新婚旅行?⑨
翌朝、朝食を食べていると、一人のリザードマンがクルーザーに訪れた。
どうやら昨日案内してくれたリザードマンのようだが、はっきり言って見分けがつかない。
それはさておき彼に連れられてリザードマンのリーダーのもとに向かうと、リザードマンたちは荷物を纏めているのか、忙しそうにしている。
色々な布で作られたテントに入ると、リザードマンのリーダーが迎えてくれた。
リーダーからいきなり頭を下げられた。
「雅也様、我々は貴方様の庇護に入りたいと決めました。これからは貴方様に我が一族一同従います、よろしくお願いいたします」
「えっ? ちょっと待って、俺は別に支配しようと思ってないよ? 仲良くできたら嬉しいけど」
「いえ、ご恩に報いますので、なにとぞ我が一族が貴方様に従うことをお許しください。何でもお申し付けください」
(あーこの人マジだ。まぁ仲良くなれるなら良いか)
そんなこんなで俺は艀を操縦してくれるリザードマンを紹介してもらい、その人に艀の操縦を教える。
リザードマンは見掛けによらず、器用で覚えも早いらしく直ぐに操縦を覚えることができた。
操縦を教えている時に気がついたんだが、爬虫類の苦手な美咲がなんとリザードマンの子供たちと楽しそうに遊んでいるではないか。いつのまに克服できたんだろうと思っていたら、トカゲが近づいたとたん逃げ出したのでどうやらリザードマン限定らしい。
まっ、リザードマンたち達と仲良くしているからいいか。
艀3艘に分乗してリザードマンたちが全員乗り込んだ。俺たちはグリフォンに乗り周囲を警戒する。
問題無く多摩川に入り、子供たちははしゃぎ大人たちは水面を見たり回りの気色を楽しんでいるようだ。
多摩川を登っていくと川辺に水を飲みにモンスターもちらほら出てきた。しかしモンスターたちは我関せずで、攻撃してくることは無く普通に過ごしている。
前回、ワーウルフに出会った二子玉川に近づいてきた。ここの関を越えないと、多摩川を登ることはできない。
艀をボート乗り場に止め、一旦リザードマンたちに降りてもらうと、橋の上にワーウルフが集まってきた。
ただ、前回と違いワーウルフたちはこちらに警戒するだけで、なにもしてこない。リザードマンたちも警戒はしているようだがなにもする気は無いようだ。ただゼウスだけ好戦的で止めるのに苦労した。
俺は艀を一旦アイテムボックスにしまい、リザードマンたちにはそのまま川を登ってもらうように伝える。そしてグリフォンに乗り橋の上空から、ワーウルフに声を掛ける。
「すまない。我々は縄張りを荒らすことはしないので、我々を安全に通行させてほしい」
すると一回り大きなワーウルフが答えた。
「速やかに立ち去るなら、通行を許可しよう。そうそうに立ち去れ」
「感謝する」
俺は皆と合流して関を越えた。
関を越えた先で、艀を出し再び多摩川を登り始める。
リザードマンたちも暑いのか、多摩川で泳ぎ出したりしだした。そろそろどこかでお昼休憩を取ろうと思うが子供たちの安全を考えると頭が痛い。
ゼウスに先行させ、休憩が取れる場所を探しに行かせた。
ゼウスは嬉しそうにすっ飛んでいったが、直ぐに前方からモンスターが騒いでいる鳴き声が聞こえる。ゼウスのやつ無茶しなきゃいいけど。
どうやらゼウスは探すより自分で確保したようだ。俺たちはモンスターを追い払った場所で休憩をとることにした。
俺たちはリザードマンたちにお昼ご飯を準備しようとしたが、リザードマンの男たちは川に入り魚を狩り出した。鯉や鯰を捕まえる中、子供たちが鮎を捕まえてきた。さすがリザードマンだ、簡単に魚を捕まえてくる。
俺は鮎を見て塩焼きで食べたいなと彼女と話したが、そのために子供から取り上げるのも可哀想なので諦めていると、シルバが俺から離れ川に入っていった。
シルバも喉が渇いたのかと思ったら、ウニのようにトゲトゲになってそのトゲを何本も水面に突き刺した。なんとシルバはトゲで鮎を捕ってみせたのだ。
シルバは鮎を抱えて戻ってくると俺に鮎を差し出してきた。
皆でシルバを誉めると嬉しそうに俺の膝に乗ってきて、俺も誉めながら撫でてやるとプルプルと喜んでくれる。シルバも俺と生活してからずいぶん色々なことができるようになったんだなと感心させられた。
早速、川辺で鮎を焼いて食べる。内臓を取り塩で焼いただけだが美味しく、何年かぶりに鮎を頂いた。
ちなみにリザードマンたちはそのまま丸かじりで食べている。鯰や鯉の丸かじりはちょっと怖い。
俺たちは何ヵ所かの関を越えついに艀では進めなくなるほど上流に来た。
岩も多くここからは歩いていこうかと思っていたら、リザードマンたちは流れの速い川も何のそのと泳いで進むようだ。
そんななか、子供たちは川が楽しいのか、あっちこっちに行き大人たちを困らせていて、大人に引っ張られるリザードマンを見ると本当に人間と変わらないんだなとしみじみ思ってしまう。
なんとか日が暮れる前に奥多摩湖に着き、俺は預かっていた荷物と食糧を渡してまた来るからと伝え、俺たちは村に帰ることにした。
連絡を取っていたので村の上空に着くと、レオとルナが出迎えてくれていて、村では大勢の人が出迎えてくれた。
子虎や子猪たちにも飛び付かれもみくちゃにされながら、マリアからもお帰りと労を労われ、村の皆に挨拶してからようやく母家に帰ってこられた。
「あー、やっぱり家が一番落ち着く」
詳しい報告は明日にして今日はゆっくり休もう。
寝る時に子虎たちに突撃をくらったがなんとか別の場所で寝かしつけ、無事に恋花と夜の運動会を開催することができたよ。もう俺は我慢の限界だったから、よく理性がもったものだ。
リザードマンのところに泊まる話が出たときは、一刻も早く帰って息子を解放したかったから、なんとか村に帰る方向に話を持っていったんだよね。一人に絞ればこんな苦労は無かったのかなとも考えるけど、一緒に行動してたら結局は無理だよな。
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