高さで規則的だ。


「ここ、天界だよね? どっちへ行けばいいんだろう……」

「不安だよね。思えばクリンカと一緒に行ったダンジョンってパブロさんの依頼の時にいった洞窟か、浅いフロアの奈落の洞窟くらいだもの」

「グランドヘイト監獄も行ったじゃないー」

「あ、あそこはダンジョンなのかな……」

「あと幽霊船やミストビレッジも! 名前すら忘れてたでしょ?」


 変なところでムキになる。名前すら、の部分が引っかかるけどなんか危ないから触れないでおこう。それにしてもなつかしい。確かに幽霊船はクリンカの再生の力を初めて発揮した場所だっけ。クリンカが大きな一歩を踏み出せた場所だった。


「ミストビレッジはAランク昇級試験の時だよね。変な幻覚まで見せつけられてちょっと大変だったっけ」

「リュアちゃん、泣いてたよね。抱きしめて慰めてあげたの覚えてるもん」

「泣いてないよ?」

「それも忘れちゃったの? こんな風に抱きしめたでしょ」


 クリンカがぎゅっとボクを後ろから両手で包んで、体を押し付けてきた。柔らかい胸の部分を当てられて、クリンカってこんなに大きいんだと再認識する。胸なんて戦いの邪魔でしかないと思っていたけど、クリンカが男の人からちやほやされる原因の一つでもあった。町を歩いていても、何人かの視線がそこにあるんだもん。腹立って睨みつけたら逃げていったけど。


「思い出した! 思い出したよ!」

「でしょ?」


 クリンカはこうやって体を含めて成長したけどボクは何か変わったかな。自分のものを見ても、まったくわからない。何度か手を当てているうちに、小さくないと思いこませている自分がいた。


「さ、さて。進まないと……」


【天上の番鎧獣が現れた! HP 84600】


 地平の彼方から猛スピードで四足歩行の何かが接近してくる。胴体には鎧をまとっていて足は白いふさふさの毛。顔は猿みたい。なんだかバランスの悪い魔物が飛び跳ねながら、前足で踏み殺そうとしてくる。


【リュアの攻撃! 天上の番鎧獣に5654335のダメージを与えた! 天上の番鎧獣を倒した! HP 0/84600】


「ビックリしたなぁ」


 姿を確認してから多分3秒もかかってないと思う。隙だらけだったから、前足がボク達に到達する前にお腹ごと斬り消してやった。何もない場所だと思ってたのに、彼方からあんなのが来るなんて。ほんの数秒でここまで来る素早さ、地上でもあまり出会えないくらい強い魔物だと思う。


「な、なんだろうね今の……」

「天界の魔物としか……。あれでも魔王軍の十二将魔くらいの強さはあるし、メリアさんが言ってた通りだ。ここは普通じゃない」

「でもさすがリュアちゃんだね。もうホントに怖いものなんてないんだもん」

「そんな事ないよ。今でもここからマディアスのところへ行けるかどうか不安だし……」

「とりあえず、この草原を抜けようか」

「どこへ向かえばいいかな?」

「私達の世界みたいに、人がいる場所があればいいんだけどね」


 天界もボク達の世界と同じく、人がいるというのは考えなかった。空から見上げたほうがわかりやすいという事で一度クリンカに変身してもらう。


「うわぁ……どこまで続いてるんだろう」


 見下ろした景色は、やっぱりどこまでも草原だった。これを見ていると、ここは本当に天界なのか不安になる。メリアさんを疑うわけじゃないけど、ボク達は天界について何も知らない。もしかしたらボク達が考えもしないやり方じゃないと進めないのかもしれない。奈落の洞窟だってそういう場所だったし、ましてやここは違う世界。

 だけどここで恐れていたらダメだ。ここにはクリンカがいる。ダンジョン攻略の先輩として、ここはボクがリードしなきゃ。


「リュアちゃん、気を張らなくても大丈夫だから」

「えっ……別にボクは」

「背中を掴む手に力入ってるよ。私、足手まといになるつもりもないし何より約束したでしょ。2人で背中を合わせて戦おうって」

「……またボクが何とかしなきゃって思っちゃったよ。ごめんね」

「いいの。むしろここで私が頑張ったらリュアちゃんを安心させられるチャンスだもの。天界、ドンと来い!」


 速度強化魔法のおかげで速い。空を切り、大陸を横断する速度で草原の上空を進む。心のどこかでボクはまだクリンカを守るべきものだと捉えているのかちょっとショックだった。こんなにも速く、強くなったのに。

 多分、自分の強さに自信を持ちすぎたからだと思う。奈落の洞窟を一人で過ごしたのはボクにとって誇りだったけど、それは逆にクリンカすらも置いてきぼりにする経験だった。もしあの時、クリンカと一緒に過ごして強くなっていたら。ボクの中にあるほんのわずかな不安も消えたかもしれない。


「仕方ないよ。私は確かに強くなったけど、リュアちゃんには及ばないもの。なんで私みたいなのが瞬撃少女の相方なんだって陰口叩いてる人がいるのも知ってたし……」

「誰がそんな事いったの!」

「け、結構前の話だよ。それに妬まれるだけリュアちゃんがすごいって事だからね」

「そんな風に言われながらも、ボクといてくれたの?」

「今では誰にも文句を言わせてないよっ!」


 照れ隠しなのか、はぐらかされる。そういうところはあまり考えた事がなかったし、ボクとしては真摯に共に歩んできたつもりだった。お互いわかっていたつもりでわかってない。結婚して浮かれていたけど、まだまだボクの知らないところで傷ついていたんだ。

 

【天上の破滅竜が現れた! HP 159000】


「幼い頃は何とも思わなかったけど……一緒にいるうちにね。女の子同士なのにいいのかなって思えるようになってきて」


【リュアはソニックスピアを放った! 天上の破滅竜に8004912のダメージを与えた! 天上の破滅竜を倒した! HP 0/159000】


「え……」


 変なドラゴンが遠くからブレスで攻撃しようとしてきたから、その大口にソニックスピアを叩き込む。剣を持った片手を降ろしつつ、ボクもクリンカの言葉にドキリとした。


「魔王軍襲撃の後……アバンガルド城で初めてリュアちゃんに抱きしめられた時にね……。あの頃からかなぁ。ずっと一緒にいたいって強く思えるようになったのは……」

「ボクもだよ……。なんだかドキドキしちゃってさ。後ろめたいような感じもしたし……」

「実際ね。私達、女の子同士だしいろいろ言う人もいたよ。それもあって心のどこかで距離を置こうって考えた時もあった……」


【天原の霊鳥が現れた! HP 484000】


 また一つショックを受ける。クリンカがボクと距離を置こうと考えていた時があったなんて。でも思い出してみると、ハンターネストの時がそうだったかもしれない。クリンカが記憶を取り戻した時だ。セイゲルさんのお父さんを殺したと思いこんでいたクリンカが、ボクから離れていった。あの時ばかりは心が締め付けられる思いだったし、二度とあんな経験はしたくない。

 それ以前からもクリンカはいろいろ言われていたのを知っていたんだ。ボクよりもずっと前に、女の子を好きになるという事への違和感を持っていた。


「嫌だったけど、ドラゴンズバレーで記憶を取り戻した時……言ったよね。嫌だからって目を逸らしていると、大事な事も見逃すって」


【リュアはソニックリッパーを放った! 天原の霊鳥に5143032のダメージを与えた! 天原の霊鳥を倒した! HP 0/484000】


 青色の綺麗な鳥になんとなく見とれていたら、翼を広げて雷を纏い始めたから先手を打った。降ろしていた片手を振り上げるようにして斬撃で一撃。せっかくクリンカがかわいいのに、頼むから邪魔しないでほしい。


「あそこでリュアが抱きしめてくれたからこそ、私はここにいる。この翼が生えた時は嫌でしょうがなかったけど……これがあるからどこまでも羽ばたいていけるんだもん」

「アハハ、ボクも乗せてもらってるからね」

「それだけじゃなくて……。この翼をくれたのはリュアちゃんだよ、ありがとう」


 加速してこのつまらない草原を抜けようとしてくれている。その風を受けながらもボクのほうこそ、クリンカにもらったものを考えていた。


「そういうクリンカは文字の読み書きできないボクを救ってくれたよ。あそこでクリンカが助けてくれなかったら、新生魔王軍みたいになる可能性は十分にあったんだよ……」


 クリンカは照れて何も言えないのか、代わりに更にスピードを上げた。クリンカの翼はイカナ村の人達がベルムンドの実験体にされた影響で出来たものだ。ドラゴンの細胞が残っていて、それがクリンカに表れた。不幸の連続だったけど、今はこうして翼を広げている。どんなに辛い目にあってもそれを糧に出来るのは紛れもない強さだ。これから先、何が起こっても力に変えてやる。


「ね……。草原、何か変じゃない?」


 決意したところで、早速何かが起こった。平らだった草原が波打ち始めて、まるで海みたいになってる。それが激しくなるのは何となく予想出来た。波がどんどん高くなり、クリンカドラゴンが飛んでいる位置にまで届きそうだ。


「ク、クリンカ! もっと高く飛んで!」

「間に合わないかも!」


 草を飲み込んだ土は完全に水になりきっている。自由な動きをした大地が高波になり、完全に荒れ狂った。


「甘く見てた! 敵は何も魔物だけじゃなかったよ!」

「リュアちゃん! ソニックリッパーで土を斬り飛ばして! 私のブレスじゃ効果ない!」


 襲いかかる土の波を斬り消し、クリンカが猛スピードで進む。進むといってもどこへ向かっていいのかもわからない。魔物の攻撃じゃなくて自然現象なら、ボク達がいくら脅かしても無駄だ。ここは草原なんかじゃなかった。土の海がたまたま静かなだけだったんだ。


「もうキリがないよ。いっそ、ここら全体を消し飛ばして……」

「いくらリュアちゃんでも、どこまで続いているかわからないここを全部消し飛ばすのは時間がかかりすぎるよ……。それよりなんだか急に喉がかわいてきた……」


 原因はすぐにわかった。いくら波を消し払っても、目に見えない小さい粒状のものがそこら中に飛び散るんだ。その証拠に、腕をさすってみるとザラザラした感触がある。肌が乾燥していて、土の粒そのものをいじると更に指までカサカサしてきた。


「この土、水分を吸っている……このまま浴び続けるとまずい」

「……だったら私が何とかするね」


 クリンカが乗っているボクごと、再生の光で包む。砂によって奪われた水分を再生しているんだ。ボクはある物を壊す事が出来ても、ないものは生み出せないし治せない。ボクが土の波を破壊して、クリンカが土の脅威によって奪われたものを再生する。

 小さい粒までは想定していなかったから、今度はもっと念入りに破壊する。体を回転させて風を起こし、完全に砂を寄せ付けない。クリンカの背中の上でこれをやるのはちょっと大変だけど、クリンカだから問題ない。クリンカの背中だから出来たんだ。


「クリンカのおかげで安全に進めそうだよ」

「リュアちゃんがいなかったら、ここで死んでいた」


 お互いのありがたみを感じ取れるのも、こんなデンジャーレベルで計れないムチャクチャな場所に来たからだ。どん底から這い上がって出会ってここまで来たボク達に怖いものなんてない。

 遠くで砂煙を上げて、何かが首を覗かせていようとも関係なかった。城ごと飲み込めそうな超巨大なヘビが黄金の目を動かし、舌先をチロチロさせている。


【濁竜が現れた! HP 1670000】


「もしかしたら、ここはあいつの縄張りなのかな。すごいなぁ、竜神より大きいや」

「敵意がないといいんだけどね……」


 クリンカの心配をよそに、ヘビは完全にボク達を見ている。口をがばっと開けた直後、一瞬で間合いを詰めるようにして迫ってきた。多分ヨーツンガンドよりも速い。あれが町を飲み込みながら移動するとしたら、こいつは大陸を食べながら移動する。そのくらいの差だ。


「遅いよっ!」


【リュアはソニックスピアを放った! 濁竜に7146048のダメージを与えた! 濁竜を倒した! HP 0/1670000】


 頭を突き消し、残った胴体が落ちる衝撃に巻き込まれたくないから更に上に逃げる。さすがにあの大きさだし、顔ごと全部消すのは無理だった。残った額や下の牙の破片が次々と落ちて土の海に還っていく。


「やったぁ! さすがリュアちゃん! 好き!」

「ボクもクリンカが好きだよ!」

「好き!」

「好き!」


 こんな環境のせいか、なんだか変なテンションになってる。ようやく土の海が収まってきて、風景が変わったからかもしれない。クリンカの高度がどんどん落ちていっているのに、ボク達はお互いを好き好き言い合っていた。


「好……き……重い……」

「重いね……」


 ついには地上に落ちてしまった。草原が終わって次は草があまりない岩場。茶色や紫色をした不吉な岩々がボク達を出迎えてくれる。そんな場所でボク達は互いに重なり合ったまま立てないでいた。


「体が重い……これって彗狼旅団のグラーブがやっていた重力魔法みたい……」

「ねぇリュアちゃん、私としてはもっとこのままでいたいんだけどそろそろ進まないと……」

「だってすごく重いし……グラーブの魔法なんて比べものにならない……」

「本当に? 全力で立とうとしている?」

「全力だよ。クリンカこそ、本気出してる?」

「出してるよ!」

「ほんとー?」


 草原海の次はとてつもない重力の岩場。どれだけ広いかもわからない天界を当てもなく彷徨っていて本当にマディアスの元に辿り着けるのかな。そんな不安はあったけど、ボクとしてはしばらくこのままでいいかなと内心思い始めている。やわらかい。


◆ アバンガルド王都 外 ◆


【鋼天使テッキエルが現れた! HP 32500】


「うぬらッ! 心して聞けッ! 我こそは守護天人に仕えし賢天使が一人ィ! 鋼天使テッキエルよ!」


【醜天使ブサイエルが現れた! HP 23100】


「お、お前ら、私を醜いと感じたな? デュフッ! 取り繕っても無駄だ……ビュプフッ! プピュッ!」


【天界兵達が現れた! 平均HP 3200】


「あれが人族! 見るからに儚き命よ!」

「女子もおるでよ。天界に連れ帰り、妾としよう」

「それは良い案じゃ」

「帰れば宴じゃな、飲めや歌えや踊れや舞え」


 メタリカ国から派遣された無心駆動隊(ハートレス)の助力もあってか、第一波は凌げた。城壁の防備を固めて何としてでも王都内への侵入を許さず、上空から降りてくる軍勢には無心駆動隊(ハートレス)と遠距離攻撃に長けた冒険者と弓兵隊。更にはメリアさんとエルメラさんのおかげか、こちらの被害はまだ出ていない。

 一見して優勢に思えるけど、それもここまで。今まで退けたのは多分、私達の世界で言う斥候部隊だ。空や地上にはおびただしいほどの天界兵達。そして城壁の外には一風変わった翼人がいる。明らかにあれらは別格だ。メリアさんが言っていた聖天使の位を持つ”守護天人”じゃないというのが唯一の救いか。あのゼイエルクラスとなると私達の手に負える相手じゃない。


「エルメラさんとメリアさんには本当に感謝しています。それにリュアさんのネメアちゃんにまで手伝ってもらっちゃって……」

「いえいえ、リッタさん。むしろ感謝しなければいけないのは私のほうです」

「どういう事ですか?」

「リュアさんとクリンカさんには本当に大切なものを頂きました。私、この時代に覚醒できてよかったと心から思っているんですよ」

「そうですか……それなら私と同じですね」


 長話をしたいところだけど、そんな暇はない。ここにはリュアさんに貰ったものがたくさんあって、今はそれを守らなきゃいけないんだから。

 リュアさんがマディアスを倒せば、この戦いは終わる。その間くらい踏ん張れなくて何が人間だ。あの人におんぶに抱っこじゃいけない。私達はこの戦いを通じて成長しなきゃいけないんだ。


「心配しなさんな、リッタちゃん。このエルメラちゃんという豪華客船がいれば、アンタ達がわざわざ小船を出す必要なんてないのさ」

「はい、とても頼もしいです……」

「あれぇ? なんか調子狂うな?」

「え? 何か変な事言いました?」

「もっとこう、例えば『エルメラの豪華客船なんて大きすぎて逆に沈むんじゃない?』とかさ」

「そ、そんな失礼な事言いませんよ!」

「そう? まぁそうだよねっ」


 このエルメラさんは正直、調子が狂うけど悪い人じゃないのは確かだ。メリアさんと違って緊張感がないけど、不思議と頼れる。だけど本当に長話をしている場合じゃない。


「いいか! 手筈通り第一、第三、第五は後方支援に回れ! 前衛は第二、第四がもたせる! 上空からの敵にはあえて構うな! 地上から攻めてくる敵に集中しろ! なんとしてでも王都には侵入させるなよ!」


 すっかり元気を取り戻したカークトン隊長も本当に頼もしい。そう、ここは私達の世界であり、私達が生きた証を残しているんだ。あんな人達に踏みにじらせはしない。


「動いたぞッ!」


 天界と人間界。今、二つの場所で恐らく世界の命運をかけた戦いが始まる。守れ、私達!


◆ シンレポート ◆


まものの つよさも さることながら かんきょうもやばい

ここは ほんとうに てんかいですか

こんな まきょうなら あのくそてんしどもすら あやういと おもうのです

どうやって こんなところで くらしてるですか

そろそろ しんの からだが もたないのです

かえって りゅあままの てりょうりを たべたい

天界メモ

真天使、聖天使、賢天使、子天使の順に偉くて強い。

聖天使は守護天人と呼ばれ、その名の通り天界の筆頭戦力。


魔物図鑑

【天上の番鎧獣 HP 84600】

他世界から迷い込んだものを見つけ次第、襲いかかる天界の処刑人ともいえるべき存在。

視力や嗅覚ともに異常に発達しており、更にその速度は人間界をものの1時間足らずで一周してしまうほど。この獣のおかげで天界は不可侵の領域として確立しているといっても過言ではない。天界においても生態系から何まで不明とされているが、マディアスが生み出した魔物という説が有力である。


【天上の破滅竜 HP 159000】

捕食の為でもない、純粋な破壊行為を楽しんでいるドラゴン。とはいえ、自分よりも小さかったり弱いと判断したものには興味を示さない習性がある。このドラゴンの真に恐ろしいところは、格上にのみ挑み続けて一定の戦果を挙げているところだ。遥か過去に聖天使に即位した守護天人がこのドラゴンに襲われて殺されたという事例があり、それ以来聖天使としての力を試される存在となった。つまりこのドラゴンに勝てないようであれば、聖天使”守護天人”足りうる資格はない。


【天原の霊鳥 HP 484000】

死した天界人の魂が集まり、鳥の姿になったと言い伝えられている。その透き通るような蒼色の翼は見る者の目を奪うほどの美しさだが、時として精神の弱い者であれば魂ごと吸い上げられてしまう。無害とされている一方でこのような被害をもたらす個体がいる理由は不明だが、生前の性根が腐った天界人の魂を取り込みすぎると人々に害意をもたらしてしまうとも言われている。


【濁竜 HP 1670000】

天界のとある地域では地の神と崇められている。

この魔物が大地を悠々と泳いた後には草木が生い茂り、豊穣をもたらすという言い伝えもある一方で悪魔の化身と忌み嫌われている。

悪魔と認定し、守護天人が討伐に繰り出された事例もあったがほぼ壊滅。手傷を負わせるも、直後にまるで遊泳する子供のごとく大地に潜っていく様を見せつけられて、その場にいた守護天人は戦意を喪失したほどだ。

以来、この濁竜を討伐するという概念は消え去って災害として扱われるようになる。つまり人々がこの魔物に対して出来る事は、ただ息を潜めて通り過ぎるのを待つのみである。

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