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第六十六話 突然の出会い

 

 新入生の一人が口を開く。


「すいません!僕は真剣にここにいます。いつか冒険者として成功するために!」

「僕もです!」

「私も!」


 一人が口を開くと、新入生たちは次々と口を開いた。


「そうですか、良い心掛けですね」


 それまで厳しい表情を見せていたシェバンニは新入生達に向かって笑いかける。

 新入生たちはシェバンニの笑顔を見て安堵の息を吐いた。


「では、あなた達は今から戦いなさい。あなた達同士で、倒れるまで」

「えっ!?」

「はぁ?」


 はぁ、と小さく溜め息を吐く。


「シェバンニ先生って結構厳しいもんね。ガルドフ校長とはまた違うよね」

「あっ、それなんかわかる」


 外から見守るヨハン達が見るのは去年と同じ。


 わけもわからず戦えと言われた新入生は急に戦いを強いられる。

 突然その場で乱戦が繰り広げられ、少しの魔法が飛び交う中で混乱する者や必死に戦う者など多くいた。

 ヨハン達の学年は豊作年と言われるほど優秀な人間が多かったのだが、今年はまた違う。



「――――そ、それまで!」


 シェバンニは驚きながら会場に声を掛けた。


「……あの子、凄いね」

「うん、かなり強いわよ」

「既にレインより強いのではないでしょうか?」


 ヨハン達も注目するのは、会場の中心。

 ピンク色の長い髪の子に思わず目を奪われる。

 多くの新入生が倒れ、端で治療されていっているのだが、最終的に立っていたのはたった一人だった。


 その一人は圧倒的な実力差で他の新入生を即座に倒して回り、要した時間は数分程度。


「それにしても凄い可愛いわね」

「そうだね、可愛いね」


 モニカの言葉に相槌を打った途端にモニカとエレナから同時に見られた。


「ヨハンさん?ああいう子が好みなのでしょうか?」

「好み?さぁ、好みって言われてもよくわからないよ。可愛いとは思うけど」


 見た目の可愛さはもちろんなので答えただけ。

 それ以上に気になるのはその強さ。

 圧倒的な速さで的確な攻撃を加えていた。その手際の良さも見た目からは想像もつかないレベルにあった。


 エレナの問いに対して再び少女に視線を送ると、そこで目が合い微笑まれる。


「ん?」


 どうして微笑まれたのかが理解できないのだが、とりあえず笑い返しておいた。


 そんな中、シェバンニは近くにいた他の教師に耳打ちして何かを話している。

 話し掛けられた教師は思案気な顔を見せながら小さく頷いていた。


「――あなたはこのあと私のところに来て下さい」

「はぁい」


 その一人残った新入生、ピンク色の髪の美少女はシェバンニの方に歩いて行く。




 入学式を終え、三人は寮の談話室に行くと、そこにはレインが一人で待っていた。


「おっ!?おかえりー。で?どうだった?今年の新入生は」

「うーん、どうもこうもないわ。一人だけが目立っちゃってなんとも言えないわよ」

「ん?」


 レインも興味本位で聞いただけなのだが、返って来た言葉の意味がわからず疑問符を浮かべる。


「聞いてよレイン!凄い強い子がいたんだ。一人で他の子みんな倒しちゃったんだよ」

「はぁ!?それマジか?どんな凶悪なやつなんだよ」

「ええ、本当の話ですわ。こんなことで嘘をついてもなんにもなりませんわ」


 三人はレインに入学式の様子を話して聞かせる。

 そのピンク色の髪の美少女の話を。


「へぇ、それでその子はあの鬼婆あに呼ばれていったんだな」

「どんな用件かはわかりませんが」

「レイン最近教頭先生に悪態つくこと多いね」

「そりゃ、あんだけ痛めつけられたらそうなるってもんだろ?あっ、勘違いすんなよ?ちゃんと感謝してんだからな!」

「大丈夫、わかってるよ」


 談話室を出て、部屋に向かおうとするところでシェバンニの姿が見えた。

 後ろを先程の少女が歩いている。


「あっ、レイン、あの子よあの子!」

「どれどれ?」


 モニカが遠くから歩いて来た女の子を指差し教えると、レインは覗き込むようにシェバンニの後ろにいる少女を見た。


「(――って、おいおい、めちゃくちゃ可愛いじゃねぇか!)」


 そこには先程の入学式で1人圧倒的な力を見せつけていたピンク色の髪を頭の頂上で束ね後ろに流している女の子がいた。

 少女はシェバンニと向かい合い、なにか声を掛けられているのだが、会話の内容まではわからない。


 そこでお辞儀をしてにこやかにするとシェバンニと分かれる。


「(――――ん?ていうかこっちに来てないか?なんか嫌な予感がするぞ……)」


 再び歩き出す少女は笑顔でこちらを見ていた。


 そして、もう小さな声でも届くような距離で、そのピンク色の髪の女の子が立ち止まる。

 近くで見ると、背はモニカとエレナより少し低いくらいであった。


「(サナと同じぐらいかな?でもどうしてこっちを見ているんだろう?)」


 そんなことを考えているとその女の子が口を開く。


「あなたがヨハンさん……ですか?」


 突然問い掛けられた。


「えっと……そうだけど?」

「お父さんはアトムさんですよね?」

「うん、そうだよ?えっと、君は?どこかで会ったことあったっけ?」


 これだけ可愛い子なら会ったことがあれば覚えているはずだけどな。

 父の名前を出されたのだが思い出そうとしても思い出せない。

 村にこんな子はいなかった。


 モニカ達も少女の発言の真意がわからず僅かに困惑して様子を見守ることしかできない。



 するとピンクの髪の美少女は―――。


「やっと会えた!」


 そう言ってヨハンに抱き付いていたのであった。



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