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都市部探索②


夜は野性の王国になるんだな。結界があるから何とか寝られたけど、昼間の静けさと打って変わり夜はモンスターも活動的になる。


さてと、倉庫街から資材を集めてから、大井埠頭に行きますか。


それにしたって、都市部に入ってから避難してる人を一人も見ないな。マンションにハーピーが住み着き、公園や空き地にゴブリンやオークが住み着いたら人間なんて住めないか。


しかも、それを襲うモンスターまで居るからな。


埋立て地に避難してた人も、他の場所に移動したから、本当に都市部には人が居ない。


大井埠頭にコンテナ船が停泊しているな。物資を取りに来てるのかな。


埠頭に近づいてみると、ガントリークレーン(通称キリン)の上に何かが止まっている。


双眼鏡で見てみると、灰色した石像のようなモンスター、ガーゴイルだ。


「マリア、ガーゴイルが20頭居るが殺れるか?」


「ガーゴイルなら問題無いわ。ただ弓で数を減らしてちょうだい」


「分かった。先ずは弓で数を減らす。援護を頼む」


レベルアップしたおかげで、300m以上離れても弓で攻撃できる。


隠れながら、連続で射る準備をして、ガーゴイルを射る。


9発射って7頭撃破。ガーゴイルがこちらに気付き向かってくる。


俺は向かってくるガーゴイルに矢を射ると、ガーゴイルは墜落し面白いように粉々になる。


音のうるさい銃より、矢じりにモンスターの素材を使った物の方が射程は短いが有効的だ。


マリアと連係で5分と掛からずガーゴイルを殲滅した。


粉々になったガーゴイルを麻袋に回収して、コンテナ船に向かう。


ガントリークレーンの下には、船員なのかは判らないが人骨が散乱していた。手を合わせてから船内へ。


マリアは大き過ぎて船内には入れないので、外で見張りをしてもらう。シルバは俺の防具になって一緒に入る。


船内には狼が根城にしていて、狼を殺しながら捜索したが、生存者は居ないようだ。


俺は船に積まれたコンテナをバランスを見ながら、アイテムボックスに回収していった。


埠頭のコンテナも回収していると、マリアが大きなヘビと戦い出した。俺も聖剣を構え援護に入るが、マリアはヘビの体を踏みつけ爪で頭を切り裂いた。


マリアが言うには、ブラックサーペントは鱗は硬いが肉は美味しいらしい。皆のお土産に成るからと喜んでいた。


俺はまたコンテナを回収していると、アイテムボックスに入らないコンテナがあった。


コンテナの鍵は壊されていて、モンスターが中に居ないか確認するためにコンテナに耳を当てても音はしない。聖剣を構えながらコンテナを開けると、中からは凄い異臭がする。


「誰か居るか?」


中から女性の声が

「居ます、助かった」


俺は手前に積んである段ボールを退かし、中に入ると中には、子供が7人と3人の女性がいた。


話を聞くと、子供たちは保育園の生徒で女性達は保育士さんらしい。船で逃げていたところガーゴイルに襲われて避難してきたらしい。最初は男の人も居て13人で逃げてきたが、食糧を探すうちに何人も殺され、彼女たちは喰われるくらいならと、水と食糧があるコンテナに隠れていたそうだ。


俺は近くの倉庫に連れていき、温かい食事と服を渡し、簡易シャワーを設置した。


辺りを警戒していたマリアを呼び戻し、経緯を話した。


俺はコンテナを回収しながら、どうやって村まで連れていくか考えた。

WAPCは村に置いてきてしまったし、普通の車で都内を走るのは自殺行為だし、今じゃ連絡手段も無い。


天王洲にあった大型クルーザーで多摩川をできるだけ上って、都内を出てから車で行くしか無いか。


「マリア、俺は船を取ってくるから、子供たちを守ってくれ」


「解ったわ」


俺は保育士さん3人を倉庫の外に連れ出し、3人にマリアを紹介した。


3人は真っ青な顔になったが、喋るマリアと俺の話を聞くと落ち着いてくれた。


これからのことも話し、倉庫に結界とマリアが守ってくれるから大丈夫だと伝え、俺は船と資材を集めに向かった。


製粉倉庫で小麦粉などを回収し、シルバと船を取りに天王洲に向かう。


天王洲にはリザードマンが住み着いていた。俺はなるべく戦闘しないように桟橋に向かう。


しかし、リザードマンは気配察知能力が高いのか、囲まれてしまった。


俺は聖剣を抜き構えた。


すると槍を持ったリザードマンが、構えもとらず普通に近づいてきた。


「おい人間、お前を包囲した。大人しく出ていけば殺さない」


リザードマンがかすれた声で話し掛けてきた。


「待て、人間の言葉が解るのか?」


「解る、早く出ていけ」


「頼みがある。そこの船を貰いたい」


「船が欲しければ何かくれ」


「食糧と交換でどうだ?」


「何をくれる?」


「オーク5頭でどうだ?」


「良いだろう、こっちに来い、攻撃するなよ」


俺は5頭のリザードマンに連れられて桟橋にあるレストランに連れてこられた。


レストランの中には子供のリザードマンも居て、レストランの中は荒らされていなかった。ここで生活しているようだが、すごく人間的だ。


(もしかしたら、モンスターの中にも友好的な種族も居るかも知れない)


話を聞くと、ダンジョンから出た時は破壊衝動にかられたが、少し経つと正気に戻り、ここで生活しているらしい。ここは魚も取れるし、強いモンスターも居ないから住みやすいとのこと。


リザードマンたちはあまり好戦的ではないらしい。俺はオークを渡したら、彼らは俺の剣も欲しがったが、代わりに前に俺が作った不格好な鉄の槍を5本渡した。


リザードマンの子供たらは可愛くはないが、人懐こく顔がちょっと怖いが愛敬がある。缶入りの飴をあげたら喜んで食べた。


俺は無事に船を手にいれたが、見送るリザードマンが居るために、操縦に手間取り中々出航できなかった。


(子供のリザードマンが手を振ってくれているのに、恥ずかしい)


何とかエンジンがかかり、無事に出航できた。しかし初めて操縦する船が33mの大型クルーザーとは。


でも小さい船だとマリアが乗れないし、これでも船首にやっと乗れるくらいだな。


なんとか倉庫に戻り、子供たちを船に乗せる。間もなく日が沈みそうなので、羽田空港のD滑走路橋桁の側に停泊させて、結界を張り今日はここに泊まることにした。


マリアにはちょっと狭いが我慢して船首に居てもらうと、子供たちはマリアのお腹に抱きついた。

子供たちはマリアにすっかり懐いており、さすがお母さんといったところか。




お読み頂きありがとうございます。

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