総理ご一行②
総理ご一行を母家に案内したところ思いの外、人数が多くてソファーに座りきれないので、囲炉裏を囲むことにした。
「大曽根くん改めてお礼を言わしてもらう、ありがとう」
「いえいえ、お役に立てて光栄です。私1人の力ではないですし、彼女たちが一緒だから攻略できたんです」
「我々もダンジョン攻略が進んでいるんだよ。資料を大曽根くんに渡してくれ」
資料を渡され軽く目を通す。
「北海道奪還作戦は5ヶ所のダンジョンを攻略した。残り4ヶ所だが、残っているダンジョンはみなレベル20以上で、現在は封鎖することしかできない」
「残りは都市部だから、農業は可能ですね」
「実は今日伺ったのは、ダンジョン攻略した時に、隊員が言うには仲間になったモンスターがいるんだ」
「うちもスライムと猪と虎が居ますからね。やっぱり俺だけじゃないんですね」
「それで聞きたいのだが、仲間になったモンスターは人を襲わないか?」
そんな話をしてると、マリアが縁側に頭だけ乗せて話に入ってきた。
「ダンジョン攻略すると、仲間になる者は主人に本能的に従う。命の危険が無い限り人は襲わない」
「マリアさんありがとう。今仲間になった者は4頭で北海道でスライムと狼、四国でウサギ、九州で蜘蛛が仲間になった。ただ我々はどう扱っていいものか困っているんだ」
「仲間になった者たちは主人とダンジョンに潜ることが一番の悦びだ。まだ子供のうちは愛情をもって育てれば、必ず主人の役にたつ」
「総理、仲間になった者の写真は無いのですか?」
俺とマリアは写真を見せてもらい、マリアが解説してくれた。
「まずスライムはエメラルドスライム。回復と結界が張れるね」
「ちょっと待ってくれ、このスライムは大曽根基地みたいに結界が張れるのか」
「え、大曽根基地って」
総理はマリアとの話に集中しており、俺は無視された形になったが、隣に座る防衛大臣が教えてくれた。隊員たちはここのことを大曽根基地と呼んでるらしい。
(頼むからもっと格好いい名前を付けてくれ、恥ずかし)
「総理殿、このスライムはまだ子供だ。スライムの成長は早いが大人になってもここまでの結界は無理だ。ダンジョン内で休憩するスペースを確保するのがせいぜいのところだろう。ダンジョンに連れていく分には役に立つぞ、傷の治療もできるし」
「ちょっと残念だが、ダンジョン攻略には役立つ者なんだな」
「この狼はキラーウルフの子供だな。キラーウルフは大人になればレベル30以下のダンジョンを1頭で攻略する力がある。私には敵わないがな」
「本当ですかマリアさん! 大事に育てるようにします」
「子供のうちからダンジョンの低層階で狩りを覚えさせると良い」
「隊員に伝えます」
「次にウサギだが、ホーンラビットだと思う。しかし、子供で角が無いから解らん。美味しいことは確かだ」
「マリア、食っちゃダメだろ」
「私にはラビットはよく解らん。狩りの対象でしかないから」
「大人になれば何か技能があるかも知れないんだな。解った、蜘蛛は?」
「蜘蛛も子供で解らない。だが蜘蛛は頭が良いし、索敵に優れているし、仲間の防衛にも優れてる」
「そうか、教えてくれてありがとう」
「マリア、シルバはどんな能力があるの?」
「シルバもまだ子供で、それに希少種だから解らんが、大人になれば私の攻撃も防ぐだろうな」
「おおーシルバは可愛くて強くなるのか、楽しみだ」
それから海外の話も聞いた。ヨーロッパはイギリス以外悲惨らしい。ヨーロッパからアフリカ大陸に人が押し寄せているらしく人の流れが逆になった。ロシアはダンジョンに核を使いモンスターを殺そうとしたがダメージを与えられず反撃に遭い、クレムリンは崩壊し今じゃモスクワはドラゴンの住みかになっている。イギリスとアイルランドはロンドン、ダブリンを放棄して封じ込め作戦がうまくいっているらしい。アメリカはかなり苦戦しているらしいが、詳しい情報は秘匿されている。ただ石油と小麦などを援助してくれたので、上手くいっているのだろうな。
アジア方面だが、中国は崩壊して8つに分裂した。その分裂した一部がインドネシア、フィリピンと離島をめぐり戦争してるらしい。
韓国も対馬に難民が押し寄せて、難民の護衛するためと言って軍艦を出してきたので、こちらも護衛艦で対応している。今のところ武力衝突にはいたっていない。難民は今の日本では受け入れられないし、対馬も九州からの避難民でいっぱいだ。
総理ご一行は温泉に入り、天ぷらそばを食べて、帰っていった。
温泉と食事のお礼に魚を贈ってくれると帰り際に言っていたが、また来るつもりなのか?
俺たちも仲間をモンスターと呼ばないようにしないとな。
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