レベル９ダンジョン①

刀を打ち終わり鍛冶小屋を出ると、彼女たちも丁度ダンジョンから帰ってきたところだった。刀が完成したことを伝えると、見たいと言うので、まだ鞘も柄も木で作っただけの状態だけど見せると、喜んでくれた。これからどう仕上げるか聞いてくるので、鞘はペンキを塗り、柄巻はテニスラケットのグリップを巻くつもりだが、鍔が無いから検討中と答える。すると、彼女たちが鍔は館長がコレクションしてるからそれを貰って、後は私たちが仕上げしても良いか聞いてきた。二つ返事で良いと答え、後は彼女たちに任せた。

俺は疲れを癒すため、シルバと太陽と雪と温泉に入る。太陽も雪も豆柴くらいまで大きくなり、模様も薄くなってきた。でも相変わらず雪は抱っこ好きで、太陽はちょっとヤンチャだけど、何か見つけると俺に教えに来る可愛い奴だ。ただ３匹でじゃれあうとシルバが補食してるように見えて怖い。

風呂上がりに縁側でビールを飲んでいると、夕方は大分涼しく感じる。のんびりしながらもうここに来てからもう１年経つんだなと思い出す。当初は１人で暮らすつもりが、大好きな温泉に目がくらみ、旅館を買ったけど正解だったなとしみじみ思う。

ふと、後ろを見ると俺が丹精込めて作った刀を彼女たちはデコッってるけどね。

「雅也さん、皆で名前を考えたんだけど、斬鉄刀は鉄も切れる刀だから、魔物を切る刀で斬魔刀ってどうかな？」

「凄く良いね。俺なんか斬鉄刀２にしようかと思ってたから、斬魔刀って良いね」

(ただ、ラインストーンや スワロフスキーでデコると何かキラキラして武器には見えなくなる）

それにしても、出来上がりを見ると性格が出るな、恋花はスワロフスキーがメインのシンプルなゴージャス系、歩美はカラフルでファンシーな感じで鞘にキャラクターまで描いてる。でも、これから熊狩りに行くのに柄に熊のキャラクターのストラップはちょっと違う気がする。美咲は青をメインにした寒色系で纏めてる。さすがクールビューティー。楓は スワロフスキーのクリアとラインストーンの黒で纏めたモノトーン。彼女には密かに小柄でゴスロリが似合いそうだと思ってた。でも外見に騙されてはいけない彼女は家業の工務店を手伝っているので石膏ボード３枚持てる力持ちなのだ。

俺達は休息をたっぷり取り、いよいよヘリで熊ダンジョンに向かう。

ヘリから降りると自衛官の皆さんが敬礼で迎えてくれた。まるで映画アルマゲドンの小惑星に向かう時みたいだ。

幕僚長が握手で迎えてくれたが、できれば後ろの女性自衛官とチェンジでお願いします。

立川基地から車で隣のダンジョンのある記念公園まで連れてきてもらい到着する。ダンジョンの回りは堀と塀が作られ、その塀の上に５丁の重機関銃、ダンジョンの入口はボロボロで辺りに熊の物なのか肉片が散らばっている。

ここでも熱烈な歓迎を受け、小隊長に話を聞いた。

「ダンジョン内には８分隊６４名が中で戦闘中です。進行状況は３０の階層主部屋前まで攻略済み、ロボットで内部を偵察したところ、体長３mある熊が１体います。ロボットで攻撃したところ小銃もグレネードも効果が無く、その先に進めない状態です」

「１体なら試し切りにはちょうど良いでしょ、準備が整い次第入ります」

「情けない話ですが、よろしくお願いします」

ダンジョンの中に入ると、熊のくの字も無い。隊員が見つけ次第殺してるみたいで、俺たちは２０階層主の部屋で休息していた。

隊員に話を聞くと階層主は倒した時から２４時間で再出現するようで、ここの階層主は１４時間後に再出現するらしい。

２０階層を越えると熊ちゃんが居るな。自衛隊の皆さんでも２０階層を越えられるのは４分隊しか無いらしく、今は１分隊が作戦中らしい。

新撰組の彼女たちも斬魔刀で問題無く熊を倒してる。

(歩美さんの熊のキャラクターの付いた斬魔刀で熊を切り殺す姿は何かシュールだ)

２４階層で厳つい隊員に会ったが、彼女たちが熊を切り殺す姿を見て、目を見開いていたよ。挨拶すると徽章が月桂樹にダイアモンドだ。

話を聞くとやはりレンジャーらしい。しかも俺が作った武器を使ってるよ。興奮する俺は冷めた彼女たちに引かれ、隊員たちに別れを告げたが、隊員たちも参考にしたいとついてきてくれた。

隊員たちと話しながら進んでいたら、彼らが彼女たちだけ戦って大丈夫か聞いてくるので、彼女たちから獲物を奪う方がモンスターより恐いよと話すと、楓に聞かれ軽く尻を蹴られた。

３０階層主の部屋の前で装備を確認し入ろうとすると、隊員が一緒に入ってもいいかと聞いてきたので、階層主の戦いで貴方たちの援護はできないと思うけど自己責任でよければどうぞ、と伝えた。

隊員たちも装備を確認し、一緒に入ることに。

中に入ると、３mはある熊がいた。発見と同時に恋花と楓が走りだし熊の腕を斬りつける。その後ろから歩美と美咲が熊の足を斬りつける。熊の頭が下がったところで俺が首を斬り落とし、戦闘終了。

戦闘開始から１０秒掛からず倒す姿を見て、隊員たちは口をパクパクしてた。

３０階層で１泊することにしたら、隊員たちが歩哨に立ってくれると言うので、自衛隊から貰ったハンバーグのレーションを食べることにした。結構旨いんだけど汁物が無いので、カップ味噌汁を取りだし隊員たちにも配ったら喜んで食べてくれた。