新婚旅行?⑤
宴会が始まり、食事も出尽くし落ち着いた頃、総理夫妻がビールを持ってやってきた。
島で生産が始まったビールの話から始まり話してるうちに、総理夫人が俺と彼女たちの指輪に気づいた。
俺と総理が村の話に花を咲かせていると、総理夫人が「えっ!」と大きな声をあげたため、総理が目を向けると夫人が
「大曽根さんがご結婚成されたって聞いたから」
「大曽根くんおめでとう、どなたと結婚されたの?」
「えーとですね、彼女たち4人と結婚しました」
「えっ、4人と結婚したの?」
「はい、婚姻届は出していませんが、式は挙げました」
「司法も機能してないからなんとも言えないが、おめでとう」
彼女たちと夫人はひそひそと何か話していたが、俺は総理と話を続けた。
総理から聞いた日本の現状は、俺が思っているより深刻で、防衛のために支給した武器が人に対して使われている事件が増えているようだ。弾薬を制限して対策を取っているが、最近海外から武器が密輸されているようで、自分たちで食糧生産をせず、武器を使い略奪している組織があるらしく困っているらしい。
「今は九州や関西だけだが、強いモンスターには効かない銃も人間には殺傷能力が高い。密輸阻止に漁船の燃料制限も考えたが、今は漁業を止めると食糧問題が起きるために止められないのだ」
「やっと石油が輸入できようになり、東シナ海でやっと石油生産も始まるのに、日本国内でまさかそんなことになるとは」
「警察や自衛隊で対処できないのですか?」
「警察はモンスターが氾濫した時に多くの者を失い、今では組織すら存在していないんだ。自衛隊も多くの者が死亡したり除隊して、陸上自衛隊は当初の半分まで減ってしまっていてね、対策に当たれないのが現状だ。
今はなんとか海上で不審な船に臨検を掛け水際で防いでいるが、国内にはかなりの武器が持ち込まれている」
「グリフォンやスノータイガーたちが居れば、索敵能力が高いので対処できると思いますが、俺たちも銃で撃たれれば死にますからね。危険な地域には近づかないようにしなければ」
「そうだな、大曽根くんが亡くなったら皆困るだろうし、新婚の奥さんたちも悲しむから気をつけてくれよ」
「勿論です、子供だって欲しいですから」
総理とそんな話をしていると、何人も集まってきて、俺の結婚話を酒の肴に盛り上がり、要求やお願いも無いまま宴会は終わった。
翌朝、俺は自分の朝食前にグリフォンたちの朝食を持っていくと、幕僚長がゼウスと話していた。
(朝から何をやっているんだこのおじさんは。幕僚長自ら迎えに来なくても良いだろうに)
食後、準備を整え臨時の内閣府に向かった。勿論幕僚長はゼウスに乗っている。内閣府に着くとグリフォンたちは寝て待つらしいので放っておき、会議室に向かった。
会議が始まると、たくさんのお願いがあるらしく、始めにお願いされたのが――――
攻略済のダンジョンの改修。
俺は即座に断った。移動の問題や村を離れるリスクを話し断った。
向こうも断られるだろうことは解っていたらしく、次に提案してきたのは、ダンジョンマスターレベルが30以上の自衛官にダンジョン改修の方法のレクチャー。
現状2名居るらしく、2名に教えることは了承した。
次に生活物資の援助。
これは俺が品川埠頭からコンテナを回収していたのを政府が把握していたことによる。少しで構わないから欲しいそうだ。何故解ったかというと、衛星でコンテナが無くなった後に、突然村に大量のコンテナが設置されたかららしい。
(しかし、衛星で俺の村も監視してるのか)
まあ、帰りに横浜埠頭にも行くからいいかと了承。
政府はコンテナを回収しないのか聞いたところ、クレーンも動かせないし、埠頭にモンスターが居て対処できないから難しいようだ。しかも横浜埠頭にはワイバーンも居るらしい。
グリフォンたちが居れば数にもよるが大した問題は無いだろう。
しかし、次の提案には頭に来た。
グリフォンを1頭譲ってほしいと。
「幕僚長、貴方の提案か!」
「違う! 私じゃない!」
「事の次第によっては、依頼は全部断る」
「一民間人が強いモンスターを持っているのは問題だ」
「誰だお前」
「私は内閣官房参与の飯田だ」
「総理、これが内閣の考えですか?」
「飯田くん、この件は断っただろ」
「しかし総理、アメリカからの要求ですよ」
「アメリカは何の通告無しに軍を引き上げて、何を今更従う必要がある」
「総理良いのですね、アメリカを敵に回して」
「何故、モンスターを渡さないと敵になる? 君は日本のために働いているのか、それともアメリカの回し者なのか?」
「私は知りませんよ、どうなっても」
「飯田くん、君をこの場で更迭する。会議室から出ていきたまえ」
「総理良いのですね、このことはアメリカに伝えますよ」
「君は今更迭されたんだ。無線や衛星携帯等の通信機器の使用は許可しない。伝えたければ泳いでも行きたまえ」
飯田は外に連れ出された。
「大曽根くん、すまなかった」
「いえいえ、内閣の総意でないのがよく解りましたから」
「今、アメリカを名乗る勢力が2つある。アメリカも他国と戦争する余裕は無い。しかもアメリカはアラスカから来たドラゴンにケンカを売り、カナダを含め五大湖周辺は壊滅状態だからな。そういうわけで、アメリカは強いモンスターの情報が欲しいんだ」
「総理、ドラゴンは多分人間より知能が高い可能性があります。ドラゴンが来ても攻撃せず、対話を心がけてください。
ドラゴンは長寿で食糧もそんなに必要無いそうです。うちのスノータイガーのマリアが何度かドラゴンに会ったことがあるそうですが、ダンジョンから出て落ち着いたドラゴンたちは 繁殖期以外は大人しいそうです。ただ攻撃されると苛烈に反撃してきますから、対話することを徹底させてください」
「解った。徹底させる」
「俺でも怪獣みたいなドラゴンが来たら攻撃しちゃうかもな」
「大曽根くんなら、ドラゴンだって仲間にしちゃうかもね」
「マリアより大きいドラゴンなんて無理ですよ」
なんとか話も納まり、日程や交換物資の内容を決め会議を終えた。
ちなみに退室した飯田は隠していた衛星携帯電話で連絡を取るも、内閣から外されたという飯田をアメリカは用済みと切り捨てた。
なにしろアメリカは太平洋艦隊でドラゴンに立ち向かった結果、壊滅してそれどころではないのだから。
俺は生活物資と石油ガス石炭と交換しホテルに戻った。
総理たちには後2泊して帰ると伝えたところ、帰りに魚介類をあげるから寄ってくれと言われた。
ホテルに帰るとホテルの正面に凄い人だかりが。
「いったい何人居るんだ?」
「雅也さん、子供たち以外にも人がいっぱい」
「どうしよう」
「雅也さんが鼻の下伸ばしてお菓子あげるからなんて言うから……」
「別に伸ばしてないし」
ホテルの庭に降り立つと、女将さんが駆けよってきた。
「女将さん、すみません」
「いえ、こちらこそすみません」
「えっ」
「料理長の話がどこで間違ったか、魚と肉を交換してくれる話になってしまい、申し訳ありません」
「何故?」
「雅也さんが女の子たちに魚介類とお菓子を交換する話がごっちゃになったんじゃない?」
「マジか」
とりあえずホテルの従業員総出で手伝ってもらい、並んでる大人たちにも手伝ってもらい、料理長指導のもとオークの解体をすることに。
それでも子供たちは1000人以上居る。アイテムボックスには大量にお菓子が入っているから心配無いが、渡すのに苦労しそうだ。
従業員には箱を開ける作業から始めてもらい、お菓子にジュース、カップラーメン、文房具に調味料を出し準備を始める。
これって今日中に終わるのか。
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