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43 嫌い嫌いも執着(すき)のうち

前話あらすじ

ヤンデレ王子から変態モーホーに進化したヘンリーは、さらにとてつもなくウザいヤツになってしまった。

カイルはウザ王子から無事逃げる事ができるのか!?

俺の部屋に移動して、緑茶を飲み一息つく。今日のお茶請けには、おにぎりが用意されていた。

具は、梅干しとおかか。流石ダニエル、解ってるじゃないか!

俺が旨そうにおにぎりを食べる様子を見て、ルイスも怖々と口を付け、一度目を見開いてから、ガツガツと食べ始めた。

お気に召したようでなによりだ。


まだまだ成長期真っ只中な俺たちは、夕食を殆ど食べられなかった分、結構な量のおにぎりを食べた。いくら食べても、ダニエルが何処から出してくるのか、直ぐに補充してくれるので、お腹いっぱい食べる事ができた。

補充される度に、中の具もシャケやタラコ、昆布と変わっていくので、更に手が止まらなくなる。多分、1人で米2合位は食べたんじゃ無いかな?

まぁ何にせよ、これで空腹のまま寝なくてすむ。

明日の朝食は部屋で摂る予定にしているし、この先も満足できる食事事情だけは確保できるように考えておかないとな。

明日からの食事をどうするかに思考を飛ばしていると、ルイスが俺をジッと見つめていた。


「ねぇカイル。君、一体ヘンリーに何したのさ?」


なんか人聞きの悪い事を言われた。

その言い方って、まるで俺が誘惑したみたいじゃね?「何かしたの?」って俺が聞きたい。ホント、切実に知りたいぞ?

理由が解れば、嫌われるように振舞えるんじゃないかと思うけど、今までだって決して好かれるような事はしていない。

実際嫌われてた筈だし。ホントにどんな心境の変化だよってって言うか、絶対ゲーム補正だろ、コレ。


「何もしてないし。っていうか、俺が知りたいよ。……嫌われる心当たりなら、山ほどあるんだけどな」

「確かに。さっきの対応もかなり酷かったもんね……」


2人、腕を組んで「う~ん」と唸りながら悩む。

そんな俺達を、ダニエルが楽しそうに微笑いながら見ている。ダニエルなら、理由も解るんだろうか?


「なあ、ダニエル。俺の行動の何が、ヘンリーのスイッチを入れたのか解るか?」

「多分、“嫌い”が一周回って“執着”に変化したのでは無いでしょうか?」


ダニエルの答えは、良く解らん。結局、どういう事なんだろうか?


「強すぎる“嫌い”=“執着”と言う事ですか?」


俺にはさっぱり解らないが、ルイスには理解できるらしい。

すげぇな、ルイス。俺にも説明してくれないだろうか。


「好きの反対は嫌いでは無い、と言う話は知っていますよね?」


俺がピンと来ていないのに気付いたダニエルが、説明してくれるようだ。


「ああ。好きの反対は、“無関心”だろ?」

「そうです。彼の場合、いきすぎた好意が執着になって“監禁”という発想になるようですが、どうやらいきすぎた嫌悪も執着になるようですね」

「…………は?」

「要するに、根っからの変態という事ですね」


ダニエルが、笑顔で酷い事言ってます。

うーん……。要するに、変態だから大っ嫌いなヤツを相手にしても、独占欲を発揮して変態的な行動を取るってことか?


マジで迷惑な奴だな……。


「ホントに、迷惑な王子だよね……」


ルイスが俺の気持ちを読んだかのように呟いた。その表情からは、次々と問題を起こすヘンリーに対しての、嫌悪感が見て取れた。


「まったく……。早く、国に帰ってもらうよう、もっと積極的に働きかけようか」

「今度は手駒もいないし、自分の手で直接仕掛けてくるだろうから、そこを返り討ちにしちゃおうよ?」

「だな。どうせまた、小物臭溢れる計画を立てているんだろうしな」


俺たちは朗らかに笑いながらそんな事を話して、その日の夜は解散したのだった。






「殿下。アンジェリカ様のお部屋が……」


翌朝、早めにルイスがやって来て2人で朝食を摂っていたんだが、突然ダニエルが不穏な事を言い出した。

ダニエルは、しばらく何かを探るように無表情で遠くを見ていたのだが、その顔に今まで見たこともない様な邪悪な笑みが浮かぶ。


悪魔かと思いましたよ?マジ怖い。

そして、アンジェリカに何があったんだ?

「お部屋が」ってどういう事だ?寮の自室で何が起こるって言うんだ?


頭の中が「?」で一杯になる。

何か良くない事が起こっているならば、すぐ助けに行かないと。

俺は何も言わずに立ち上がる。


「お待ちください。殿下は、お部屋で待機を。わたくしが、一人で参ります」


凶悪な笑顔を浮かべたダニエルが、俺を止める。

何か知らないが、スゲー怒ってるみたいだ。これは逆らったらダメなやつだ。

でも、アンジェリカは大丈夫なのか?彼女に何か良くない事が起こってるなら、たとえダニエルを怒らせたとしても、俺も付いて行く。


「アンジェリカ様は、大丈夫ですよ。どうやら………殿下を釣りあげる為の餌の様ですから」


ジッとダニエルを見つめていたら、こんな事を言われた。

餌って……。ホントにアンジェリカ、大丈夫なのか?

仕掛けたのって、100%ヘンリーだよな!?


全く安心できる要素が無いんだが……。


「ドガー、あなたはココに残って下さい。トレイターが出ました」

「!?」

「わたくしがこの部屋から出れば、多分、こちらへやって来るでしょう。目ざわりですし、里親ともども潰してしまいしょう」

「畏まりました。それで、わたしは何をすれば?」

「何もしなくて良いです。………あ、彼らの起こす行動に対して、出来れば、悔しそうな顔をしてあげて下さい」


俺の不安はそっちのけで、ダニエルと、ルイスの執事ドガーが何やら物騒な会話をしている。

“トレイター”って確か、「裏切り者」とか「反逆者」って意味だったよな?


ダニエルが、俺の意見を聞く事無く物事を進めてるってことは、きっと執事の問題なんだろうな……。


今、ダニエルは本気で怒ってる。

何があっても飄々としてる彼が、ここまで怒ってる姿を見るのは初めてだ。


「殿下、わたくしは今から、アンジェリカ様の所へ行って問題の処理をしてまいります。きっと、その間にこの部屋へ、ヘンリー様がやって来られるかと思いますが、わたくしが戻るまで、少しの間我慢して戴けますか?」


何を我慢するのか言わないダニエルに、「変態」な事だと理解する。


少しの間って、どれくらいの時間でしょうか、ダニエルさん!?

その間に、俺にトラウマが出来たら、どうしてくれるんだ!?


「できるだけ、トラウマになる前に戻ってまいります」


「ふふふふふ……」なんて、いつも通りの微笑みを浮かべたダニエルが、楽しそうに言う。

……なんか信用できない。

でも、アンジェリカを助けてくれるなら、トラウマ体験の一つや二つ我慢……、できるだろうか?


「“できるだけ”じゃなくて、トラウマになる前に絶対帰ってきて!!」


俺は、BL体験なんてしたくないんだ!


俺ってば、半泣きです。

しょうがないよな?こんないかにも、「今からモーホーの餌食になるけど、ちょっとだけ我慢してね☆」みたいな事言われたら、誰でも泣き入るから!!


「承知致しました?」


俺の反応が面白いのか、ダニエルが心底楽しそう微笑って返事をしたんだが……。

なんで疑問形?





そしてダニエルが部屋から出ていき、数分もしない内に、俺の部屋の扉が吹飛び………。

勝ち誇ったような表情のヘンリーと、ヤツの執事が部屋に入って来たのだった。



俺の苦行タイムが始まるみたいdeath。

カイルの貞操の危機death

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