表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/146

大臣との会談


無線機の前に今日は主要メンバーが集まっている。


「大曽根くん、この度は避難民を助けてくれてありがとう。今回のことは我々の人員不足から来る失態だ。この件に関わった隊員は必ず責任を取らせる」


「大臣、隊員に責任を取らせることは当たり前ですが、私も隊員を5人、直接的には3人殺しています。そのことは関してはどう考えていますか?」


「そのことに関しては本音を言えば殺さないでほしかったと考えている。だが現場検証の報告で3人の隊員が武器を携帯していたため正当防衛が認められた。本来なら司法の場で正式な裁判を行うことが必要だが、現在司法自体が機能していない。元の法律からすれば意味は無いが、総理に大曽根くんを罰することをしない制約書を作成していただいた」


「それで今回の事件の全容は解ったのですか?」


「隊員たちからの話なので全容とまでいかないが、内容としてはこう供述している。

隊員たちが援助物資を配りその中から自分たちも食事をしていた。それを見た一部の者たちが援助物資の横領だと騒ぎ出し誤って隊員が一人の男を殺してしまった、本来ならば基地に連絡して調査をしなければならなかったが、この分隊は隊員を庇い隠蔽をした。

それで隊員たちは避難民を集め監禁した。避難民から抗議され隊員たちは抗議に来た一人を殴ってしまった。そして、その夜避難民から襲撃を受けたために反撃し、結果、民間人32人を殺害した。それからは隊員たちは自分たちが守ってやってんだからと8人の女性を襲ったと供述している。本当にあってはならないことが起きてしまった。我々も今回の件は重く見ており、各避難所の調査も始めている。一方で、他の隊員たちは本当に何の保証も無い中一所懸命働いてくれている。今回の件で他の隊員たちを責めないでほしい。我々が不甲斐ないばかりに隊員たちに負担を押し付けていた我々の責任だ。本来なら内閣総辞職するべきだろうが、今我々が辞職すれば日本は終わる」


「大臣、俺は前に言いましたよね。「現状全員助けることはできない。働かざる者食うべからず」と。平常時ではないのですから、ある程度は避難民の選別は必要です」


「……確かに、言われてみれば関西の一部の避難民が武装発起して手がつけられない状態になっている。逃げ出す避難民は保護しているが街中は無法地帯になっているらしく、食料を奪うために簡単に人を殺す獣の街になってしまっているよ。しかし、我々もどんな基準で分けていいのか……ただ政府を批判するからと言って、それで分けていたらどこかの独裁者と変わらないだろう?」


「まずは米軍基地に農作業する人だけ集めて、良いことは言わずに協力的な人と家族だけ避難させてみれば」


「そうなんだが中々上手くいかなくてな、内閣も一枚岩ではないんだよ」


「俺に弱音を吐かれても仕方がないですよ。俺たちは自分たちのことで精一杯ですからね。それと助けた避難民の中から立川基地に行きたい者が34名出てきましたので引き取っていただきたいのです」


「その避難民たちは事件を知っているのだったな。他の避難民にこの件が知れ渡れば自衛官と軋轢が生じてしまい、最悪は暴動に発展するかも知れない。大曽根くん、そちらで保護することはできないだろうか?」


「できません。こんな状態なのに人権だなんだと持ち出し我儘を持ち出す人は要りません」


「分かった。こちらで引き取る」


それからも話し合い、協力の件などは全て一時中止になった。ただ1日2回の無線連絡だけは継続することにした。


その日の午後自衛官たちが避難民を引き取りに来た。隊員たちは中に入れず引き渡した。


ただ顔見知りの小隊長と話をすると


「大曽根殿、この度は隊員が迷惑を掛けたこと、本当に申し訳ない」


「頭を上げてください。むしろ小隊長は隊員を殺した俺を恨んでいないのですか?」


「私は詳しい話を聞いているし、大曽根殿がむやみに人を殺す人間ではないことを知っている。ただ隊員たちの中には納得していない者もいることは事実だ」


「でしょうね、だから我々は距離を取ることにしました。今までお世話になりました」


「いやいやお世話になったのはこちらです。幕僚長から最後になるかも知れませんが、弾薬をお持ちしました、受け取ってください」


「ありがたく受け取らせていただきます」


(安全確認はしないと何があるか分からないな)


小隊長も俺の不安が分かったらしく、箱を開け安全確認をしてくれた。


(アイテムボックスに入れれば中身の確認はできるから再度確認はするけどね)


最後に全隊員が俺たちに敬礼して頭を下げ帰っていった。


「大曽根くんお疲れ様。本来は我々年長者が矢面に立たなきゃいけないのにすまなかった」


「館長まで頭を上げてください。これから俺たちの本当のサバイバルが始まるんですよ。館長たちにはこれからも支えていただかないと」


「そうだな、皆で生き抜こうな」


「はい、これからもよろしくお願いします」


弾薬に細工やおかしなところも無いようなので、ありがたく使わせてもらうことにした。


それから新しく来た避難民の人たちも加わり、女性たちはお節や正月料理の準備で男たちは餅つきを始めた。



3ヶ月後政府は指令部を大島に移し、都市部を放棄して立川基地と米軍基地以外は避難民も他に疎開させることを俺たちはまだ知るよしも無かった。




お読み頂きありがとうございます。

もし良かったら更新の励みに成るのでブックマークと評価をお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ