病院資材回収

新たな村人を迎えた日は家族の再会を優先し、翌日から仕事の分担やルールを説明することに。

ただ、恋花の兄、駿介が俺に絡んできます。

館長に咎められても、妹を守るのは兄の務めと、終いには道場で俺に勝負を挑んできました。

結果は火を見るより明らかで、現役でダンジョンに挑んでいる俺と、病院に医療に従事していた駿介とは勝負にすらならなかった。

そんな落ち込む駿介さんを優しく労る看護士の彼女を見て。

(いいなー、俺は４人も要らないから、優しい彼女が欲しいよ。何故４人集まると性格がキツくなるのか。一人の時は優しいんだから普段から優しくしてくれても良いのに。今も駿介さんの彼女を見ていると４人の目が怖い)

それから、皆で酒を飲んだら、どうして彼が俺に絡むのかが分かった。この人は重度のシスコンなのだ。涙声で恋花はお兄ちゃんお兄ちゃんと後を追い掛けていたんだ、可愛い妹がーと叫んでた。

両親は生温かい目で、恋花は妄想だーと兄をしめていた。

ちょっと彼女さん、引いてるけど大丈夫？

門下生はいつものことらしく、誰も気にしない。

翌朝、母家で朝食を食べていると、駿介さんが突撃してきた。

(朝から勘弁してよ)

しかし、駿介さんの話は別件だった。

「医療機器を充実させたい。病院に回収に行きたいから手伝ってほしい」

歓迎会の準備で忙しい美咲の代わりに館長を連れて、俺と駿介さん、恋花、歩美、楓で、回収に行くことになった。マリアも今回は居残り、子虎と子猪たちを連れて、ダンジョンの低層で狩りの練習らしい。歩美がそっちに行きたがったが、恋花と楓に両脇を抱えられて、WAPCに乗車。

駿介さんが勤めていた大学病院や近隣の大きな病院を回ることにした。

最初に向かった大学病院はバリケードが残っていたので、中は荒らされておらず、問題無く資材を集めることができた。

ただ、病院内は暗く薬品の臭いが充満していて、ゾンビでも出てきたら、パニック映画その物の光景になりそうだった。

手術室の中から簡易型CTや機材、テント形手術室など、最新式の医療機器を回収することができた。

その後も酸素ボンベやベッドなどを回収し、近隣の調剤薬局からは薬剤を回収した。

次に向かった病院はオークの巣になっていて諦めようかと思ったが、先日の話でオークは美味しいらしいと聞いたので、俺が狩りたいと話すと女性たちは反対した。しかし、館長が食糧のためだと一喝して狩ることに。

しかし狩り始めると、戦闘狂に豹変。

「オークは女の敵だー！！」と片っ端から抹殺していく彼女たちを見て駿介さんが目を剥く。

「お前のせいで、妹はあんなになってしまった！」と叫ばれた。

(いやいや、俺が初めて会った時からあんな感じだったよ。声に出して言わないけど)

今回の戦闘では館長の判断で駿介さんは見学なんだけど、俺は背中に殺気を感じていてやりにくい。

しかし、バーサーカーと化した彼女たちは100体以上のオークを狩っても止まらず、俺はひたすらオーク拾いをしていると、彼女たちの足が止まった。

病院の高い天井に頭が着きそうなほどの大剣を持つオークが現れたのだ。

「お前ら下がれ、俺が殺る」

「分かった」

「了解」

「分かったわ、援護する」

俺がオークに向かい走り出すと、オークは大きく低い声で威嚇してくるが、気にもせずオークを横一文字に斬りつける。しかしオークの動きも速く、皮一枚斬られるだけで避けられた。

オークは怒りながら剣を振り回し、剣と剣の打ち合いになるが、聖剣と打ち合っているのにもかかわらず、オークの大剣は刃こぼれ一つしていない。

しかし、スピードの勝る俺が、段々とオークに傷を与え始め、膝裏を斬りつけ体勢を崩したところを首を刎ねトドメを刺した。

俺が振り返ると、彼女たちに怪我してないか全身を調べられ、駿介さんからは今までと違う眼差しで見られた。

オークと大剣を回収し、この病院の資材を回収するとさすがに疲れたので、今日の資材回収はここまでとして村に戻ることになった。

帰りの車の中では駿介さんが俺を責める言葉は無く、俺は良かったと安堵していた。村に着いて母家の温泉に、俺と館長と駿介さんとで入っていると、駿介さんが突然

「認めてやる、ただし、恋花たちを泣かせたらメスであそこを切り落とすから覚悟しろ」

捨て台詞を残し、風呂から出ていった。

館長は笑顔で

「孫はいつだ？　早く抱かせてくれよ」

「……」

(えっー、まだ結婚してませんよ、まだ早くないか？)

何故かスッキリしない風呂を出て朝から準備していた、歓迎会に参加した。

歓迎会では先日頂いた魚介類で作られた手巻き寿司が出てきて、新たな移住者も豪華さに驚いていた。

マリアとグリフォンたちには今日狩ったオークを与える。子虎と子猪たちはちゃっかり皆から手巻き寿司を貰っている。シルバも奥様たちに手巻き寿司を貰い、プルプル喜んでいる。

ちなみにオークの解体は女性たちが拒否したので、男たちの仕事になった。オヤジたちが酒を片手に見本を見せてやると息巻いていたが、

食事中にするなと奥様たちにしめられ、今日も平常運転な宴会模様と相成りましたとさ。